FILE2:暗転
「なんだあれは!?」
誰かが叫んだその言葉で、甲板は騒然となった。
人が多すぎて、一体何を指して叫んだのか誰もわからない。
トレインは椅子に座ったまま、その状況を見ていた。
「なんだぁ?・・・・・・っ!?」
直後、ものすごい轟音と共に船が揺れた。
「うぉっ」
バランスを崩したトレインだが、固定されているテーブルにしがみついて転がるのを防いだ。
トレインのまわりでは、他の乗客が転がっている。
「なんだよ、これは・・・っ」
トレインは毒づきながら、ふらふらとなる体を支えていた。
なんとか体を安定させようとして、ふと空を見上げたトレイン。
そこで視界に入ってきたのは、信じられないものだった。
いつのまにか、厚くどす黒い雲に覆われた月。
美しい夜空の星も隠してしまうような竜巻―――突然の嵐が、船に迫っていた。
「うっ・・・そだろ、おいっ!!」
トレインはとっさに、テーブルに置いていたパソコンに手をかけた。
あわてつつも自分のバックパックにそれを押し込み、封をした途端。
「痛っ・・・・・・!!」
ひどい衝撃がトレインを襲った。
吹き上げられた椅子が飛んできて、トレインの背中を直撃した。
次の瞬間、トレインの視界は反転―――
「・・・あ・・・・・・?」
荷物をしっかりと抱えたまま、トレインは暗い海へと投げ出されたのだった。