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第十六話 先生、ですよ

「先生‥‥?」


「はい。先生、ですよ」


柳井はぽかんとする堂本にニッコリと笑って説明を始める。


「魔法使いと言っても、全員が全員簡単に魔法が使えるわけではありません。魔力が足りなかったり、魔力をコントロール出来なかったり、魔力を放出する事が上手く出来なかったりと、様々な理由で魔法が上手く使えない子供がいます。ここは、そういう子供達にそれらの欠点を改善させ、魔法が使えるようにさせる"学校"なんです。そして私は魔法を教える"先生"というわけです。今は休業中ですけど、前はもっと沢山の人がいて賑やかだったんですよ」


柳井は笑顔で説明する。


だが、その笑顔はどこか寂しそうに見えた。


堂本はそれに気がついたが、何か言う事はなかった。


「柳井はこの国最高の指導者なのよ」


桂里奈が自分の事のように自慢げに言うと、柳井はくすりと笑った。


「そんな大それた者じゃありませんよ、私は。皆さんが頑張ってくれただけです」


「何謙遜してるのよ。貴方の指導を受けた軍人も多いのよ?」


桂里奈はそう言った瞬間、しまった、というような顔をする。


「‥‥そうですね」


柳井は、再び寂しそうな笑みを浮かべた。


「まぁ、つまり魔力のコントロールが出来ないお前のために教えてくれるというわけだ」


美聖が強引に話を元に戻す。


「魔力のコントロール‥‥ですか」


そもそも、堂本は『魔法』というものがどういうものかよく分かってない。


だから、魔力だとか、そのコントロールだとか言われても全くぴんとこない。


「まぁ、今はよく分からないかもしれませんけど、そのうち‥‥ですよ。今はゆっくりと休んで下さい」


「え?」


「魔力のコントロール‥‥というのは一歩間違えば大変な事になる危険を持ち合わせていますから。体調を万全にしてから始めます」


「体調は‥‥」


「彼女の言う通りにしろ」


万全だ、という前に美聖がきっぱりと言い放つ。


「そうよ、さっきも言ったでしょ。無理しないでって」


「今は休んで下さい。丸三日も寝てたんですから」


「三日!?」


堂本はつい大声を上げる。


柳井が『一日中心配していた』と言っていたから、寝ていたのはそれくらいだと思っていたのだ。


「それは‥‥私も聞いていませんが」


柳井も驚いている。


「まぁ、ちょっと色々あって余計に時間かかったのよ」


桂里奈は少し慌てているようだった。


「そうですか‥‥まぁ、そういう事なら尚更休んでもらわないといけませんね」


「でも‥‥」


少しでも早く、魔法について知りたい。


そして、少しでも早く、皆に追い付きたい。


堂本はそこまで考えて、ある事に気付く。


(元の世界に帰ろうとは‥‥思わないんだなぁ‥‥)


不思議と、そういう気持ちにはならなかった。


すでに、こっちの世界の住人と馴染み、大切だと思えてきている。


考えてみれば、出会って間もない人達なのに、どうしてこんなに大切にしたいと思えるのだろうか。


「‥‥大丈夫?」


堂本がそんな事を考えていると、桂里奈が心配そうな表情で覗き込んで来た。


「は、はい! 大丈夫ですよ!」


急に桂里奈の顔が間近に現れ、堂本は赤面する。


「それならいいけど‥‥まぁ、とにかく今日はしっかり休んで、明日に備えなさい」


「‥‥はい」


堂本は素直に頷いた。


「まぁ!! 魔法がどういう事かくらいは、教わった方がいいかもな!!」


北斗はそう言うと、美聖の方を見る。


「何で私が?」


美聖は面倒だからか、露骨に嫌な顔をする。


「嫌なのか!?」


「嫌だとかそういう事じゃなくて」


「じゃあ、私が説明しようかしら」


桂里奈がニヤニヤ笑いながら言う。


「つい口を滑らせて余計な事言っちゃいそうだけど、ね」


「‥‥脅しじゃないですか」


美聖が苦虫を噛み潰したような顔をする。


「やってくれる?」


「‥‥分かりました」


美聖はしぶしぶといった感じで頷く。


「じゃ、後は頼むわね」


「はい?」


「私達は他にする事があるから、この子はあなたに任せるわね」


美聖はそう言うと扉を開けて部屋から出ていき、北斗も続いて出ていく。


「私も、少々用事がありますので」


柳井は笑顔でそう言うと部屋から出ていく。


「‥‥お前は、どうするんだ?」


美聖がリリムを睨むように見る。


「そうねぇ‥‥別に用事はないけど‥‥」


リリムはそう言うとチラリと堂本を見て、笑みを浮かべる。


「ここにいない方が面白そうだから、出てくわ」


リリムはそう言うとあっという間に部屋から出ていった。


「な、なんなんだあいつは‥‥」


美聖は呆気にとられたように部屋の扉を見る。


「あ、そうそう」


再び部屋の扉が開き、リリムが顔だけ出す。


その表情は、玩具を手にいれた子供のようだ。


「言い忘れてたけど‥‥二人きりだからって御主人様(マスター)に変な事したら許さないから」


「するか馬鹿!! さっさと出てけ!!」


美聖が赤面しつつも力いっぱい叫ぶと、リリムはすぐに扉を閉めた。


「全く! あの馬鹿は!!」


「あ、あの‥‥」


「何だ!?」


美聖は怒りが収まらないのか、堂本にも怒鳴る。


堂本はそれだけで萎縮してしまった。


「えっと、その、あの‥‥」


オロオロとする堂本を見て、美聖は少し冷静さを取り戻した。


「‥‥すまない、取り乱した」


美聖は素直に頭を下げる。


「いや、えっと、大丈夫、ですよ」


堂本もなんとか落ち着こうとする。


美聖はふぅ、と一息いれるとベットに腰掛ける。


「それで‥‥魔法についてだが」


美聖が、説明しようとする、まさにその時だった。


ズン、と地面が揺れた。


「な、何ですか!?」


美聖は堂本の問いには答えずに、部屋を飛び出す。


堂本も、彼女に続いた。


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