18話『蕎麦屋デッド①』
[13:20](東京前の橋)
俺は、化け物顔面を銃で連射した。
「ドン・・ドン・・ドン・・ドン・・ドン・・ドン・・ドン・・ドン・・ドン・・ドン・・・・・・・・」
そのあと俺は、ぽろぽろとほほに涙がたれる・・
そのあと八柳とみことの方を向いて、赤子のように顔に縦線を入れながら無理あり笑って、「ゆずりの仇とったよ・・」
太陽に当たりながら見せる笑顔は、芸術でも表せないだろう・・。
きっと本人しかわからない。
そのあと俺は、地面に倒れた。
* * * * *
[14:36]
誰もしゃべらない、エンジン音とガタガタの地面の音だけの車内に一言声が響いた。
「お前が倒れた後の話をしてやるよ・・」
あまりに唐突で、頭はそのセリフに追いつかない。
当たり前だ・・・、後輩『仲間』を目の前で殺された後で平然と頭を働かせる奴の方がおかしい。
2秒ほどしてそのセリフを理解する。
まず、この男の声・・・八柳だ。
そのあと、なぜこんなことを言い出したのか・・・それは俺の倒れた後、つまり俺の知らないことだから。
こんな当たり前ですぐに理解できることに、2秒もかかる・・。
「教えてくれ・・」
俺がそういうと、八柳は語りだした。
それは、車に流れる音楽のようだった。
いやなことを紛らわすには、少しでも何かを聞いて、話して、いい雰囲気を作らないといけない。
それを分っているから八柳は、俺の倒れた後のどうでもいい話をわざわざするのかもしれない。
話を聞いた。
簡単に説明すると、俺が倒れた後、30分ほどみことは泣いていて動けないでいたらしい。
八柳は少しでも何かをしなければと思ったのか、車を運転して俺らのいるところまで持ってきてくれた。
そのあとしばらくしてみことも落ち着いて、俺を車に乗せた後、ゆずりを探しに車を走らせていたらしいが見つかることはなく、東京に入った瞬間、俺が目覚めたらしい。
「やっぱりゆずりは見つからなかったか・・・」
ゆずりを見つけて、せめて墓ぐらいは作りたかったなどと、雰囲気だけでも・・・なんて思っている自分に腹が立つ。
「お腹も減ったでしょ・・、この近くに美味しいお蕎麦屋さんがあるのよ・・少し前に行ったことがあるから行ってみない・・?」
「いいなそれ!!でも、作る奴いないけど、どうすんのさ・・?」
こんなふうに、普通に話してる八柳とみことを見ていると落ち着く・・・
後部座席にいる俺は、所首席と運転席にいる八柳とみことがこんなにも頑張ろうとしているのにと、また悲しくなる。
そうしていると、車は止まった。
そして、ハンドガン以外の武器は車に置いて車を出た。
その蕎麦屋さんは、木でできた少し古い有名店だ・・・。
何度か東京にきたときに、行列ができているのを見たことがある。
「店の名前って『雪咲』だったんだ・・・」
中に入る。
「ガラガラガラ・・チャリンチャリン・・」
ドアを開けると、鈴の音が鳴る。
「らっしゃい・・!!!」
俺らは驚いて足が動かず、眼を大きく開けた。
人の声がする、しかもちゃんと生きている人の声。
すると、のれんの奥から青い服に白いタオルを頭に巻いたおっさんが出てきた。
「こんな事態でぇ、お客とわぁ~めずれ~事もあるんだな!!!ま、入んな入んな!!」
ずいぶんとのんきで、元気のいいおじさんだ。
「失礼するわ・・」
そういって、みことは靴を脱いで中に入る。
俺も中に入ってみると、バーなどにある長い細い木のテーブル。
その背後に、30㎝ほどの段差があり畳でできている。
俺らは畳の上に座って、周りを見渡す。
「あそこにたくさんの写真があんな・・」
八柳が俺の背後を指さし、俺が体をねじってみると10枚ほどの写真が飾られている。
左から5枚は、従業員との楽しそうな写真。
その先は、死んだ人達の笑顔な写真だった。
「あぁ~懐かしいもん見てんな~、これはこの店を今まで支えた、歴代の勇者たちだ!!!あ、これ飲んでいいぞ!!」
おっちゃんは笑いながら俺らにペットボトルのお茶を渡した後、一番右の写真をどこか悲しそうに見ていた。
多分おっちゃんの親父さんなんだろうなと思いながらお茶を飲んだ。
しばらくした後に、そばが届く。
四角いざるの上に蕎麦が美しく乗っている。
その横に美しく置いてある揚げ物・・・お腹がすいてはしが動く。
「ズルズル~、うま・・・」
久々にちゃんと声を出した気がする。
八柳は左手だけで食べているせいで、とても食べずらそうだ。
「おい少年・・・!!食べずらそうだな!!これで食いな!!」
すると気を使ってくれたのか、フォークを八柳にくれた。
「悪いなおっさん!!助かるわ・・右手がありゃ~いんだけどな・・」
俺らが食べ終わった後デザートも特別にくれた。
杏仁豆腐だ。
それが食べ終わってしばらくすると、「チャリンチャリン・・」入り口が開いたときになる鈴の音が聞こえた。
「誰か来たみたいですよ?」
みことがそういうと、「あぁ・・、この店を守ってくれる従業員だ。」
おっちゃんの回答に俺らは少し唖然とした・・・
俺らが少し外を覗くと・・
「ザク・・・ブシュ・・・ドンドン・・」
そこには青い蕎麦屋の服をドレスのように、美しく感じさせるような華麗な動き。
その人が持っているのは、右手に刀・・左手に銃・・。
俺らは店を出た・・、そしてポケットから銃を取り出して援護するのを忘れて見とれていた。
そしてその人は、周りのゾンビを倒し終えて店の前に立っていた俺らを見た。
少し青色の肩につく程度の髪、目元がシュッとしていてクールな感じだ。
「大丈夫でしたか・・?初めまして、上原 蘭です。」
その瞬間、俺らは一気に顔色を変えた。
上原 蘭間違いなくゲームクリアー者だ・・・。
俺らの顔色を見た瞬間彼女『上原 蘭』は、「これは失礼・・初めましてでわないらしいですね・・・」
いきなり冷たく、冷徹な目になってこちらを凝視した。