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わたしの異世界食配達物語  作者:
異世界へはプリン・アラ・モードと共に
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1

砂糖にタマゴに牛乳にバニラエッセンスを机の上に並べましょう。

赤い林檎においしそうな苺に甘い甘いバナナはよく冷やしておきますよ~~。

鼻歌を歌いながら材料と道具を用意して台所を預かるものの戦闘装束である白いエプロンを装着した私、高梁奈津は「よしっ」と気合を入れてタマゴをボールへと割った。


「おねぇ。アレ食べたい~~~」

 

五人兄弟の末っ子である五歳の妹 冬香が指差した先にあるのはとあるバラエティ番組でタレントがおいしそうに食べているプリン・アラ・モード。

どうやら東京の有名店を訪れているらしく、黄色のプリンの上に生クリームとおいしそうなフルーツが綺麗にカットされ器に盛られている。

それらをいささかオーバーなリアクションで絶賛しているタレント達だったがお菓子そのものは実においしそうだ。

 

「おお~~~、プリン・アラ・モード!」

 

「じゅるり」

 

映像を見てテンション上げ上げなのが双子の兄である次男 秋彦。

言葉はなかったが湧き出るよだれを拭きながらじっと私に期待の目を向け続けるのは双子の弟である秋信。

中学生の双子は食欲に関しては抗うこともなく全面降伏であり、食べたいと思ったら即、行動である。

 

「おまえら………夕飯ぐらい静かに座って食べろ」

 

高校二年のわが家の裏番……ごほんっ!長男の春斗がご飯を食べるのもそっちのけでテレビに噛り付いた弟妹達をピシリと叱り付ける。

躾などに関しては私などよりよほど厳しい長男の言葉に弟妹達が慌てて席に戻りご飯を食べ始める。

ここら辺、日頃の躾の差かな。私はついつい甘やかしちゃうからあの子たちもどこか甘えがあるというか。

だが、プリン・アラ・モードがよほど気になるのかチラチラとテレビを見続けている。

 

「はぁ………食事に集中できないならテレビは消すぞ」

 

「あ、だめ」

 

「ハルにぃ駄目だよ!」

 

「………(ぷるぷる)」

 

リモコンに手を伸ばした春斗を弟妹達が必死になって止める。

 

「なら、ちゃんと食事に集中しろ」

 

「「「は~~~~い」」」

 

「あはは。ハルが言うとみんな素直に言うこと聞くわね」

 

双子の御代わりをつぎに台所に引っ込んでいた私がお茶碗を渡しながら言うとハルが「父さんとねぇちゃんがこいつらに甘いからだろうが」とふくれっ面になる。

それがまた可愛くて笑いたくなったが笑ったが確実に機嫌を損ねるだろうから必死に堪える。そしてテレビのお菓子に未練タラタラな可愛い弟と妹にとある提案をしてみる。

 

「プリン・アラ・モードか………なんなら明日のオヤツに作ってあげようか?」

 

私の言葉に弟妹達の目が爛々と輝く。

 

「ほんと?これ、作れるの?おねぇ!」

 

「まじ?まじで作ってくれんの?やった~~~!」

 

「………(なむなむ)」

 

冬香と秋彦は万歳をして秋信は私に向かって何故だか拝み出す。

全然似てない双子なくせに食い意地が張っているとい一点のみは本当にそっくりなんだから。

 

「こらこら。さっきハルに注意されたばかりでしょ?ちゃんと食事ができない子にはプリン・アラ・モードどころか明日のオヤツ、抜きよ」

 

「「「!?」」」

 

私の鶴の一声に三人の背筋がぴーんっと伸びる。

 

「ち、ちゃんとたべてるよ!」

 

「お、おう!ちゃんと静かにたべる!」

 

「………(こくこく)!」

 

ものすごく真剣な顔で食べ始める三人に笑いながら私も食事を再開する。

こんなに楽しみにしてもらっているのなら腕によりを掛けておいしいプリン・アラ・モード、作らなきゃね!

そんな決意をこっそりと固めているとハルがこっそりと耳打ちしてきた。

 

「……ナツねぇ。大丈夫か?」

 

心配性な弟に私は笑う。

 

「大丈夫よ。材料は全部近くの商店街で揃うし、無理はしないから」

 

買い物とお菓子作りぐらい大丈夫よ。といえば複雑そうな顔を向けられる。

 

「ナツねぇ………ちゃんと食べられるもの、作れよ」

 

真顔で失礼なことを言った弟のお皿から罰として私はおかずを一つ掠め取ってやった。


そして翌日、弟妹達が帰ってくる前に私は本日のリクエストオヤツであるプリン・アラ・モード作りに取り掛かっているのである。

 

「ふ~~んふ~~ん♪」

 

シャカシャカと泡立て器で割ったタマゴを混ぜて裏ごしをした後に、ある程度混ざった所で砂糖と牛乳と投入しバニラエッセンスを少量淹れてさらに混ぜる。

それが終ると今度はお鍋に砂糖と水を入れて焦げ付かないように小火で煮詰めてカラメルをつくる。

甘いいい匂いが台所を満たしていく。

いい感じに色づいたカラメルをプリンの型に適量流し込んでその上から最初に作ったプリン液を注ぐ。

型に入れたプリンを用意していた蒸し器に入れて蒸す。

蒸している間に牛乳と砂糖を入れて混ぜ合わせ生クリームを作る。

これは最後の仕上げの時に使うので置いておいて、次ぎは冷やしておいた果物をカットした。

 

「おっ?出来たかな?」

 

生クリーム作りやカットや後片付けをしているうちにプリンが蒸しあがる時間になる。

爪楊枝を固まったプリンの表面にそっと刺す。


うん。液はでてこないし、ぶつぶつもできてない。成功!


ルンルン気分でプリンを蒸し器から取り出し一旦冷蔵庫で冷やす。

その間に他の家事を済ませて冷やしたプリンをプリン・アラ・モード用の容器にひっくり返す。

ぷるるんっと震えつつカラメルと黄色のコントランスが美しいプリンが姿を現す。

会心の出来ににんまりしつつ最後の仕上げに取り掛かる。

まずは生クリームでプリンの周りと一番上にデコレーションし、カットフルーツをその周りに飾っていく。

最後にチェリーを定番の生クリームの上に乗っけて、特製のジャムシロップを掛ければ高梁家特製プリン・アラ・モードの完成!!

 

「いや~~~~出来た出来た。さすがにプリン・アラ・モードを七つも作るのは疲れるわね」

 

台所のテーブルに並ぶ七つのプリン・アラ・モードを前に私はうんうんと満足の笑みを浮かべた。

我ながらおいしそうに出来ました。

昨日見たテレビに映し出されていたものと遜色のないプリン・アラ・モードに満足感がムクムクとわいてくる。

これを食べて笑顔を浮かべる家族を思うと愉しくてたまらない。

おっと、オヤツをお母さんに持っていかなくちゃ。

お盆に器を載せると私は台所を出た。 

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