第一話 Opening:Silver
ストレス発散で書きなぐり、そのまま投稿したものです。
皆様には楽しんでいただけたらと思います。
―深淵の間―
見渡す限りの闇の中、少年は一人たたずんでいた。
少年の前半身はおびただしい量の返り血で赤く染まっており、その返り血の主は、血を辺りにまき散らし、彼の前に横たわっている。
光源など何もないはずなのにそれらをしっかりと視認できることが、深淵の間の特殊性を物語っていた。
「魔神よ、お前に恨みは一切ないが、俺の夢のためだ。大人しく死んでくれ」
少年はボソボソと半ば独り言のようにそう言うと、目の前のモノに手のひらを向け、光の魔力を発射する。
キュイィィィィン、という高音域の音とともに打ち出された光線は、復活しようとしていたそれを跡形もなく消し飛ばした。
返り血を浄化魔法で吹き飛ばし、一息ついていた少年のもとへ、転移で一人の老人がやってくる。
「いや~遅くなってすまんのう。死んだとはいえ、魔神が全力で張った結界を解除するのは一筋縄ではいかんからな」
どうやら対神結界の解除に時間をかけていたようだ。それが今回の騒動の原因であり、その結界さえなければ人間に頼らず、この神一人でなんとかできていた。
魔神とはいえ神は神。不死であるから、復活しないうちに封印するためにここに来たのだろう。
「んなことはどうでもいいんだよ。それより、教会に出した神託は本当だろうな?」
少年の問いに、老人--神は少し驚いた表情を見せ、笑った。
「ほう、儂相手にその物言いができるか。さすがは魔神殺しじゃな。……ああ、本当じゃよ、神託通り、魔神を殺した勇者の願いを一つ、どんな願いでもかなえよう」
神の返答を聞くと、少年はうなずいて、自分の願いを語る。
「俺を不老不死にしてくれ。無理なら不老でもいいし、霊体にしてくれてもいい。とにかく俺という存在を不滅のものにしてくれればそれでいいんだ」
そう、少年は死にたくないのだ。消えたくないのだ。少年の師匠である仙人から死後のことは聞いている。死後は記憶を消去されたうえで転生するらしい。その過程で魂からエネルギーを取り出し、神の力に変えるという。ということは、天国や地獄などなく、死ねばそれまで。すべてが無に帰すことになる。神や仙人になれば話は別だが、神は一定以上の信仰を集めないと消滅してしまうし、仙人は老いこそしないが簡単に死ぬ。そんなハイリスクな賭けに出たくはない。
「いいじゃろう。不老不死にすることはできないきまりじゃが、不滅くらいなら容易い。しかし、力の大半を失うが、それでよいか?」
「ああ、問題ない」
神はふむ、と少年を頭の先からつま先まで眺めた後、
「魂のエネルギーも十分じゃ。では……コホン。勇者シルバ・カレイドよ! 汝の魔神討伐をたたえ、英雄に認定するとともに、輪廻の神シュバルの名において、汝を輪廻の輪から解放しよう!」
言い終わるが早いか、シュバルは両掌をシルバに向けた。瞬間、眩い光がシルバを包み込み、ここではないどこかへと連れていく。
次にシルバが聞いたのは、自らの産声だった。