10話「日常」
【3:52】
俺は、みんなを連れて歩いている。
学校と総合病院の間を挟んだ道をまっすぐ進むとコンビニが見えて、そこから少し歩くと俺の家がある。
たった今まっすぐ歩いてる最中だ。
見るからに、周りの家に人の気配は無かった。
時々、明かりがついている家があるがきっと引きこもっているんだろう。
「こんなにおもしれ~世界なのに誰も外にいやしない・・」
「あんたやっぱり馬鹿ね・・、これが生徒会長とかありえないわ」
みことと八柳は少し喧嘩ぎみだった・・。病院でみことが八柳の股間を蹴ったのがきっかけらしい。
「うるせ~な、こちとら悶絶状態で逃げ回ってたんだぞ」
俺とゆずりはしゃべりずらい空気で、声を出さずにアイコンタクトで会話していた。
が・・
「ゾンビです・・」
ゆずりの声を出した方向に目を向けると、何体かのゾンビが一般人を襲っている。
その人との距離は100mほどあったが、俺らは全力で走った。
「うぁぁぁぁぁ・・、ぶっ殺してやるよ・・」
一般人は金属バットでゾンビの顔面を何発も殴っているが少しも血を出さずに肩を掴まれ噛まれた。
「うぁぁぁぁ~・・・!!いてぇ~よ~いでぇ・・・」
泣きながら地面に倒れこんで肩を抑えながら、地面をガンガン両足で交互に蹴っている。
そのあと、八柳がそのゾンビ達の顔面を真っ二つにした。
みことが、一般人の男の人を見ているが「心臓が停止して脈がない」と一言言ってたちあがった。
そのあとみことは、銃『デザートイーグル』を一般人に向けた。
「バン・・」
だが、BB弾は頭に当たった後、地面に落ちて顔が今までのように吹っ飛ぶことは無い。
「少し待つわよ」
みことがそういって一般人を見ていると、様子が変わった。
体の表面が沸騰したようにぶくぶくと音が鳴った後に、いきなり体をあげた。
「バン・・」
みことの銃声だ。
その瞬間・・
「バン・・グちゃ・・ポト・ポト・・」
顔が吹っ飛んで、血がみことのブレザーにグっちゃりとついた。
「なるほどね・・」
みことはそういうと、八柳に銃を向けた。
「坂町君、ゆずりちゃん、そいつから離れなさい・・」
みことがわけのわからないことを言い出したので、反論した。
「何やってんだよみこと・・いくら喧嘩してるからってそれは無いぞ・・」
「違うわ・・、八柳君は右腕がゾンビにやられているのよ・・、いつ感染するか分かったものじゃないわ」
確かにそうだ。
八柳の腕は、化け物ゾンビにやられたものだった。
現に、学校の化け物ゾンビが八柳の腕が、歯に刺さっていたのを俺は覚えてる。
「だがそれならなんで八柳は、いまだに普通でいられんだよ・」
この質問には、八柳本人が答えてくれた。
「少なくとも俺は感染しね~よ、右手は、噛み千切られたんじゃなくて自分で切ったから。」
「は・・?」
「え・・?」
「ほえ・・?」
八柳以外の俺らはびっくりを通りこして、驚いた。
「だから、右手が噛まれてそのまま俺を引きずて来たから、右手自分で切った。」
みことはそれを聞くと銃を下ろして頭を掻いて、難しそうな表情をしている。
「坂町君の家でゆっくり聞かせてちょうだい・・」
そういって、歩き出した。
俺も死んだ一般人に目もくれず、みことについていった・・。
だが俺は思う、やっぱり今の自分はきっとどうかしている。
死んだ人を路上に落ちている石としか見れていない自分が・・。
* * * * *
【4:12】
俺らはやっとコンビニ前についた。
「コンビニだ・・、少しよってくぞ」
八柳の意見に同意して頷きコンビニの中に入ると。
2人の死体と裏から警察の車が突っ込んで、コンビニの壁が半壊している。
「こりゃ・・ひどいな」
俺はそういうと八柳以外、嫌~な顔で死体を見ていた。
相変わらずだが八柳はニコニコしている。
後輩のゆずりちゃんも少し慣れてしまっているのか、わりと落ち着いていた。
俺らは片っ端から食べ物を、コンビニの休憩室にあったビニール袋に入れて店を出たとき。
「あ・・」
そういうと八柳は、忘れ物を取りに行くように警察の車のドアを開けた。
「あったあったよ~ん」
八柳が手にしたのは、本物の銃『ニューナンブM60』だった・・
「そんなのあいつらには必要ないじゃない・・」
少し焦った声で、みことが八柳に言うと、「ゾンビはおもちゃで倒せるが、本物の人間は倒せね~・・持っておくにこしたことはねぇってことだ。」
「だいたい、普通の人間を私たちが殺すことなんてないわ・・、捨てるべきよ」
みことがやけに批判的だった・・、女の子ならわからんでもないが。
「馬鹿かお前は?ゾンビを殺すための武器を、周り『市民』から守るための武器が必要なんだよ・・少しは頭使えや・・」
少し日本語がおかしかったが、確かに八柳は正しいことを言ってる。
これにはみことも納得したのか、「わかったわ」と残念そうな声とあきれた声が混ざったような声で八柳に言った。
そして俺らはコンビニを出て家に到着した。
家は無事だったが鍵が閉まっていたので、ベランダに登って窓ガラスを割った。
ベランダには窓ガラスが2か所付いており、片方は親の部屋で、もう片方は俺の部屋につながっている。
「久しぶりの俺の部屋だな」
真っ暗で、パソコンの電源が入りっぱなし、机のコーラは水滴も出ないくらいぬるくなっていた。
一階に下りて家の鍵を開けた。
「入っていいぞ~」
すると、八柳は靴を脱いで「しつれ~すんぞ」と言って
そのあと、みことは靴を綺麗にそろえて「失礼するわ」と言って
そのまた後に、ゆずりちゃんがそわそわしながら靴を脱いで、「失礼します」と言ってちょびちょび歩いてリビングに入って行った。
生活の差というものを改めて知った。
リビングに俺が行くと八柳はソファに寝っ転がって、みことはテレビをつけてチャンネルを回していて、ゆずりはそわそわしながら周りを見渡していた・・。
とりあえずこの自由さにイラッと来たが、その瞬間・・
みことの見ているニュースが、俺らの目を一瞬にして引き寄せた。