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T-DAY:台湾戦争  作者: 中央国家安全委員会主席
第5章 逆転

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203Y年2月20日 東京

203Y年2月20日 日本 東京都千代田区 総理官邸

ポーカー米大統領の会見からわずか三十分後。記者会見場には、急遽招集された記者たちの熱気と、言葉にできない緊張感が渦巻いていた。 照明の下に現れた高城内閣総理大臣は、いつになく厳しい、しかし一点の曇りもない決然とした表情でマイクの前に立った。手元の原稿は、数多の防衛官僚と外務官僚が知恵を絞り、そして彼女自身の魂が削り出した歴史的な文書であった。


「国民の皆様。 わが国は今、戦後最大の危機の渦中にあります。

現在、台湾に対して行われている軍事的な海上封鎖、および、武装工作員等による執拗な攻撃は、わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃であり、これによりわが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由、および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態、すなわち『存立危機事態』であると認定いたしました。

また、わが国固有の領土である沖縄県与那国島を現在占拠している武装部隊については、各種インテリジェンスを総合的に判断し、中華人民共和国によるわが国に対する組織的・計画的な武力行使であると断定いたしました。政府はこれを受け、わが国に対する外部からの武力攻撃が発生した事態、すなわち『武力攻撃事態』を認定いたしました。

これら二つの事態認定に基づき、先ほど臨時閣議において『対処基本方針』を決定いたしました。現在、すでに先島諸島一帯に出動し、先週には国会の承認もいただき活動している自衛隊の治安出動命令を、直ちに『防衛出動命令』に切り替えることを命じました。

事態は一刻を争います。国民の生命を保護し、わが国の主権を断固として守り抜くため、対処基本方針および防衛出動に関する国会承認手続きを事後に回すこととなりましたが、この手続きも法に基づき直ちに進めてまいります。

わが国は、自由、民主主義、基本的人権、そして法の支配という普遍的価値を共有する大切な友人、台湾の人々を見捨てることはありません。台湾に取り残された数千の日本国民を見捨てることも、またあり得ません。同時に、一ミリたりともわが国の領土を侵すことは許さない。この防衛出動は侵略を目的としたものではなく、平和を守り、独裁による力の支配を拒絶するための、やむにやまぬ自衛の措置です。

国民の皆様。極めて厳しい戦いになることが予想されます。しかし、私たちは、自由と主権を守り抜くという揺るぎない覚悟の下、国際社会、とりわけ同盟国である米国と緊密に連携し、この困難を必ずや乗り越えていくことをここに誓います」


演説が終わるやいなや、記者の手が林のように上がった。高城総理は鋭い視線で最前線の記者を指名した。


「総理、台湾はわが国が正式な国交を持たない地域です。それを『他国』とみなし、存立危機事態を認定することの法的整合性をどうお考えですか?」

「政府の従前の解釈、例えば平和安全法制を審議する過程の国会答弁において、存立危機事態の対象となる『わが国と密接な関係にある他国』には、わが国が国交を有さない国も含まれ得ると明示されています。台湾は、国際法上の国家性の要件を実質的に『ほぼ』満たしており、何より自由と民主主義を共有する、わが国にとって極めて重要なパートナーです。台湾の陥落は、わが国のシーレーンを完全に封鎖し、国民の生存を物理的に不可能にするものです。これこそが法の予定する存立危機事態の典型例であると判断しました」

「日中共同声明における『一つの中国』原則との矛盾はありませんか? 中国側はこれを内政干渉と強く批判するのは必至ですが」

「わが国が一九七二年の日中共同声明において示したのは、台湾が中華人民共和国の不可分の一部であるという中国側の立場を『十分理解し、尊重する』ということであり、法的に『承認』したわけではありません。この一九七二年体制は、台湾問題が『平和的に解決される』という、法の支配に基づく大前提の上に築かれた危うい均衡でした。

しかし今回、中国側が一方的な武力行使という暴挙に出たことは、その大前提、すなわち日中関係の存立基盤そのものを中国側が自らの手で粉砕したことを意味します。平和という土台が失われた以上、わが国が当時の枠組みに縛られ続ける理由はありません。

さらに、わが国固有の領土である与那国島を侵略し、主権を侵害している者に『内政干渉』などという言葉を口にする資格はありません。これはもはや他国の問題ではなく、わが国の存立を賭けた自衛の戦いです。わが国は、国際法を無視して現状変更を試みる独裁の意志に対し、主権国家としての断固たる意志と力をもって対抗いたします」


「先ほどポーカー米大統領が軍事行動を命令しました。自衛隊は具体的にどのような役割を担うのでしょうか?」

「自衛隊は防衛出動の下、与那国島の奪還、および周辺海域の安全確保に全力を挙げます。米軍との役割分担に基づき、統合運用を極限まで高めて対処します。日米安保条約に基づく米軍の支援も受けますが、まずわが国の領土はわが国が守る。そして、地域の自由と平和を共に取り戻す。そのために、これよりすべての政治的、軍事的リソースを投入します。……時間がありません。私はこれより最高指揮官として、国民の負託に応える職務に戻ります」


高城総理は一礼して、そのまま会見場を後にした。



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