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T-DAY:台湾戦争  作者: 中央国家安全委員会主席
第2章 封鎖

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203Y年2月4日 台北


203Y年2月4日 

中華民国/台湾 台北市大安区 国立台湾大学


春節休暇の最中にある広大なキャンパスは、本来ならば帰省した学生たちの不在によって静まり返っているはずだった。 しかし、正午前の社会科学院棟のラウンジだけは、残っていた僅かな学生と教職員たちが放つ、焦燥と困惑が混じり合った異様な熱気に包まれていた。

壁面に設置された大型モニターでは、台湾の各ニュース局が蜂の巣をつついたような大騒ぎを演じている。 台湾メディアの関心は、与那国島周辺百キロの「完全閉鎖区域」設定が台湾に及ぼす致命的な影響に集中していた。


「……日本列島から台北、基隆方面へ繋がる台湾の北の玄関口が物理的に塞がれたということだ!中共軍の『聯合帰航』演習海域を合わせれば、我々のシーレーンは、今この瞬間に半分断たれたも同然だ」


画面の中で、軍事アナリストが顔面を蒼白にして叫ぶ。

「琉球共和国」を名乗る武装集団が発信したあの不気味な声明動画を除き、与那国島との通信連絡は依然として完全に遮断されたままだった。 島内の被害状況や、二千人の島民たちの安否に関する情報は一切入ってこない。 桜木祐希は、拳を握りしめたまま、その情報の空白を睨みつけていた。 隣に立つ廖雨婷が、震える手でスマートフォンの画面を指差す。


「住民が生きているのかすら分からない。あの島に何が起きているのか、日本政府すら把握できていないなんて……」


正午。

混乱が加速する中、全てのチャンネルが突如として北京からの生中継へと切り替わった。 無表情の中国外交部報道官が、重厚な紋章が掲げられた演壇に姿を現す。 報道官は視線を真っ直ぐにカメラへ据え、用意された声明文を感情の排された無機質な声で読み上げ始めた。


「中華人民共和国中央人民政府を代表し、緊急の重大発表を行う。我が国政府は先ほど、我が国の台湾省において、致死率および伝染性が極めて高い未知の悪性感染症が発生したことを確認した」


その一言で、ラウンジ内の喧騒が凍りついた。あまりにも唐突で、あまりにも露骨な「発表」だった。


「中国政府は、我が国の国内で発生したこの脅威を封じ込めるという国際的な責任を果たし、世界の人々の健康を守るため、関連する国際法規、その他の人道的慣習、並びに中華人民共和国伝染病予防医療法及び海警法その他の関係法令に基づき、必要最小限の防疫措置を講じることを決定した」

「本日より、中国国防部の許可なく、台湾省すなわち台湾島とその付属島嶼、金門島、馬祖列島及び東沙諸島、並びにこれら周囲の領海並びに領空へ船舶および航空機が進入することは、その国籍を問わず一切禁止する」

「さらに、以上の区域から出域を試みる全ての船舶および航空機は、中国人民解放軍および海警局の部隊によって、中国大陸沿岸の指定される港湾へ回航され、二週間の厳格な隔離検疫を受けるものとする」


報道官は、一言一句を噛み締めるように続けた。


「この隔離措置に違反し、世界人類の生命と健康を危機にさらす不法な動きに対しては、人民解放軍および海警局が、人類を守るという崇高な義務を果たすため、躊躇なく武器を使用する用意がある。以上である」


画面が暗転した後、ラウンジには数秒の、深淵のような沈黙が流れた。


「……感染症? ふざけるな、そんな話聞いたこともないわ!」


雨婷が、絶叫に近い声を上げた。


「防疫の名目で、私たちを島ごと檻に閉じ込めるつもりよ。与那国で日米の手足を縛っておいて、本体が直接首を絞めにきたんだ……」


マークが、ノートPCのキーを叩きながら、絞り出すように言った。


日本の主権侵害という衝撃を超え、台湾そのものが「防疫」という最悪の衣装を纏った封鎖によって世界から切り離された。 窓の外では、冬の台北の冷たい雨が、閉じ込められた二千三百万人の未来を塗り潰すように降り続いていた。


203Y年2月5日 

中華人民共和国国務院台湾事務弁公室、中央軍事委員会、外交部による共同声明


【日本語仮訳】

中華人民共和国中央人民政府は、わが国台湾省における深刻な公共衛生上の危機に対し、人民至上、生命至上という一貫した理念のもと、同胞と世界人類の生命と安全を守るため、最大限の努力を傾けてきた。軍の実力を用いて台湾省周辺の交通を制限し、わが省人民の日常生活に不便を強いる事態に至ったことは、誠に遺憾と言わざるを得ない。

しかしながら、現在台湾省等を不法に占拠・支配している「台北当局」内部の極少数の分裂勢力は、わが国の防疫関連法規および中央政府の指示に従わず、科学的な防疫措置を拒絶し続けている。こうした無責任な態度は、台湾同胞をさらなる危険に晒すのみならず、祖国全体の安全に対する重大な脅威となっている。ゆえに、中央政府は国家の主権を堅持し、人民を保護するため、やむを得ず、台湾省の全域及び福建省金門県、連江県の区域に軍事管制を敷くに至ったものである。

ここに、中央人民政府は台北当局に対し、以下の通り厳粛に通知する。


一、台北当局が、その支配する全ての地域が中華人民共和国中央人民政府の直接的な行政管理下に入ることを認め、かつ、台北当局のいわゆる「国軍」、「警察」その他現在台北当局の支配地域内に存在する全ての武装勢力が、直ちに中国人民解放軍東部戦区司令員の指揮統制下に編入されることに同意するならば、わが中央政府による当該地域での実効的な防疫措置の実施が可能となるため、中央政府は直ちに大陸経由による人道支援物資、医療設備、生活必需品、およびエネルギー資源の優先的な搬入を開始する。また、半導体、電子部品その他台湾省から世界各国に輸出されていた重要物資についても、適切な消毒ないし防疫措置の上で、輸出の再開を認める。

二、台北当局内部の分裂勢力に対し、改めて警告する。人類の安全を守るための正当かつ神聖な中国の防疫措置に対し、万一、実力をもって抵抗を試みるならば、中国人民解放軍および中国人民武装警察部隊は、国家安全のため、これを断固として破砕する。

三、国家分裂を図る頑迷な勢力が防疫措置に対してなおも有害な抵抗を試みるならば、中華人民共和国刑法、および「『台湾独立』頑迷固執分子による国家分裂・分裂扇動犯罪への法的処罰に関する指針」に基づき、時効なく徹底的に追及し、厳罰に処すものである。


祖国統一は歴史の必然であり、いかなる勢力もこれを阻むことはできない。台北当局は速やかに誤りを正し、破滅の道から引き返すべきである。

以上

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