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T-DAY:台湾戦争  作者: 中央国家安全委員会主席
第6章 奪還

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203Y年2月25日 北京/尖閣諸島

2月25日

中華人民共和国北京市西城区 中南海 


「……与那国を失ったというのか。我が精鋭たちが、あの小島で日本軍に屈したと?」


最高指導者、周華平主席の低く沈んだ声が、豪華な装飾が施された執務室に冷たく響いた。 目の前に並ぶ将軍たちは、一様に首を垂れ、額に脂汗を浮かべている。 与那国島の失陥は、単なる一離島の喪失を意味しない。それは、周主席が提唱した「新型戦争」の無敵神話に穿たれた、修復不能な巨大な亀裂であった。


「このままでは終わらせん。台湾本島の窒息を完遂させるためにも、釣魚島の『主権』を今こそ物理的に確立せよ。海軍と陸戦隊の特殊部隊を直ちに投入しろ。日米が体制を立て直す前に、既成事実を積み上げるのだ」


独裁者の最後の一言は、東シナ海を再び焦熱の地獄へと突き落とす死刑宣告であった。


尖閣諸島・魚釣島から北へ約四十海里。漆黒の東シナ海、荒れる波を切り裂き、白く泡立つ航跡を引いて突き進む灰色の影があった。

中国人民解放軍海軍、東海艦隊所属の052D型ミサイル駆逐艦「南京」を筆頭とする、計六隻の突撃部隊である。艦隊の心臓部では、346A型アクティブ・フェーズドアレイ・レーダーが目に見えない電磁波を放射し、日米の動向を血眼になって探っていた。

その中央には、一万トンを超える巨体を揺らす071型水陸両用揚陸艦「崑崙山クンルンシャン」が鎮座している。

広大なウェルドック内では、最新の高速高速戦闘ボートに乗り込んだ海軍陸戦隊の精鋭たちが、夜の闇に紛れた隠密上陸の合図を待っていた。彼らの装備は暗視装置から通信機に至るまで最新鋭で固められ、目的はただ一つ。魚釣島の最高点である奈良原岳に五星紅旗を掲げ、恒久的な「釣魚島守備隊」の拠点を築くことにある。


日本・沖縄県石垣市 尖閣諸島周辺上空

遥か上空三万フィート。エンジンの重低音だけが響くコックピットの中で、那覇基地から緊急発進した第九航空団・第二百四飛行隊の新田一等空尉は、冷徹な狩人の目で作戦空域を睨みつけた。

彼の駆るF-15Jは、最新の電子戦改修を施された「イーグル」の進化形である。


「……全機、リンク16同期完了。|統合防空ミサイル防衛指揮システム《I B C S》からターゲット・データを取得」


新田のHMDには、自機のレーダーだけでなく、米軍の早期警戒管制機E-3G、海上自衛隊のイージス艦「まや」、さらには宇宙空間を周回する低軌道衛星群が捉えた敵艦隊の座標が、鮮明なシンボルとして投影されていた。


これこそが、日米が構築した統合全領域指揮統制(J A D C 2)の真髄であった。陸海空、そして宇宙・サイバーの全領域が、一つの巨大な神経網のように繋がり、情報の霧を完全に晴らしていた。


「ウィザード01より那覇SOC。ポイント・ゼブラに敵編隊を確認。……これより『鋼鉄のカーテン』を展開する」


新田の言葉に呼応するように、石垣島と宮古島の高台に配置された、陸上自衛隊・第五地対艦ミサイル連隊の十二式地対艦誘導弾(S S M)のランチャーが一斉に駆動した。

長い筒状のコンテナが北の空を仰ぎ、データリンクを通じて送られた「南京」の精密な座標を、その人工知能に刻み込む。尖閣周辺海域は、今や日米統合の死の網へと変貌していた。


「敵の直掩機だ。十一時方向、高度二万。J-16の編隊か」


新田の背後数マイル、レーダーには映らない「虚空」から、冷静な声が飛び込んできた。米空軍のF-22「ラプター」。嘉手納から発進した世界最強のステルス戦闘機が、音もなく敵の死角を占位している。


「ウィザード、こちらラプター・リード。正面の獲物は任せる。我々はバックの『掃除』を担当する。……全機、交戦許可ウェポンズ・フリー!」

「了解。イーグル全機、マスターアーム、オン。……シュート!」


新田のF-15Jの翼下から、国産のAAM-4B中距離空対空ミサイルが、白煙を引いて夜空へ飛び出した。

同時に、F-22のウェポンベイが電光石火の速さで開き、最新のAIM-120D・AMRAAMが射出される。

データリンクによって多方向から、かつ時間差なく迫るミサイルの奔流。

中国軍のJ-16は、自機のレーダーが悲鳴を上げるほどの強烈なジャミングと、死角から迫る「見えない槍」に完全に翻弄された。最新鋭のレーダーをもってしても、日米が連携して作り上げた「鋼鉄のカーテン」を回避する術はない。

暗雲に覆われた尖閣の空に、オレンジ色の爆発の花が次々と咲き誇る。

一機のJ-16が火達磨となって海面へと墜落し、それを見た「南京」の艦橋はパニックに陥った。


「対空戦闘! 垂直発射システム(V L S)解放! 敵ミサイル多数接近!」


しかし、その叫びも空しく、石垣島から放たれた十二式SSMが、海面すれすれを這う「シースキミング」航法で艦隊に肉薄していた。

日米台の連携が生んだ情報の網と、圧倒的な火力の投射。

尖閣諸島を狙った侵略の野望は、夜明け前の東シナ海において、無慈悲なまでの「科学の力」によって粉砕されようとしていた。


日本・沖縄県石垣市 魚釣島沖合


「……こちらウィザード01。敵機編隊の制圧を確認。揚陸艦『崑崙山』は、対艦ミサイルにより大破、大きく傾き沈没しつつある」


新田は、愛機のスロットルを引き、大きくバンクさせた。 眼下には、依然として激しい波が魚釣島の岸壁を叩いている。 しかし、そこへ至る海路は、日米が張り巡らせた「鋼鉄のカーテン」によって、一兵たりとも通さぬ鉄壁の要塞と化していた。 朝。 東の空から、雲を切り裂くようにして鋭い陽光が差し込み、荒れ狂う東シナ海を銀色に染め上げた。 尖閣諸島の主権を巡る死闘は、日米の完璧な統合運用という圧倒的な現実の前に、中国軍の侵攻阻止という形での幕引きを迎えようとしていた。

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