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第四話『死ノ恐怖』


「で、何の用なんだよ。まさか、わざわざ嫌味を言いに来たわけじゃないんだろ?」

 睨み合うことしばし、沈黙に耐えかねた宗四郎が、嫌々ながらに聞いた。何しろ、御三家である桐生院家の当主が、わざわざ訪ねてきたのである。かなり厄介な用件を持ち込んできたに違いないのだ。

「お前に仕事の依頼だ。主な内容は邪風穴の封印及び、それに類する活動だ」

 予想通りの展開に、宗四郎は苦虫を何十匹も噛みつぶしたような、渋すぎる顔になった。

「よりにもよってハードな破邪業だな。悪いけど他を当たってくれよ。オレもそんなに暇じゃない……」

「お前にだけ、特別に手当が出るようになっている。通常の依頼料も当然上増しされる。詳しい額はこれを見ろ。悪い話ではないと思うがな」

 宗四郎の心の機微などお見通しとばかりに、征璽はびっしりと文字が並んだ書面を宗四郎に突き出した。上から下へ順を追う宗四郎だったが、半信半疑の顔が驚愕に変わるのに、たいして時間はかからなかった。

 征璽と文面とを見比べながら、宗四郎が聞く。

「オレが言うことじゃないけど、破格すぎるだろ。そりゃ、くれるって言うならやるけどさ」

「別に俺の懐が痛むわけじゃない。それだけお前に期待しているということだ」

 征璽の言葉の中に深意を見出した宗四郎は、露骨な警戒の顔つきでそれを指摘した。

「それはさ、オレを頼らなくちゃいけないほどヤバくなってる、ってことだよな」

「……ほう。察しがいいな。市井の安寧に浸かっている割に、たいした物の見方だ」

 素直に感心してみせると、征璽は懐から煙草を取り出した。取り出した一本に火を点ける。広がる赤から紫煙が立ちのぼる。彼はヘビースモーカーだった。煙草をまったくやらない宗四郎には、全くわからない感覚である。

 征璽が、事の次第をかいつまんで話して聞かせる。

「……というわけだ。差し当たって俺達は、当面の脅威である常世とやり合うことになる。感じているだろうが、邪風穴は加速度的にその勢力を増している。これを速やかに排除せねばならん」

 邪風穴とは、常世側が邪気で現世に干渉し、互いの世界を繋ぐ門の役割を果たすものだ。強力な邪気によって食い破られた穴はすぐに封じないと、そこから常世の邪気が流れ込んで、現世に悪影響を及ぼしてしまう。最悪、常世に巣くう邪妖のモノが現世で実体を顕現させてしまうことになりかねない。

 もしそれを許してしまうと、文字通り現世は地獄と化してしまう。そうさせないためにも、邪風穴の封印は何よりも優先する必要があった。

 話を聞き終えた宗四郎は、面倒くさそうではあったが、諒解してみせた。

「話はわかった。とにかく、この通りにやれば高額のギャラが手に入る寸法ってわけね」

「金が欲しいのなら、もっといい方法があるぞ」

「高科家に戻るってのはナシだ。オレは日佐谷宗四郎ひさやそうしろう。高科とは何の関係もないぜ。今も、これから先も、ずっとな」

 宗四郎の態度は冷然というより、全く取りつく島もなかった。もう説得は諦めているのか、征璽は無関心に煙草を吸うだけである。

 宗四郎は高科家の四男として生を受けた。現当主である一心の弟だ。破邪剣士として優れた資質を有しており、幼い頃よりその将来を期待されていた。先代当主で現在も大御所として権勢を振るう高科厳毅げんきは、宗四郎を後継と見ていた時期があった。

 が、宗四郎は数年前、突如高科家を脱し、市井に姿をくらませた。その理由を知る者は数少ない。桐生院征璽も、その少ない人物の内のひとりである。

「まあいいや。臨時収入にはもってこいだぜ。これって今日から?」

「今すぐだ」

 呑気な宗四郎に、征璽は間髪入れずに釘を刺した。宗四郎はもはや溜息を吐くしかなかった。

「少しぐらいゆとりをもたせてくれって。はいはい、わかりましたよ」

「ちょっと待て、宗四郎」

 家に戻ろうとする宗四郎を、煙草を吸い終えた征璽が呼び止める。鬱陶しそうに宗四郎は振り返った。

「なんだよ、まだ何かあるのか?」

「これまでの話は前座に過ぎん。俺がお前を訪ねた本当の目的をこれから言う」

 征璽の表情は真剣である。宗四郎は今頃になって、やっぱり断ればよかったと後悔し始めていた。征璽の言う本当の目的とやらは、よほど厄介なものに決まっている。

 宗四郎の苦み走った顔を真っ直ぐ見据えながら、征璽は重々しく言い放った。

「影生栄斗の処断。生かすも殺すも、その判断はお前に一任する。……必ずやり遂げろ」

「……言うに事欠いて、ヘビーだね。判断は任せるっても、女神様の逆鱗に触れるわけにはいかんだろうが」

 宗四郎は、これまで感じたことのない緊張に、目がくらむ思いだった。やはりこの世の中、そうそううまい話は転がっていない。自分のクジ運の悪さに、宗四郎は天を仰ぐのだった。


※※※


 夏凛が走っているのは、ごくありふれた通りである。普通に車が走っているし、歩道でも人がのんびりとした歩みを見せている。

 後方には、二台のバイクが続いていた。もちろん破邪の血族の面々だ。信号が赤に変わったので、三台が止まる。エンジンの鼓動を全身で感じながら、夏凛は邪気の根源を探っていた。

『夏凛殿。どうやら別の班が邪風穴に突入したようです。俺達も急がないと』

 ヘルメットに仕込んだインカムから、若者の焦れた声が聞こえてきた。功を焦っているのかもしれない。夏凛はそれを牽制する必要をおぼえた。

「逸るな。過ぎた戦意は害となる。自己を律さねば、無駄に命を散らすことになるぞ」

 信号が青に変わり、先頭の夏凛が発進しようとしたその時、ただならぬ邪気の流れをつかんだ。夏凛は脇目もふらずに左折をすると、そのまま勢いをあげて直進した。。

『夏凛殿、どうやら当たりのようですな』

「うむ。このままの勢いで突入するぞ」

 落ち着いた男の声が、夏凛にさらなる集中を促した。彼の名は倉尾くらおといい、夏凛より二回り近く年が離れた古豪である。落ち着いた言動と、熟達したものの見方に信頼がおける。夏凛は自分が破邪業に臨む際、好んでこの倉尾を用いていた。

『いよいよですね……! 腕が鳴りますよ』

 諫早いさはやは夏凛と同じか少しだけ年上の青年で、当主ではなく諫早家の子弟だ。上昇志向が強く、実力的には申し分ないのだが、若さが目立つ性格だった。

 三台は加速を続け、目指す地点までひた走る。まるで高速道を走るかのようなバイクの走行に、道行く人々が驚きの目を向ける。

「あそこか……! 二人とも、準備はいいな?」

『問題ないですよ。いつでもいけます!』

『私が後衛について、二人を援護します。あとは夏凛殿のご随意に』

 諫早と倉尾の返事を受けて、夏凛は車上で身を低くした。右手を車体側面にくくりつけた長い包みに伸ばす。目の前に、大きく口を開いた邪風穴が広がった。

「行くぞ……!」

 そのままの速度で邪風穴の中に突入する。これまであった景色が、不気味な赤黒さに汚染された。破邪の気を纏っていなければ、漂う邪気によって生気は冒されてしまうだろう。ここは間違いなく、邪妖のモノの巣窟であった。

 目の前の道路が、ぐずぐずとした泥沼のようなものに変異する。邪気の泉がわいて、死泥が様々な形に盛り上がっていく。邪気が憑依した亡者どもである。

「雑魚には構うな! 突破する!」

 夏凛は叫び、包みを解いた。その手に握られていたのは、一振りの長大な野太刀である。ぎらりとした鈍色の輝きを放つ、四季家伝来の破邪剣『九蓋くがい』。それが夏凛の武器だった。

 夏凛は九蓋を振り上げながら亡者の海に突っこむと、そのまま勢いよく薙ぎ払った。行く手を遮ろうとした亡者どもが、その一撃でまとめて葬り去られる。諫早は剣で、倉尾は巨大な鎚で、夏凛の後に続いた。

 亡者にかける情けなどない。当たるを幸いとばかりにそれぞれが武器を振るい続けた。無数の邪気の集合体である亡者どもが、無念の怨嗟を上げながら永遠の闇に沈んでいく。

 速度を落とすことなく直進を続けると、やがて緩やかなカーブに差しかかった。そのカーブの起点を最後に、亡者の妄執を後方に置き去りにした。

『思ったよりも楽勝でしたね! これだったら、オレひとりでも十分やれますよ!』

『馬鹿なことを言うな。お前ひとりでどれほどのことができると……』

「お喋りはそこまでだ。第二波が来たぞ!」

 諫早の若気を諫める間もなく、次なる敵は空から襲いかかってきた。容姿や大小は様々だが、全身の黒と禍々しい翼が共通している。揃って顔を醜悪に歪め、地上の獲物に狙いを定めはじめた。

「黒翼獣か……!」

 夏凛は黒が広がっていく空を見上げ、判断に迷った。何しろ数が多すぎる。留まって迎撃するのは無謀であるし、直線的な軌道しか描けない状態では、そもそも対空戦は不利である。

 そうした夏凛の迷いを打ち消したのは、巌のような倉尾の意見であった。

『夏凛殿。ここもこのまま突き進みましょう。黒翼獣を相手にしても、我らに利はない』

『何言ってるんですか! 撃退しないとこっちがやられる……』

『黙れ、諫早! 戦いは、そんな単純なものではないのだ。夏凛殿、ご決断を』

 諫早の不満を倉尾が一喝して退けると、夏凛に決断を委ねた。凛々とした若き女傑はその意思を示すべく、スロットルを全開にして、愛車を一気に加速させた。

「突破する! 近づいてくる敵だけを相手にしろ。迷うと死ぬぞ!」

 夏凛は決然と言い放つと、取りつこうとして群がる黒翼獣に、九蓋の太刀の洗礼を浴びせた。次々と撃墜されていく同胞の姿に恐れをなしたか、黒翼獣の大群は接近することを諦め、遠巻きから攻撃を開始した。

『キイイイィィィッ!』

 常軌を逸した金切り声が怪音波を発生させ、破壊的な調べを響かせた。さらに、羽ばたかせた黒翼が黒の衝撃を生み出す。一発の威力はたいしたことがなかったが、数が集まれば十分な脅威となるのだった。

 執拗な追撃を受けた夏凛達だったが、なんとか黒翼獣の包囲網を突破することに成功した。背後に小さくなっていく黒雲を見やりながら、夏凛は一抹の安堵に軽く息をついた。

「みんな、無事か?」

『なんとか……』

『問題ありません。夏凛殿は?』

 速度を緩めながら、各自で確認をする。全員無傷というわけにはいかなかったが、戦闘に支障をきたすほどのものではなかった。ただ、諫早の損耗具合が夏凛には気がかりだった。

 黒翼獣が追ってくる気配はなかったが、それがかえって夏凛に不安を抱かせた。残念なことに、その危惧はすぐに現実のものとなる。塀越しに見える民家から、強烈な邪気が吹き出したのである。

『危ない!』

 倉尾が叫ぶのと同時、前方から爆発音が響いた。邪気が引き起こした爆発によって、民家や塀などの瓦礫が周囲に飛び散った。夏凛と倉尾は車体を横に滑らせて緊急停止に成功したが、怪我の影響で、注意力が散漫になっていた諫早には、それができなかった。

『……ひっ?』

 それが諫早の最後の言葉だった。彼は飛来する瓦礫を避けることができず、そのままバイクごと潰されてしまった。嫌な音がして、ヘルメットがはるか後方に転がっていくのが見えた。その中に黒々とした何かが見えて、顔を青ざめさせた夏凛はそれから目を背けた。

『夏凛殿、気を確かに! ほうけている場合ではありませんぞ!』

 すぐ近くで聞こえてきた倉尾の声で、夏凛は我に返る。だが、夏凛の集中力は激しく乱れていた。足が震え、立っているのもやっとの状況で目の前に現れたのは、ビルのような巨体を誇る尖角紅炎鬼であった。



 額に大きく尖った角を生やし、かっと見開かれた双眸は血のような赤に彩られている。全身は燃え盛る火炎のような紅に染められ、隆々と盛り上がった筋肉が、怪力と堅牢さを誇らしげにしている。武器など持っていないが、全身が武器といっても過言ではない。

 この尖角紅炎鬼こそ、邪風穴の主であった。

「く、倉尾殿。諫早は……諫早はどうなった?」

 呼吸が苦しくなった夏凛は、震える手でヘルメットを投げ捨てた。汗に濡れた長い髪が流れ、蒼白になった美しい面が露わになる。明らかに動揺していた。

 夏凛は強いといえど、まだ二十歳を迎えたばかりの若い娘に過ぎない。破邪業で過酷な目に遭う機会が少なかったため、味方が実際に死するを目の当たりにしたことがなかった。瓦礫に潰されたバイクと諫早の身体。そして、路面に転がるヘルメット。そこに染み渡る赤黒い何か。

 唇をわななかせる夏凛の頬に、鋭く乾いた音が鳴った。はたかれた頬を手でおさえながら、平手を張った倉尾を凝視する。彼はヘルメットを脱ぎ捨て、年齢を感じさせるいかつい顔を険しくしていた。

「夏凛殿。いかなる時も冷静さを失ってはいけない。まだ我々は生きている。破邪の血族は生きている以上、戦わなければならない。目の前に倒すべき敵がいるのです! 脅えている場合ではない!」

 倉尾は無礼を承知で、正気を失いかけた夏凛に喝を入れたのだ。彼が言う通り、恐るべき邪鬼が敵意を剥き出しにしている状況である。戦意を喪失している場合ではなかった。

「すまなかった、倉尾殿。……そうだな。まずはこの邪鬼を倒さないことには……!」

 夏凛は強い眼差しを取り戻し、尖角紅眼鬼の巨体を睨み上げた。これだけの体格差があると、生半可な戦法では歯が立たないだろう。夏凛は手早く戦術を組み立てると、それを急ぎ倉尾に打診した。

「いいでしょう。それが最善かと思われます」

「まずは私が相手の機先を制する。その後の連携は任せたぞ」

 倉尾の賛同を得た夏凛は、九蓋を構えて尖角紅炎鬼に向かって、助走をつけた一足飛びで高く跳躍した。あっという間に邪鬼の頭付近まで飛び上がった夏凛は、そのままの勢いで破邪の太刀を振り下ろした。

「はあああぁぁぁッ!」

 裂帛の気合とともに打ちこまれた斬撃は、鈍い動きで防ごうとした腕に深く食いこんだ。皮を切り、肉を裂く。青紫色の体液が傷口からほとばしった。

『グアオオォォッ?』

邪鬼の悲鳴を聞きながら、夏凛は斬りつけた反動を利用して、空中で華麗に回転しながら地面に降り立つ。この重い先制攻撃で、腕の一本を無力化することに成功した。まずまずの戦果を得て、夏凛に少し余裕が生まれた。

『ゴオオオォォォーッ!』

 凄まじい咆哮が空間を震撼させた。邪鬼の逆鱗に触れたのである。なまじの人間が受けようものなら、身体をばらばらに吹き飛ばされてしまうだろう。だが破邪の血族の戦士はそうではない。逃げることなく、正面からそれを受け止める。

「破邪の血族、四季家が嫡流。四季夏凛、参るッ!」

 夏凛は九蓋を構え直し、恐れることなく、紅炎鬼に向かって快足を飛ばした。それと連動して、倉尾が敵の側面に回りこむ。二方向からの同時攻撃を行おうというのだ。邪鬼が、どちらの敵に対すべきか惑うのが見えた。こと戦いにおいては、そのわずかな間隙が命取りとなる。

 夏凛が繰り出した、跳躍しての斬り上げは鋭く、威力も申し分なかった。紅炎鬼は傷ついていない方の腕でそれを防いだ。刃が鋼鉄を思わせる赤銅の肌とせめぎ合う。その最中、足下に取りついた倉尾が、向こうずねに強烈な振撃を見舞った。確かな手応えが倉尾の手に返ってくる。

『オオオォォォッ?』

「今!」

 苦悶の声を上げる紅炎鬼に、夏凛は全身の力を九蓋に込めた。防御に対する集中力を乱した邪鬼の太い腕が、鈍い音とともに中空に舞った。

 切断面から不気味な鮮血がほとばしるより速く、夏凛は動いた。宙を蹴り、方向を直進に変えて紅炎鬼の胸元に飛びこみ、しっかりと破邪の気をのせた十字斬りを浴びせる。地上では、倉尾が助走をつけた破壊的な鉄槌の重撃で、紅炎鬼の足を砕き折っていた。

 背中から倒れこんだ紅炎鬼の巨体が、周辺の民家を無惨に押し潰す。夏凛は紅炎鬼の胸板に着地すると、そのままがら空きになった頸部を深々と斬りつけた。青紫の鮮血が、夏凛に向かって吹き出した。視界を奪われてはと、腕を顔面に掲げてそれを遮る。死に瀕した紅炎鬼の顔が、醜悪な笑みを形作った。

「夏凛殿?」

 危機を察した倉尾が、夏凛を守るべく、邪鬼の巨体に飛び乗った。そしてそのまま、迫り来る手の前に立ちはだかる。

「ぐぬっ? むぅぅ……!」

 金棒を盾に、全力で攻撃を阻む倉尾。だが紅炎鬼の瀕死の攻撃は、それすらを凌駕するものだった。夏凛が加勢するよりはやく、怪手は倉尾の体を捕らえていた。

「……っむう」

「倉尾!?」

 宙に持ち上げられた倉尾から、虚しく絶鳴が聞こえてきた。夏凛が紅炎鬼の腕を斬り飛ばしたのは、その直後である。体の奥底から沸き上がった怒りが、夏凛を衝き動かした。ほとばしる激情に身を任せ、夏凛は疾走した。

「死ねえぇぇ!」

 夏凛は、紅炎鬼の紅眼に嘲笑われながら、その額を九蓋で深々と貫いた。骨を貫通し、内部の肉の生々しい感触が生理的な嫌悪感を催す。が、夏凛はそれにも関わらず、勢いよく剣を引き抜くと再び、今度は一気に根本まで打ちこんだ。血肉を浴びてなお、夏凛の興奮がおさまることはなかった。


※※※


 力無く木の幹に背中を預ける夏凛の顔には、濃い疲労感と強い後悔の念が渦巻いていた。先ほどまでの激闘の疲れはもちろん、付着した体液などもそのままで、乾くことなく不快感をまとわりつかせている。

 尖角紅炎鬼を倒したことで、邪風穴は消滅した。世界は元の姿を取り戻していた。というより、邪風穴の中の世界は異空間であり、そこでの影響が元の世界に反映されることはなかった。そのため、人々は日常と変わらぬ日々を送ることができるのである。

 夏凛が半ば放心状態でいるのは、人気の少ない公園である。まだ平日の日中ということもあって、人通りはほとんどない。木々のざわめきや土の匂い、周囲から聞こえてくる生活音は、戦いに疲れた破邪の血族の心身を、わずかながら癒してくれる、はずであった。

 ここにいるのは夏凛だけだ。倉尾や諫早は、いない。破邪の気を失ったことで、あの中の邪気に取りこまれ、その一部とされてしまったのだ。それは死よりも深い悲しみだった。現世の平和のために戦って命を落としたにも関わらず、その魂は邪気に取り込まれてしまい永遠に常世を彷徨うのである。

「……私に油断があった、のか。倉尾は、死ぬことはなかった。諫早だって。……私が殺したようなものだ」

 夏凛は目を瞑った。熱いものがこみ上げてきていた。自分には泣く資格などないというのに。

 倉尾には、守るべき家族がいた。私的な会話をする機会はほとんどなかったが、以前、彼がぽつりとこぼしたことがあった。小さい娘と遊んでやる時間が取れず、寂しい思いをさせてしまっている、と。

 諫早だってそうだ。若くて軽薄な一面もあったが、一人前の破邪の血族たらんという気概を持っていたのは事実だ。彼は長男で弟がひとりいた。年が離れた弟に違う道を歩んでもらうため、自分が頑張らなくてはいけないと、少し気取りながら話していた。

 夏凛は顔を手で覆った。そして、声を出さずに泣いた。破邪の血族として生まれた以上、逃れることができない死という運命。その運命に翻弄されながら、生きていかなければならない。家族や兄弟、子供達の将来に希望を託しながら。

「……姉さん。私は強くなんかない……! 強くなんか、ないんだよ……!」

 止まらない涙が、手でつくった堰からあふれ出す。頬を濡らし、顎を伝って体に落ちていく。黒のレザースーツに、新しい水滴がいくつも爆ぜる。だが戦いが終わったわけではない。今こうしている間にも、邪風穴はその口を大きく開けているのである。

 泣いている暇などない。しかし、今の夏凛には、ほんのわずかな時間であっても、休息が必要であった。


※※※


 カチカチカチ……。

 教壇に立った教師が、黒板に板書をしながら、教科書を読み上げている。教室に居並ぶ生徒達は一言も喋ることなく、板書をノートに書き写す。そんなある種、異様な光景の中で、シャープペンをノックする音が聞こえていた。

 冬莉が開いているノートは真っ白だった。少しうつむいた顔は、ぼんやりとしている。教師の授業も耳には届いていない。ただ指だけが、規則的に動いている。押し出されたシャープペンの芯が、ノートの綴じ代の溝に何本も転がっていた。

「……き。四季。聞こえているのか? 四季」

「は、はいっ!?」

 気がつくと、教師が怖い顔で冬莉を睨んでいた。どうやら授業で冬莉を指していたらしい。慌てて立ち上がった冬莉は、教科書を持とうとしたが手につかず、床に落としてしまった。すると、周囲からバカにするような笑いのざわめきが起こり、冬莉はぐっと下唇を噛んだ。

「もういい。座りなさい。いいか、今の時期が一番大事なんだ。授業を疎かにしていると、そのうち泣きをみることになるぞ」

「はい。……すみません」

 明らかに落胆した教師の声に打たれて、冬莉は力無く椅子に座り込んだ。くすくすという忍び笑いが聞こえてきて、それがたまらなく不快だった。ふと、隣の席に座る男子と目が合う。彼は無表情の顔を憎たらしく歪め、鼻で笑ってきた。

(もうやだ……! なんでわたしがこんな目に遭わないといけないの? ここの人達はみんな冷たい。イヤだ、イヤイヤイヤイヤ……!)

 冬莉は両手で手を覆った。いっそこのまま大声をあげて泣くことができたら、と思う。家には姉や栄斗がいるから我慢できる。だがこの学校ではもう無理だ。

 それでも冬莉は我慢した。これ以上弱みを見せたら、本当にここにいられなくなってしまう。そうなったら姉達が悲しむ。余計な心配をかけてしまう。それだけは嫌だった。

 徐々に、徐々にだが涙の波が引いていく。大丈夫、おさまる。冬莉は何度も自分にそう言い聞かせて、ゆっくりと手の覆いを払いのけた。

 そして冬莉は、自分を取り巻く世界が変貌していたことを知るのである。



「え? これは、なに? どういうこと……?」

 呆然とした冬莉の呟きが、教室に虚しく響く。ここにいるのは冬莉だけだった。四十名近くいた生徒も、教壇に立っていた教師の姿も忽然と消えてしまった。

 窓の外を見やった冬莉は、そこに広がっていた光景に愕然とした。鉛色に沈んでいた空が、薄気味悪い赤黒さに汚染されていたからだ。わずかに開いた窓から、臭気を漂わせた生暖かい空気が入りこんでいて、冬莉は急いでその窓を閉めきった。

「……っ?」

 今度は廊下側から嫌な音が聞こえてきた。粘着めいた何かが這いずるような音。それも一つではなく複数だ。ゆっくりとした動きだが、それがかえって恐怖を誘う。完全に脅えてしまった冬莉は、顔を引きつらせながら、教室の隅で身を固くした。

「な、なに? なんなの……?」

 おそらく、教室の扉の向こうには、邪悪なもの達でひしめいてるのだ。昨日からの怪異の連続で、冬莉は頭がどうにかなってしまいそうだった。扉をこじ開けようと、みしみしと嫌な音が冬莉を責め立てた。

「姉さま、助けて……!」

 冬莉が脅えきった声で助けを求めるも、それは叶わぬ願いだった。木造りの頑丈な扉が派手な音とともにへし折られる。残骸を乗り越えて教室に入ってきたのは、もはや人の形を為していない亡者どもだった。その数は十や二十ではきかず、中にはお互いの身体が溶け合い、いびつにくっついている有様だった。

 にじり寄る亡者の群れに対して、冬莉はなす術がなかった。昨日は響がいてくれたおかげで助かったようなものだ。だが今は冬莉しかいない。逃げようにも教室は三階だし、出入り口は亡者どもに完全に塞がれてしまっていた。

「あ、ああ……あ……」

 亡者が冬莉のことを凝視している。恨み、妬み、嫉み。生に渇望するあまり、魂までも歪ませた哀れな死者が、迫ってきている。冬莉は彼らから逃れたい一心で、固く目を閉じた。視界をなくしてしまえば、少しは恐怖が薄れるに違いない。

「ごめんね、姉さま。ごめんね、栄斗くん……!」

 冬莉が死を覚悟したその時であった。誰かが自分を呼ぶのを、少女の聴覚が敏感に聞き取ったのである。

「……冬莉ちゃん!」

「え? その声は……?」

 一瞬目を開きかける冬莉だったが、炸裂した閃光によってそれは遮られた。温かくも強烈な光が教室全体を満たし、薄汚れた邪気に支配された亡者どもを浄化していった。

 光が収まると、もとの静けさが還ってきた。冬莉が恐る恐る目を開くと、机や椅子の残骸は散らばっていたものの、亡者の群れは跡形もなく消え失せていた。唖然とする冬莉のもとに、先ほどの声の主が駆け寄ってきた。

「よかった、間に合って。怪我はない? 冬莉ちゃん」

 心配そうに微笑んでいたのは、この学校で唯一の友達である倉里愛理だった。聖峰学院の制服を着ているが、その印象は昨日までとは全く違っていた。この強く優しい感じは、昨日の響が見せた姿と同じであった。

「詳しい話は後にしよ。今はとにかく、ここから逃げるのが先決。私についてきて」

 愛理もあまり余裕がないのか、すぐに表情を改めると、冬莉を抱きかかえるようにして荒れ果てた教室から飛び出した。廊下も教室と同じように赤黒いもやがかかっており、不快感を催させる。

「まさか、常世がこんなにも早く、強引に冬莉ちゃんを狙ってくるとは思わなかった。四季殿が危惧していた通りになってしまった」

「四季殿って……?」

 愛理の焦ったような呟きで、冬莉はようやく口を開いた。自分の中で、何かが急速に冷めていくのがわかった。春陽のことをそう呼ぶのは、限られた人間しかいない。耳を塞ぎたかったが、たとえそうしたところでそれから逃れることはできなかっただろう。

「今まで黙っていてごめんなさい。私は、四季家一門に連なる破邪の血族の子弟なの。だから、冬莉ちゃんのお姉さんの春陽さんは、私にとって絶対的な方よ」

 冬莉は落胆のあまり、全身から力が抜け落ちてしまった。倉里愛理は四季一門の総代、つまり春陽の命で動いていたのだろう。自分の妹と同い年の彼女にその護衛を命じ、その面倒を任せていたのだ。

 仮初めの友達。すべては、仕組まれていたことだった。

「……冬莉ちゃんに言いたいことがあるのはわかってるけど、それは無事に助かってからじゃないと聞けない。結界に開けた風穴は長くは保たない。急がないと」

 愛理は、冬莉の絶望を痛いほど感じ取っていた。打ちひしがれた様子の冬莉を見るのは辛かった。おそらく、冬莉は裏切られたという思いが強いに違いない。それは残念ながら事実であったが、真実ではない。自分の役目は忘れていないが、愛理は誤解を晴らしたかった。

「冬莉ちゃん、これだけは信じて。私は冬莉ちゃんのことを本当の友達だと思って……」

 愛理がそう言いかけた時だった。それまでずっと我慢していた冬莉の激情は、風船が割れたように弾け飛んだ。強引に愛理の腕を振りきった冬莉は、その場に仁王立ちをすると、小さな身体を奮わせながら絶叫した。

「ふざけないでよ! 春陽姉さまの命令に従って、わたしと友達ごっこをしていただけのくせに! どうせそうやって、ひとりじゃ何もできないわたしを見て、笑っていたんでしょ?」

「と、冬莉……ちゃん?」

 般若のような憤怒を見せつつも、深い悲しみに沈んだ冬莉の泣き顔。振り返った愛理が思わず絶句するほどの迫力であった。少女の小さな身体を、荒れ狂う感情の波が滅茶苦茶にしていた。

「どうして? 姉さまも、栄斗くんも、愛理ちゃんも! みんなでわたしを自分のいいように扱おうとする! わたしは、わたしは箱庭で飼われたペットなんかじゃない! ひとりの人間なのよ!」

 それは、今まで言いたくても言えなかった、冬莉の心の叫びだった。周囲は自分のことを大切にしてくれる。こちらが望もうと望まないとに関わらず。一見、それは居心地の良い環境に見えるかもしれないが、冬莉には重圧だったのだ。

 みんなは笑顔で、がんばって、と応援してくれる。その期待に応えるために、冬莉も笑顔でがんばり続けた。そうすれば、みんなはもっと笑顔になってくれるから。そう信じていたから。

「それなのに……こんなのってないよ。それじゃ、わたしは何のためにがんばってきたの? やりたくないこともやって、我慢できないことも我慢して。……愛理ちゃん。わたし、どうしたらいいの?」

 そう言ってその場に泣き崩れてしまった冬莉を、愛理はぎゅっと強く抱きしめた。それまでの苦労を労るように。誰よりも冬莉を愛おしむように。そして、震える耳元に熱く囁いた。

「冬莉ちゃんは冬莉ちゃんらしくしていればいいんだよ。私やお姉さん達も、いつもの冬莉ちゃんが大好きなんだから。……冬莉ちゃんが私を否定しても、私はずっと冬莉ちゃんの味方……友達だよ」

 友達。その言葉に、愛理の全てが込められていた。そう感じた冬莉が、濡れたまなざしを愛理に向ける。同い年の大人っぽい少女は、少しだけ寂しそうに微笑みながら、自分のことをじっと見つめてくれていた。

「行こう、冬莉ちゃん。みんなが冬莉ちゃんの帰りを待ってる。私が絶対に、冬莉ちゃんを助けてあげるから」

 愛理は冬莉の返事を待たずして、再び走り始めた。二人の間は人ひとり分離れていたが、橋を渡すようにしっかりと手が握られている。葛藤に苦しむ冬莉が立ち直るには、今しばらくの時間が必要だった。

 廊下を走り、いくつかの階段を駆け下りるのを繰り返した時だった。二人は、空間に大きく穿たれた穴の前にたどり着いた。その向こうに見えているのは、色のある景色。見慣れた現世の光景であった。

「冬莉ちゃん、早く。ここも、もうそんなに保たないわ」

 愛理が冬莉を急かす。愛理の言う通り、穴の拡がりは徐々に小さくなっているようだった。冬莉の背後に回った愛理が、冬莉の背中を優しく押す。抗いがたい力の前に、冬莉は

前のめりにつんのめった。

「待って。……愛理ちゃん、わたし」

 振り向こうとする冬莉の肩に、愛理はそっと手を置いた。それだけで、冬莉の動きは止められてしまう。

「話はあとよ。まずは一刻も早く、この場を離れないと……!?」

 愛理の声が不自然に止まった。次いで、冬莉の背中に何か熱いものが飛び散る感触。制服をぐっしょりと濡らした何かは、いやに生暖かかった。

「あ、あぐ、ううぅぅ……」

 愛理の口からこぼれたのは、苦鳴と、大量の血塊だった。弾かれたように振り返った冬莉が見たのは、愛理の胸を鋭利な刃が貫き、その箇所を赤黒く染める光景だった。

 次の瞬間には勢いよくそれが引き抜かれ、鮮血に濡れた愛理の身体がぐらりと傾く。その背後に現れたのは、蜘蛛の胴体にヒトの上半身を生やした妖魔、アラクネルであった。

『ニガサヌゾ、コムスメ。オマエガヤドシタタマシイハ、ワレラガアルジノモトニササゲラレルノダ』

 アラクネルの嘲笑が不快でおぞましい響きを放つ。その手に握られた槍の穂先は、愛理の血で真っ赤に濡れていた。血濡れに映る冬莉の顔は恐怖にひきつり、指一本動かすこともかなわない。妖魔アラクネルに圧倒されていた。

 だが、愛理は違った。瀕死の重傷を負ってなお、破邪の血族である少女は、自らの役目を果たすべく、恐るべき妖魔の前に立ちはだかるのである。

「……絶対に、そんなことは、させない……ッ!」

 死に瀕してなお、愛理の目には生気がみなぎっていた。それは冬莉を、友達を守りたいがための、愛理の執念であった。

「愛理ちゃん?」

 側に来ようとする冬莉を、愛理は振り絞った力で押し返した。

「冬莉、ちゃんは……逃げて。でないと、私ががんばる意味が、なくなっちゃう……から」

「イヤだよそんなの! 愛理ちゃんも一緒じゃないとイヤだ!」

 冬莉が泣き叫ぶも、愛理はその姿勢を変えなかった。大きく両手を広げて、まるで自分は壁だというように、アラクネルを威圧する。最後に、愛理は冬莉に微笑んでみせた。。

「ねえ、冬莉ちゃん。……私たち、ずっと友達だよ……」

 それが、冬莉が聞いた愛理の最後の言葉となった。愛理から放たれた力によって、冬莉の小さな身体は風穴をくぐり抜け、現世へと戻った。廊下でもんどり打って転げながらも、冬莉は風穴から目を離さなかった。

「愛理ちゃん! わたしも、愛理ちゃんとはずっと友達だよ!」

 その声は、愛理に届いたのだろうか。

 閉じていく穴の向こうで、新たな鮮血が吹き出した。獲物を逃がしたことに怒ったアラクネルは、愛理の頭をつかむとそのまま握り潰してしまった。聞くに堪えない音が聞こえてきて、少女のいたいけな心は底知れぬ絶望にとってかわられた。

「……もうイヤ。もうイヤだよこんなの! ううぅ……うわあああぁぁぁー!」

 目の前で親友が殺された。自分を助けるために、愛理は自ら犠牲となったのだ。その事実が、冬莉に激しい慟哭を促した。それは心の枷を破壊し、秘められていた力を解放させた。四季冬莉の中に潜んでいた邪魂が甦った瞬間だった。

 その様子を、物陰からじっと見つめる人影があった。

「邪魂の覚醒か。父上が予見した通りだった。……四季殿には悪いが、手遅れにならないうちに、こちらのカードを切らせてもらう」

 直江響は硬い表情で呟くと、黒々とした邪気に包まれた冬莉に霊符を放ち、封呪の法術をかけた。力を失い、廊下に倒れこむ冬莉。その小さくて軽い体を抱き抱えると、響は人知れず学校を後にした。そして、校舎を出たところで、あらかじめ施しておいた隔絶結界を解いた。

 背後で日常が戻るのを感じながら、響は校門を出た。

「家まで頼む。……それと父上に連絡を。時は来たれり、とな」

「はい。お嬢様」

 校外に控えていた車に乗り込むと、響は冬莉をシートに優しく横たえてやった。現実の悪夢から隔離された少女は、閉じた瞳に涙を浮かべながらも、穏やかな寝息を立てていた。。


※※※


 静かな空に、笛の音が鳴る。美しい音色だが、奏でられるのは聞く者を惑わせる、妖しげな旋律だった。

 曲の途中で吹奏を止め、青紫の唇が拭き口から離れる。薄紫のヴェールが風に揺れて、秀麗な面が垣間見えた。そして、軽やかな笛の音に勝るとも劣らない声音が、不穏な言葉を紡ぎ出した

「どうやら、二人とも目覚めの時を迎えつつあるようだね。邪妖の血肉と邪妖の魂。それらは元は一つ。分かたれたそれらは、元のように合わさらなければならない。……いや、そうせざるを得ないのさ」

 白皙の肌に浮かび上がる、ほっそりとした艶やかな青が、優美な弧を描いた。

「魂が拠り所を求めている。その猛烈な欲求に、血肉も己を欲してやまなくなる。次はキミの番だよ、栄斗クン。せいぜい見せてくれよ、キミの悪あがきを……」

 影生葬死郎の呟きを消し去るかのように、強い風が彼に吹きつける。着衣が巻き上げられた次の瞬間、彼の姿は影も形もなくなっていた。

 濃い鉛色が、さらなる不安を人々に落としこむ。雨が降り出そうとしていた。

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