21話『蕎麦屋デッド④』
俺らはその後もなんとなくな雑談をしていたが、八柳の静まりかええった会話には、なれる気がしない。
築くと、時間も夕方の6時を回っていた。
今の俺らには、睡眠は命の次に必要なものと言っていい。
俺らは、寝られる間に寝ようとした。
「私は、さすがに男の人と寝るのは気が引けるから」
そういうと、みことは立ち上がって押入れをスゥ~っと開けて中に入って行った。
「それは、青いロボットの特権だろ」
などと突っ込んで、寝てしまった。
【4月8日土曜日5:30】
目覚ましのアラームが部屋に鳴り響くとその音が止まる。
ゆっくりと、ぼんやりした目を開けて部屋を見渡す。
八柳は布団の上で、首を回しながら暇をしている。
アラームを消したのは、八柳だろう。
みことは、押入れの中から出てくる気配がない。
開けてもいいが、さすがに後がめんどくさそうなのでほおっておくことにした。
俺は下に行き、上原とおっさんに挨拶をした。
「おはようございます、朝早いんですね」
「そりゃ~料理人は、朝が大切だからな!!」
朝から元気よく高笑いするおっさんは、多分死ぬことはないだろう。
おっさんの勧めで、風呂に入ることにした。
久しぶりのシャワーは気持ちい。
湯船の中に入り、暖かさを肌で感じた後、ゆっくり肩を下して軽くため息をつく。
風呂に入るとため息をついついしてしまうのは、日本人ならわりと当たり前ではないだろうか。
静かな湯船に、ささいな声が聞こえる。
「疲れたので、お風呂お先に頂きますね」
「おい、坂町君いんぞ」
「待っていては、汗が乾いて冷えてしまいます」
なんだかとてもまずい声が聞こえた気がした。
だんだんと二人の声が近づいていき、それはドア一枚の声になっていく。
「失礼するわ」
そこには、上原さん『ビキニ姿』があった。
ビキニは、真っ黒の上下に粒粒の青い星のようになっていて、上原の髪型やクールさがよくわかる。
だが焦って大切なところを隠して、頭から湯船に潜ることしかできない。
「これ使うかい?」
右手には、おっさんの水着らしきものを持っていた。
「お願いします・・」
俺は、それを着恥ずかしく着ると、変なことを言われた。
体を近づけてきて、俺の体を凝視している。
初めて会った時と同じ目だった。
「すごいや、混じってるね」
上原が何を言ってるのかよくわからなかった。
「何が混じってるんですか?」
「人間以外の血だね、多分」
いきなりわけのわからないことをよく言う人だと思った。
この人のしゃべることはオカルトっぽいのに、説得力がある。
「意味分かんないですよ、だいたいなんでそんなことわかるんですか」
俺は女の子のように体を少し隠しながら返事を返した。
「昨日君たちが寝た後、八柳君と少し話したのよ」
軽く驚いて、話を聞く。
どうやら、今までの学校のことや病院のこと、ショッピングモールのこと、そしてゆずりのことを話したらしい。
「君の橋での戦いと、ショッピングモールの菊岡君の戦いはとても興味がある」
そのあと、俺と菊岡の暴走理由に対して話し始めた。
「君たちは、人間離れした力を見せたらしいが、それがゲームクリアー者の力という菊岡の仮説は、半分正解だね」
半分というのだから、もう半分が存在することになる。
「この現象は私も一度体験済みよ、あなた・・・ゾンビの血飲んだでしょ」
上原の言葉に思い当たる事が一つある。
学校だ。
上原の言葉に動揺が隠せない俺に、追い打ちをかけるかのように、過去を話し出した。