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わたしの異世界食配達物語  作者:
お菓子と神話
20/58

18

「あはははっ!あ~~~面白かった!」


ネタバレした途端に堪えていた笑い声を解禁させた魔術師さんは本気で愉快そうに哂う。

その様子にリカルド君はもちろんのことザクロちゃんの額にも若干青筋が浮いているように見えるんですけど。気のせい?


「貴様は!貴様は!なんでいつもいつもいつも!何がしたい!何がしたいんだ!理由はなんなんだ!」


「う~~ん?面白そうかなぁ?と。あと、した働きの間に流れている噂をいくつか横流ししてもらう条

件でここまで入れてあげたんだ。あ、普通に紹介もできたんだけどそれじゃ面白くないから宙吊りになってもらったんだ!」


爽やかに犯行を暴露した魔術師さんに各々反応を返す。


私は頭痛を感じ眉間を押さえ。


リカルド君は子供だということも忘れるほどの怪力で魔術師さんの襟首つかんで説教。


ザクロちゃんは遠い目で遠くを見て。


最大の被害者であるトト君は「え?おいら騙された?」と己がしなくてもいい恐怖を味わったことを知

った。


「貴様は本当にその快楽主義をやめろ!人に迷惑をかけるなぁ!」


「あはははっ!や~だ~~よ!」


「きっさまぁ!」


ドタバタしている二人に置いていかれてしまった私達。

ふっとトト君がテーブルの上に残されたミートパイに気付き、目を輝かせた。


「あ!これが女神さまの神の食事!」


有り得ない名称に本日二度目の目眩が私を襲う。

ああ~~~っ!そういえばまだ訂正していなかった!


「あ、あのね!トト君!私、食の女神じゃなく………!」


「食べていいっすか!食べたいっす!」


「…………どうぞ」


邪気のない純粋な瞳に私は負けました。

あ、そういえばこのミートパイを他の二人と一匹が取り合いしていたような………。


「………にゃ………」


うっ!ものすごく残念そうな目でこちらを見つめる石榴色の瞳があるんですけど………。

ちらりと横を見ればウルウルお目目でこちらを見上げてくるザクロちゃん。

か細い声で鳴くので余計に罪悪感がちくちくと刺される。


「うにゃ………」


背中を見せているざくろちゃんの尻尾が拗ねるようにユラユラ揺れていた。


「ざ、ざくろちゃん、家に帰ったら晩御飯ちょっとおまけするからそんな瞳で見ないで」


「うにゃ!本当ですか?やった!」


約束ですよ?と無邪気に喜ぶザクロちゃんに苦笑いが零れる。


「いただくっす!」


そんなこんなをしているうちにちゃっかりミートパイをもって椅子に座ったトト君がフォークをパイに刺す。

フォークがさくっとパイを割ると中からとろけたチーズとひき肉に絡まったトマトソースが出てくる。


「わぁ………!」


トト君はまるでおもちゃでも与えられたような顔でしげしげと中の具を確かめ、パイのサクサク感に目を丸くし、そしてとろけだしたソースとチーズをパイに絡め口に運んだ。


「~~~~~~~~~~~~~~~っ!」


食べた瞬間、全てが凍りついたように動きを止めたトト君だったけど次の瞬間には顔を全力で緩ませるとほっぺたを膨らませたまま幸せそうな吐息を吐いた。


「うまいっす!」


自分が作った料理をこんな至福だといわんばかりの顔をして食べてくれる子に邪険にできる人っているのかしら?

私は出来ないわ。

トト君は手を止めることなくミートパイを口に運び続け、あっという間に一切れ完食した。

残念そうに皿を見る姿が思いっきりリカルド君と被っているんで私はこみ上げてくる爆笑を抑えるのに必死だった。




「女神様じゃないんすか?」


ミートパイはトト君の胃袋へと消え、リカルド君と魔術師さんの喧嘩も一応の鎮火を見せたので改めて事情説明と相成ったのだが私が異世界から召喚された人間で女神じゃないというくだりのところでトト君が非常に疑わしそうな声を挙げた。


「残念ながら。違う。私は人間です」


「でも、知らない料理や食材の調理方法も知っているし………」


「私の世界では常識的な知識なの!私からしたらこの世界の食文化の低さの方が驚きなの!」


「でも………神話と同じで地味ながいけ………」


「何が言いたいの?」


なにやら非常に不名誉なことを言いかけたトト君ににっこり笑顔を向けたら何故だか慌て口をつぐんだ。本当になんでだろうねぇ(棒読み)。


「とにかく!私は人間よ」


「はぁ………そうなんっすか………」


しゅんと落ち込むトト君。

彼にしてみれば憧れの存在に逢えると期待していた分落胆も大きいのかもしれない。

この子の態度からして食の女神って料理人に崇められているみたいだし。


「折角、食の女神様にお会いできると思ったんっすけど………」


「トト君………」


「すんません。おいらの勘違いでおさわがせして!罰はちゃんと受けるっす!」


椅子から立ち上がり深々と頭を下げたトト君はどうやら罰を受けることをすら覚悟しているようだった。


「ちょっ!罰って………そんな!」


「王族の居住区域に許可なく入りこんだんっす。それ相応の罰は覚悟の上っす!」


そんな悲壮な決意を固めなくても!

それに元を正せばここまで手引きした魔術師さんが悪いんだ。


「魔術師さんがトト君の勘違いをわざと見逃さなければ起きなかった事件です。っていうか普通に紹介していればこんなことトト君がしようと思うわけがない!」


ゆえに責任の所在は魔術師さんにあってトト君にはない!

と高らかに宣言したら魔術師さんを除く一人と一匹から大きな拍手を頂ました。

そして魔術師さんからは抗議。


「ひどっ!皆して僕を悪者扱いするぅ!」


「「どう考えても(お前・貴方)が悪いん(だろうが)でしょう!」」


本当に魔術師さんには猛省をしてもらいたいです!


結局、悪さをたくらんでいたわけでもない上に明らかに魔術師さんの愉快犯的作為があったということでトト君には刑罰はなし、ただし、彼の上司である料理長には事情を説明してそちらの方で何か罰を加えてもらうということで話しは決まった。

事件の大本の原因である魔術師さんには私から一週間ほどおやつ抜き。目の前で他の人が食べるのを只ひたすら見守る刑に処しました。


追伸。食の女神ではないことはわかってもらえたんだけどそれはそれとしてこの世界にはない料理の知識やレシピは是非知りたいとトト君がこの宅配に参加したいと熱烈希望を出してきました。

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