転生したら全裸でした
転生したら全裸でした。
よくよく考えてみれば死んだ時は寝ていたのだから当然持ち物もない。
これはあの幼女に一杯食わされたのか。なんて酷い詐欺だ。部屋にあるものじゃなく直接持っていた物だけって所がすでに罠だったんだな。
だが俺は非常にクールなのでこれぐらいでは慌てる時間じゃない。
まず第一に行動方針を決めねばなるまい。
何も持ち物がないこの状況、闇雲に行動してはあっという間に餓死コース。
クールな俺はビシっとラオコーン像の苦悶のポーズでカッコよく熟考する。
何はともあれ、最初は情報を集めねばなるまい。
情報を制するものは世界を制す。
地理を知り、文明を知り、世界情勢を知る。
そして、まずは商売だ。
商売をして金を集め、信頼を集め、人を集める。
異世界で成り上がるにはまずは商売、古事記にもそう書かれている。ソースは「なろう」。
その第一歩として、さて人里に向かうことが必要だろう。
あのクソ幼女によれば、俺は原住民の近くに転移しているはず。
その原住民を探し、人里まで案内してもらおう。
俺は改めて辺りを見渡した。
一見深い森の中にある道に俺は立っていた。
そして目の前には半裸のマッチョメンが3人立っていた。
おうふ。
オーケー、俺よ。まだ慌てる時間じゃない。
そのマッチョメンは黒髪のモンゴロイドと思われる顔立ちで腰ミノを履いているだけで、手には血糊の付いた棍棒を持っていた。
そしてその背後には頭をかち割られて倒れている金髪の男女二人が倒れていた。
どう見ても山賊です。本当にありがとうございます。
どうやら俺の冒険はここで終わりのようだ。
終わりも何もまだ何も始まってなかったような気がするけど。
死んで幼女にまた会ったらとりあえず小一時間は文句を言おうと思う。
ないわー。
普通にないわー。
こういう異世界転移で最初に知り合うのは美少女だろう。なろう的に考えて。
それか、山賊に襲われてる美少女な。
山賊に襲われてる美少女を俺が颯爽と助ける展開な。
その美少女は俺が来る前に殺された商人の奴隷で、俺は奴隷制度に対して憤り、奴隷解放に向けて成り上がってハーレム作るのが王道だろう。
それがどうしてこうなった。
助けようにもどう見ても死んでるぜ。
頭から出ちゃいけない何かがこぼれ落ちてるぜ。
そして、相手は3人組のマッチョメンで殴られたら即死しそうな棍棒装備。
対する俺は全裸。
これはどれだけクールに考えても辞世の句を詠むぐらいしか手はないぜ。
この世の無情さに憂いている俺に、マッチョメンの1人が近寄って声をかけてきた。
「おう、同胞。見ない顔だけど何処の村のもんさー。ここらへんは金毛共が彷徨いてるから丸腰で出歩いちゃあぶないさー。道に迷ったんなら案内するさー」
どうやら非常にフレンドリーな山賊だったようです。