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第十話 聞いてなかったの

「第三皇女‥‥? 緑葉国‥‥?」


「ええっと‥‥あなた達もしかして、そこらへんの話、全然聞いてないの?」


堂本とリリムがポカンとしていると、桂里奈が照れたような笑みを浮かべながら訊く。


「は、はい‥‥」


「何も聞いてないわ」


堂本とリリムが素直に頷くと、桂里奈は轟の方を向く。


「ちょっと! なんで教えてないの!? 私馬鹿みたいじゃない!」


「別に今教える事でもないかなぁ、と。それよりも前に話さなきゃいけない事が沢山ありましたし‥‥まぁ、そこらへんは姫様が説明して下さい」


轟はそう言うと、パチンと指を鳴らす。


すると、やや古びた紙が堂本の目の前に出現する。


「これは‥‥」


「この国の地図だな!! 随分古いやつだが!! まぁ気にすんな!!」


北斗がハイテンションかつ早口で喋りながら地図を拾う。


堂本はやや怯えた表情でたじろぐ。


「ん!!? どうかしたか!!?」


「え、えっと‥‥」


「もしかして、北斗の事怖がってる?」


桂里奈が怯える堂本を見ながら呟く。


それは図星だったようで、堂本はきまりが悪そうに俯く。


「マジか!!? 俺なんか悪い事したっけか!!?」


(無駄にでかくて声も大きくて暑苦しいからよ)


リリムが誰にも聞こえないくらいの声で呟く。


「それなら、アンタはどっか行ってきなさい。私はこの子と話するから」


「え、どっかって」


「いいからさっさと出て行きなさい」


桂里奈はそう言うと部屋から押し出そうとする。


「いや、ちょ」


桂里奈は明らかに自分よりも大柄で筋力もありそうな北斗をぐいぐい押す。


「じゃ、そう言うことで」


桂里奈は北斗を部屋の外に出すと、すぐに扉を閉めた。


「い、いいんですか?」


「北斗がいると君が困るんでしょ?」


桂里奈が笑顔で堂本の方を見る。


「こ、困るわけじゃ‥‥」


「じゃ、ちゃちゃっと説明しちゃいますか」


桂里奈は堂本の答えを聞かずに、轟の出した地図を手に取る。


「人間界は、全部で13の国に分かれてるの」


桂里奈はそう言うと、堂本の腕に自分の腕を絡めた。


それなりのボリュームのある胸に腕が当たり、堂本は顔を赤らめて俯く。


「ほら、ちゃんと見なきゃダメよ?」


桂里奈はそう言いながら堂本の腕をがっちりロックする。


「そうよ、せっかく教わるんだから、真面目にやらないと」


轟はそう言いながら、桂里奈が絡めた腕とは逆の腕に自分の腕を絡めた。


当然、轟の胸が堂本の腕に当たる。


「あ、あの‥‥」


「ほら、集中しなさい」


轟は真剣な表情で、さらに顔を赤にした堂本を見ながら言う。


「リ、リリム‥‥」


堂本が部屋内で唯一味方になってくれそうなリリムの名前を呼ぶ。


しかし、リリムはがら空きの背後からそっと抱き着いてきた。


「へぇ、この世界ってこんな風になってるのね」


リリムは完全に硬直してしまっている堂本に気がつかないふりをしながら地図を見る。


「り、リリム‥‥何で‥‥」


「ここが一番地図が見やすいんです」


リリムが悪戯っ子のような笑みを浮かべながら言う。


堂本はその顔で自分の言う事を聞かせるのは無理だと悟り、諦めて必死に頭の中から雑念を消しながら

地図を見た。


それは当然ながら、堂本の知っている地図ではなかった。


大陸と思われる場所は5つしかなく、その5つの大陸が東、西、南、北、中央にあり、東西南北の国がさらに4つに分かれている。


「今、私達がいる緑葉国はここ」


桂里奈が堂本の腕に絡めた逆の手で西側の大陸の南側を住む。


「ちなみに、私達が始めに連れて行こうとしてた場所はここ。光冬国(こうとうこく)って言うんだけどね」


轟はそう言いながら北の大陸の東側を指差す。


「あんたの移動の魔法でここにはいけないの?」


リリムが訊くと、轟が首を横に振る。


「この国から出る範囲だと、ここの奴らにバレちゃうのよ」


轟が、唯一分かれていない、中央の大陸を指差す。


「『帝清国(ていせいこく)』‥‥人間界を治める貴族達と、圧倒的な権力と金と能力ある人間が集まる国、この世界の中心よ。他の国に移るくらいの魔法を使うと、この国の連中に感づかれちゃうのよ。だから、魔法を使わずに移動しなきゃ」


轟はそう言うと、指で緑葉国から光冬国までをなぞる。


すると、轟がなぞった部分が光り、浮かび上がる。


「これが航路。最短距離でも、結構距離あるわよ」


轟が指をパチンと鳴らすと、光は消えた。


「人間界は、国ごとに特色があるわ。私達の緑葉国は、自然豊かな国‥‥と言えば聞こえはいいけど、まぁ、実際はかなりの田舎なのよ」


「そ、そうですか‥‥」


堂本は何と言えばいいか分からず、あいまいな相槌をうってごまかす。


「ま、そういう国だから、政府も重要視してないし、こういう秘密組織があってもバレないんだけどね」


桂里奈がなんでもない事のように言う。


「‥‥秘密組織?」


「あら、聞いてなかったの? 悲劇の連鎖を断つ者(カテナ・フェルミ)は表立って動く組織じゃないわよ。表ではそれぞれそれなりの地位がある連中ばかりだからね。普通に動くだけでかなり目立つのよ」


堂本が轟の方を見ると、轟は苦笑いを浮かべていた。


「‥‥何で黙ってたんですか?」


「言う必要ないでしょ? それを知ったからって結果は変わらないんだから」


それは、最初から堂本を悲劇の連鎖を断つ者(カテナ・フェルミ)に協力させるつもりだった、という事に他ならない。


堂本は、沸き立つ感情を飲み込み、「まぁ、そうですけど」と答えた。


ただ、堂本の代わりに感情を吐き出す者がいた。


「それ、どういう意味よ」


リリムが、轟を睨みつける。


「そのままの意味よ」


「あんた‥‥」


リリムが轟に向けて手を翳そうとした。


しかし、堂本がその手を握り、争いを止める。


御主人様(マスター)‥‥」


「今はこんな事してる時じゃないでしょ?」


堂本が子供に言うような口調でリリムをたしなめる。


リリムは納得はしていないようだったが、渋々引き下がった。


「なんかよく分からないけど‥‥決着ついた?」


「はい。続きお願いします」


「オッケー。じゃあ‥‥」


桂里奈はそう言って続きを話そうとした時、扉が勢いよく開いた。


「ウワォ、モテモテだな!!」


「‥‥堂本さん」


扉を開けた北斗が口笛を吹きながら茶化し、美聖から逃げていたせいか服がよれよれになり、少々疲れたような表情で側に立つ堤は呆れたような顔で堂本の名前を呟く。


そして、


「‥‥‥‥」


彼らの後ろに立っていた美聖は、


「‥‥‥‥お前は何をしてるんだァッ!!!」


これ以上ないほどキレていた。




「それで、これからどうするの?」


堂本の必死の弁明が終わり、残りは美聖と堤が教える、ということで決着がついた後、桂里奈は轟に訊いた。


「そうですねぇ‥‥魔法についても詳しく知らないみたいですし、色々とやらないといけない事は多いですが」


「なら、あの子の所に連れて行けばいいんじゃない?」


桂里奈はそう言うと、堂本に向けてニッコリ笑う。


その表情は、何かを企んでいるようだった。

今まで「敦君の嫁探しっ!」→「堂本君は魔法の世界に迷い込んだようです」→「僕の恋人」を順番に一週間ごとに更新してきましたが、12月から不定期となっております。


これは私的に忙しくなったからです。


多分今年いっぱいはこの忙しさが続くので、一ヶ月くらい更新できないかもしれません。

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