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T-DAY:台湾戦争  作者: 中央国家安全委員会主席
第7章 解放

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203Y年3月2日 台北

203Y年3月2日 

中華民国/台湾 台北市中正区 総統府

地下指揮所の壁面の大型モニターには、暗号化された極秘回線を通じて、五つの国の指導者たちの顔が分割表示されていた。林総統代理、ワシントンのホワイトハウス執務室のポーカー大統領、そして、米国の特別な同盟国として西側優位の国際秩序を守るため新たに参戦を決定した、ロンドンのダウニング街十番地の英国首相、キャンベラのオーストラリア首相、そして日本の高城沙奈子総理である。


「まずは林総統代理、郭総統への卑劣なテロに対し、心からの見舞いを申し上げます。そして、台湾国民が示した驚くべき結束に、深い敬意を」


高城総理が、凛とした、しかし温かみのある声で切り出した。


「ありがとうございます、高城総理。郭総統は一命を取り留めました。何より、わが国民は今、党派を超えて一つになっています。独裁者の放った弾丸は、皮肉にも我々に『真の建国』をもたらしました」


林総統代理は、疲労を滲ませながらも、その瞳に静かな炎を宿して答えた。


「おいおい、林さん、しん気臭い挨拶はそこまでだ。我々が見たいのは、北京の連中が腰を抜かすツラだからな」


ワシントンのモニターの中で、ポーカー大統領がネクタイを緩め、コーヒーカップを片手に身を乗り出した。


「テロに屈しないのはアメリカの伝統だ。周の野郎は、蜂の巣をつついたどころか、ドラゴンの尻尾を思い切り踏んづけたんだ。……ロンドンの準備はどうだ?」


英国首相が、端正な顔立ちに微かな笑みを浮かべて頷いた。


「もちろんです、大統領。わが『クイーン・エリザベス』空母打撃群は、すでにインド洋から南シナ海へと入り、全速で北上中だ。米軍の駆逐艦、そして豪州の誇るAUKUS級原子力潜水艦も影のように付き添っている。自由で開かれたインド太平洋を守るため、連合王国がなすべきことは一つだ」

「わが豪州の原潜部隊はすでに深海で牙を研いでいる。南からの『首輪』はすでに締まりつつある」


豪州首相が短く、しかし力強く付け加えた。


「……戦略の骨子を確認しましょう」


高城総理が、手元の秘匿端末を操作した。各国のモニターに、台湾を南北から挟み込む巨大な矢印が投影される。


「北方および東方からは、米原子力空母二隻を中核とする打撃群、そしてわが海上自衛隊の護衛艦『いずも』を含む機動部隊が展開する。これら主力艦隊が台湾沖の会合点に到達するのを待って、台湾軍による包囲部隊への全周的一斉攻撃を開始する。よろしいですね?」

「ハンマーと金床アンヴィルだな。北京の艦隊を、4か国のハンマーで台湾というアンビルに叩きつける。最高にクールな作戦だ」


 ポーカー大統領が、空のカップを振って満足げに言い放った。


「それだけではないわ」


林総統代理が、地図上の金門島と馬祖を指差した。


「金門と馬祖を、ただ守るだけにはさせない。台湾軍は、福建省沿岸の侵攻インフラ、つまり港湾施設やミサイル基地への『限定的な攻撃』を決定しました。金門への再侵攻を根源から断つために」

会議室に一瞬、緊張が走った。大陸本土への直接攻撃は、戦争のさらなるエスカレーションを意味する。


「ただし、台湾本島への反撃の誘発を避けるため、今回の反撃の主力は、金門島及び馬祖の地下に隠匿していたHIMARSなどの長距離ロケット砲とします」


ポーカー大統領がその静寂を破った。


「いいぞ! やられたらやり返す。それが民主主義の流儀だ。金門にこれ以上の火の粉を飛ばさせないためには、発射台ごと消し飛ばすのが一番だ。アメリカはそれを全面的にバックアップする。高城さん、異論はないな?」

「……わが国としても、国際法上の自衛権の範囲内として、この限定攻撃を支持します。侵攻の根源を絶たねば、真の平和はあり得ない」


高城総理が断言すると、英国、豪州の首脳も力強く頷いた。


「よし、これで決まりだ」


ポーカー大統領が立ち上がり、画面越しに各国の首脳を指差した。


「周主席に教えてやろう。民主主義国家が一度団結したら、世界一タチの悪い喧嘩相手になるってことをな。……林さん、郭総統によろしく伝えてくれ。目覚めたら、一緒に台北の屋台で一番美味いもんを食おう。勘定は俺が持つ!」

「……その日を、心待ちにしております」


林総統代理の口元に、この戦いが始まって以来、初めて確かな希望の微笑が浮かんだ。 会議が終了し、各国のモニターが消えていく。しかし、その後に残されたのは、虚空ではなく、太平洋の波濤を割って進む鋼鉄の意志の連動であった。北から、南から。独裁者の野望を粉砕するための「自由の盾」が、今、台湾海峡へと集結を開始した。

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