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わたしの異世界食配達物語  作者:
お菓子と神話
13/58

11

全てのクッキーが焼きあがってそれらをタッパーに詰め込み手提げかばんに詰め込む。

 

うっ!作りすぎたか。予想外に重い。

 

少し考えたが紅茶を作ってそれを水筒に入れる。シュガースティックと一緒に手提げに入れてから新聞紙を引いてその上に靴をはいて乗った。

 

「いいよ。ざくろちゃん」

 

「はいです!」

 

私の足元に寄り添ったざくろちゃんが目をつぶる。見えない何かがぴんと糸を張り詰めているような気配。

見慣れた家の中のはずなのに異質な空気が感じられた。

どきどきする私をよそにざくろちゃんを中心(つまり側にいる私も中心にふわりと風が巻き起こり、最初に見た光が現れる。

二度目でもやっぱりちょっと不安になる私をよそに光はゆっくりと私たちの周囲を浮遊していた。


ちりん。


まるで合図のようにざくろちゃんの尻尾の鈴が響いた。

そしてその瞬間、まぶたを開けたざくろちゃんの瞳がほのかに輝く。

ゆっくりと浮遊していた光が力を得たように早さを増し、魔方陣を描いていく。

光が最後のひとつを描いた瞬間、私たちの姿は世界から消えていた。


 

「やっほ~~~~、直接会うのは数日ぶりだね。ナツ」

 

目を開けるとそこはもう、私の世界ではなく違う世界。

整えられた室内、ふかふかな絨毯、高そうな家具たち。

 

私、また、本当に異世界にやってきたんだ。

 

本当に来られるかどうか半信半疑だったけどこれで確信できた。

視線を向けると相変わらずのフード姿で手を振っている魔術師さんの隣でリカルド君が不機嫌そうにそっぽを向いていた。

 

「えっと………お久ぶりです?」

 

魔術師さんは頷いてくれたけどリカルド君はちらりと視線をよこしただけで絶対に私の方を見ようとはしなかった。

 

私は魔術師さんに耳打ちをする。

 

「魔術師さん………なんでリカルドくん怒っているんですか?」

 

「ああ………大丈夫大丈夫!ナツの料理を食べれば機嫌なんて一発で直っちゃうよ!」

 

「はぁ………あの、でも、私の料理が口に合うかどうか………」

 

ただでさえこちらの世界では家畜の餌にされている食材なんかを使っているのですが………。 

あ、いまさらながらに不安になってきた。あれ?王族にこれ食べさせても大丈夫?不敬罪とかにならない?

 

「大丈夫大丈夫!ささ、こっちのテーブルに座って!ほら、王子も座る座る!」

 

「お、おい!引っ張るな魔術師!」

 

「さぁさぁさぁ!おいしい「おやつ」の時間だよ!」

 

おやつという単語に無理矢理座らされたリカルド君が首を傾げる。 

 

そりゃぁ、ねぇ。お菓子のないこの世界では生まれてない単語だもんね。

 

「午後に軽い軽食やお菓子………甘い食べ物とお茶を飲んでゆっくりする時間のことだよ」

 

私が説明すると「へぇ」とリカルドくんはこちらを向いて納得し、私と目が合うと苦い顔してまた目を逸らした。

 

これ、本当に大丈夫なの?魔術師さん。

 

「さぁ、今日のメニューは何かな?ナツ」

 

なんか………この人、ただただ珍しい料理が食べたいだけなんじゃないかって気がしてきた。

 

「は~や~く!」

 

「はいはい………」

 

魔術師さんに急かされながら私は手提げ鞄からクッキーのぎっしり詰まった特大タッパーをテーブルに乗せる。

ワクワクしているのを隠さない魔術師さんと興味がない振りをしながらもやっぱり気になるのかチラチラをタッパーを見ているのが丸わかりなリカルド君。二人の注目の中、私はタッパーの蓋を開ける。


フワリと香るクッキーの甘い香りに二人の口から感嘆の声が漏れる。

 

「「おお~~~~」」

 

キラキラな目をした二人はクッキーに釘付けだ。

なんだかそれがオヤツを目にした妹たちにタブって私は笑いを堪えつつ本日のメニューの説明に入った。

 

ごほん。

 

ちょっと気取った挨拶なんてしてみた。

 

「え~~~本日は高梁デリバリーを注文いただきまして誠にありがとうございます。本日、お届けしますはお菓子の一種、クッキーです」

 

「くっきー………これが」

 

「本日用意したクッキーは三種類。王道のプレーン。黄色いのがカボチャクッキー、こちらの豆のようなものが乗っているのがアーモンドクッキーです」

 

「かぼちゃにあーもんど?聞いたことない食材だな。お前の世界の食材か?ナツ?」

 

クッキー効果か普通に声を掛けてくれるリカルド君。だけど御免ね、その質問ちょっとこちらの世界の人には答えずらいの。

 

ううっ………この世界での名前を言うのはやばいと思ったから私の世界の名前で言ったのに………なんで突っ込んでくるかなぁ………。

魔術師さんはニヤニヤ笑って助け舟を出す気はないようだ。

 

「えっと……ま、まぁ、細かいことは気にしないで!さぁ、召し上がれ!」

 

「細かくはないと………ぐほっ!」

 

まだ何かを言いかけたリカルド君の口に手短にあったアーモンドクッキーを突っ込む。

驚きに見開いた目が私を非難するように睨まれ、そしてそれらはすぐに払拭された。

無言で咀嚼していたリカルド君がクッキーを食べきる。そして、そのまま固まった。

 

え、なんで?

 

や、やっぱり異世界の人にはアーモンドは駄目だった!

 

「ごめん!リカルドくん!美味しくなかった無理しな………」

 

「…………(かっ)!」

 

私の慌てぶりもなんのその、リカルド君の目が開眼されたかと思ったら目にも止まらぬ速さでクッキーがリカルドくんの口の中に消えていく。

その様を呆然と見ていたら隣であはははっ!と心底愉しそうな笑い声が響いた。

 

「魔術師さん?」

 

こちらもクッキーを食べている。だけどその目は夢中でクッキーを食べているリカルド君に向けられていた。

 

「あれ、美味しすぎて我を忘れているね」

 

「ええ~~~?クッキーだよ?しかも素人の私が作った普通の」

 

「こんな甘い食べ物はこの世界にはないんだよ?しかもこの世界にはない砂糖は果物よりも甘味が強い。オマケに王子は君の作る食べ物がものすごく気に入ったみたいだし?」

 

「え?」

 

「数日前からそわそわうろうろ。落ち着きがなかったんだよねぇ~~~。浮かれているのを知られたくなくて君は素っ気無くしていたけどね!」

 

まぁ、丸わかりだったけどと笑って暴露する魔術師さんは性格がよくないと思う。

あのぐらいの年頃の子ってそういう自分の弱みみたいこと知られたくないと思うよ?特に年上には。

思わずジド目で魔術師さんを睨んでしまう。

 

「性格がよくないですよ」

 

「良くない?随分優しい言い方をしてくれるねぇ~。世界共通認識で言うと僕は性格最悪、らしいよ~~~~」

 

しれっとした様子で軽く流す魔術師さんに私は脱力した。

貴方の性格の悪さは世界共通認識なんですか?


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