ダニ
〈朝晴れて慾しいと冬に懇願す 涙次〉
【ⅰ】
* 怪盗もぐら國王の許に、内妻・中目朱那誘拐の豫告があつた。新聞の活字を切り拔き、貼り合はせて作成された、古風な豫告狀である。「こいつ莫迦ぢやないのか。俺が仕事の時以外は、いつも朱那と一緒にゐる事を知らんのか」。とは云へ、國王、念の為じろさんに朱那の護衛を依頼。だが國王が仕事 -勿論盗みなのだが- に出てゐる間に、朱那を攫ふ為、或る男が「もぐら御殿」に忍び込んで來た。あつさりその男はじろさんに依つて捕縛されたが、カンテラ、その話を聞いて、「【魔】ぢやないのか? 何故國王の仕事の日時を知つてるんだ? 水晶玉で『もぐら御殿』の様子を見張つてゐる奴がゐるんだ!」。だとすると、朱那の護衛をしてゐるところを見られたじろさんに、一人で立ち向かはうとは、じろさんも随分と舐められたものである。
* 當該シリーズ第9話參照。
【ⅱ】
で、結局その男は【魔】だつたのであるが、「誰の指圖だ?」-じろさんにぎゆうぎゆう絞め上げられた挙句、と或る人間から命令を受けての仕業である事をゲロ。が、その「と或る人間」が誰だかは白狀しない。【魔】、「殺されたつて云へない事もあるつて譯さ」-果たして【魔】を動かし得る人間とは何者か?
【ⅲ】
テオ、調べて行く内に、自民党から今度の総選挙で立候補してゐる、元警察官僚の軍鶏田建が怪しい事に氣付く。彼は公約の内に、「社會のダニの根絶」を掲げてゐる。強大な警察國家を(トランプを眞似て)創り出さうとしてゐる、髙市政権らしい政策である。
※※※※
〈ネトウヨは一水會の爪の垢煎じて嚥めや氣合ひが違ふ 平手みき〉
【ⅳ】
ダニ扱ひの國王、怒り狂つた。「よしんば俺が『ダニ』だつたとしても、ダニにはダニなりの意地つてもんがあるのを、盗みに盗んで思ひ知らせてやる!」聞けば* 雪川正述率いる武闘派ヤクザ、雪川組もその「ダニ」の内にカウントされてゐるらしい。テオ、廣域指定暴力團、廣山聯合と軍鶏田の癒着してゐる事を突き止めた。カンテラ、「これは斬らなくちやな。飛んでもないワルだぜこいつ」。で、お定まりのチヤンバラなのであるが...
* 前々シリーズ第103話參照。
【ⅴ】
廣山聯合からは、若頭・左川佐七が出張つて來てゐた。この一件を廣山聯合がどんなに重視してゐるかゞ、分からうものだ。カンテラ・じろさん、チヤカの集中砲火を浴びた。廣山聯合と内々示し合はせてゐた、機動隊も出動してゐる。じろさん、廣山聯合組員逹の發砲を、着てゐた黑装束を脱いで身代はりとさせる「祕術・分身」を使つて食ひ止めた。後はカンテラが、順次撫で斬りにした。ジェラルミンの盾をも分断してしまふカンテラの傳・鉄燦の斬れ味に、機動隊員逹は慄然とし、後退を余儀なくされた。流石に其処にゐない軍鶏田・廣山聯合総裁の兩者は斬れなかつたので、「日本國民の審判を待つ」と、カンテラ、追求を諦めざるを得なかつた。テオ、例の* すつぱ拔き週刊誌に情報を賣り飛ばしても良かつたが、証拠不充分だとして逆に名誉毀損で訴へられてしまふだらう。
* 當該シリーズ第38話參照。
【ⅵ】
と云ふあらましで、このお話は終はる。雪川正述が禮を述べ、一味には巨額の謝禮金が下りた。雪川「出來れば私も闘ひに參加したかつたのだが、生憎廣山聯合に目を着けられゝば、我が組は只では濟まないところだつた。カンテラ先生、此井先生、そしてテオさん、だうも有難う。お蔭で溜飲が下がりました」。
【ⅶ】
雪川正述と云へば、カンテラ事務所のロボット番犬・タロウの戀犬、* 玉乃の飼ひ主である。玉乃の事は大分長い間書いてゐない、と記憶してゐる。彼女は一體だうしてゐるのだらうか。と一見作者無責任のやうだが、レギュラー、セミレギュラー含めて順繰りに書いて行くのは至難の技である。作者の苦衷、お察しあれ。ではまた。
* 前々シリーズ第104話參照。
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〈嚔する私事は祕した儘 涙次〉




