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転生の軌跡~Regrowth for you~  作者: 進化する愚物
第三章 魔眼転生
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第四十五話 闘技場

 スケアリーが進化した夜。

 サナが眠りに落ちた後、シルバは黙々と進化の準備をしていた。

 神経の接続を断ち、魔法の麻酔をかけ、と前回とほとんど同じ手順を踏んだら、いよいよ進化を始める時間だ。


<ステータスを確認>



------------------------------

シルバ 0才

種族 マインドアイ


魔力 48125

妖気 386


アビリティ

 転生(転生数3)

 魔法

 妖術

 進化

 魔眼(精霊視)

 通知

 魔眼(吸収)

 寄生

 魔眼(傀儡)

 不眠

 魔眼(読心)


称号

 転生者

 ダンジョンモンスター

 義眼

 臆病者

 声優

------------------------------


 鳥の大量虐殺とドラゴンの討伐により、インフレが激しくなっている。

 五万というと、常人の頂点である賢者と同レベルということだ。

 保有アビリティも含めると、シルバは既に賢者を凌駕していることになる。


 賢者は五人集まれば魔王を数日足止めできると言われているため、賢者を擁している国は発言権が総じて高い。魔王は総じて角の生えた魔族であるため、発見時にはすぐに賢者が集められるのだそうだ。その賢者を凌駕できるなら、魔王でも出てこない限り敵はないだろう。


 それをさらに進化で強化する。


<進化を開始>


 進化光が収まったので、シルバはサナと神経をつなぎ、ステータスを確認する。


<ステータスを確認>



------------------------------

シルバ 0才

種族 インクリースアイ


魔力 2059

妖気 386



アビリティ

 転生(転生数3)

 魔法

 妖術

 進化

 魔眼(精霊視)

 通知

 魔眼(吸収)

 寄生

 魔眼(傀儡)

 不眠

 魔眼(読心)

 魔眼(増殖)

 


称号

 転生者

 ダンジョンモンスター

 義眼

 臆病者

 声優

------------------------------


 魔力は消えてしまったが、かまわない。

 増殖の魔眼を理解し、シルバは瞑想を始める。


 魔物は放っておいても魔力が増えるから、強力なアビリティが追加されたからといって、瞑想を怠るわけにはいかない。



☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆



 不眠であるシルバとスケアリーはサナが起床するのを待ち、満を持して次の階層へと進む。

 この青空エリアでは島一つで一階層扱いであったらしく、次は四十一階層だ。

 二人は転移陣に入っていく。


 四十一階層は闘技場のような場所だった。

 広いスペースを円形に囲い込む観客席には誰もおらず、ぽっかりと空いた天井からは暗闇だけが覗いている。

 それでも闘技場が明るいのは、あちこちに浮かぶ光魔法で作られた球の影響だろう。


 シルバたちが転移したのは円の隅。観客席の真下だ。

 反対側にも誰かがいるらしく、光の届かない暗がりの中で人型のシルエットが見えた。



『サナ』


「わかってる。油断しない」



 シルバが注意を促し、サナが応えた直後。



「 レ デ ィ - ス & ジ ェ ン ト ル メ ン ! 」



 大音量で聞き覚えのある声が流れてきた。

 道化である。



「まあ、君たちしかいないわけだけどね。──さて、ここは闘技場エリアだよ。各階層ごとにボスがいるんだ。青空エリアの報酬を用意できなかった分、闘技場エリア踏破の報酬は大きいよ~」



 ペラペラとしゃべる道化。サナはそれに待ったをかけた。



「あなた……誰?」


「ん、あれー? 魔眼くんから聞いてないのかい?」


「……?」


「まあいいや。では自己紹介。僕はこのダンジョン、エステリカの迷宮のダンジョンマスターだよ。ダンちゃんって呼んでね!」


「……」


「でわでわ! 一回戦、スタート!」



 ぼがああん! と、意味もなく道化の後ろの地面が爆発したのを合図に、戦闘が始まる。


 相手は信じられないほどの濃密な魔力を展開すると、それを身に纏い始める。

 ゆっくりと歩いて暗がりから出てきたのは、角のある魔族の男だった。


 そう、角だ。

 魔王の証である。



「驚いてるようだねー。この人、実は九代目魔王、エクレルその人なんだ。わざわざ生き返らせたんだよ。少し力は落ちているけど、魔王軍四天王クラスの魔力はあるよ?」



 横から親切にも説明を入れる道化だが、シルバとサナは聞いてなどいなかった。

 魔王エクレルがその身に纏う魔力を結界に変え、()()()()()()()()からである。

 固形化された魔力はサナを掠め、闘技場の壁に突き刺さった。


 さらに魔王エクレルは結界を操作し、広く展開。闘技場をエクレル側とサナ側に二分した。

 当然サナは結界を破壊しようと攻撃を加えるが、結界にはわずかな波紋が広がるだけである。


 魔王エクレルはそればかりでなく、結界の一部分だけを勢いよく突出させ、サナを貫こうとする。

 回避したサナが結界から距離をとり、仮面を一部開いて、覗いた口から取り出した長剣で結界を斬りつけているスケアリーに任せる。


 読心の魔眼で魔王エクレルの動向を観察し、結界を結界で相殺していたシルバは、サナの立ち位置移動に合わせ、吸収の魔眼に切り替える。


 練度が上がったおかげか、吸収の魔眼は遠距離でも使用できるようになっていた。

 シルバは魔力を結界から吸収し、自らの糧としていく。


 しかし、結界が衰えることはなかった。


 サナは変形しながら襲い掛かってくる結界の追撃をかわし、さらに後方に移動した。

 結界はじわじわとサナたちのスペースを奪いながら進行してくる。


 ───新しい身体の性能確認はこの辺でいいか。


 シルバはそう結論を出すと、使用する魔眼を切り替える。


 増殖の魔眼。

 シルバの瞳が黄緑に染まり、じっと魔王エクレルを見つめる。


 唐突に、エクレルの腕に細い(すじ)が生まれた。

 唐突に表れた不自然な線は徐々に開いていき、その内容物を外気に晒す。


 「眼」だった。


 確かに彼の腕にはシルバにそっくりな、銀の眼がついていたのだ。

 眼はぎょろぎょろと視線を彷徨わせている。


 ぎょっとする魔王エクレルに、今度は腕だけではなく、全身に同じような筋が入る。


 眼が、エクレルを埋め尽くした。


 そして眼は一斉に白目を()く。


 エクレルの内側を見る。


 すべての眼から、火が、水が、風が、土が、あらゆる魔法が放たれた。


 外から見たのなら、全身に目を付けた男が突然爆発したように見えたろう。

 実際、本体はそれを見ていた。

 虚ろな目で。意識を朦朧とさせながら。


 増殖の魔眼は少しピーキーだ。

 その能力は視線の先に眼を作り出すというものだが、いくつか弱点がある。


 一つ目はかなりの体力を消耗すること。

 二つ目は増殖した眼は十秒ほどで消えてしまうというもの。

 三つ目は増殖した視界に注意力が著しく奪われることだ。


 消耗が激しいため多用はできず、奥の手になるだろう。

 ここで使ったのは性能テストのためだ。



『うお、すげえな。……俺に向けんじゃねえぞ?』


「知らない。魔眼次第」



 シルバは白々しくスケアリーとしての反応をサナに示した後、スケアリーに命じて魔王から魔石をはぎ取らせる。


 獣人の幻獣種である、いわば紛い物の魔族とは違い、本物の魔族は魔物を先祖としているため、体内に魔石がある。

 それを壊せば当然、内包された魔力はシルバとスケアリーのものだ。


 力が満ちるのを感じたシルバは、ステータスの魔力部分を確認する。


<ステータスを確認>


------------------------------

シルバ 0才


魔力 13634

------------------------------


 魔力が一万近く跳ねあがっていた。

 これが魔王。一部の吸収ですら一万の魔力。

 これが一度目に出てくるのは不安を感じざるを得なかった。

 切り札である増殖の魔眼は、燃費が悪い。



「勝者~! サナ・グランハート~!」



 ぱちぱちと拍手を送ってくる道化に、サナは視線を向けた。



「さ~てサナちゃん。君は選ばなきゃならない。今日はここで休むか、次に行くかをね」


「次に行く」


 自身は全く消耗していないため、次に行くことを選択したサナ。

 シルバは増殖の魔眼を使用したせいで消耗しているため、休ませてほしいのだが。

 シルバがスケアリーと共有したのは不眠だけで、不休は手に入れられていない。

 疲労は蓄積しているのだ。


 シルバの内心とは関係なく、サナとスケアリーの足元に転移陣が出現する。

 

 次の闘技場に転移すると、また角の生えた魔族が待っていた。



「今度は八代目魔王、ベルジーだよ。頑張れ!」



 サナはなぜか(・・・)涙目になった右目を、手で強く拭った。

お読みいただきありがとうございます。


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