歴史の中に、異生がいた。(ゾルサリーノ)
「今日はもういいかな…ありがとう、お疲れ様。」
先輩方の声は、体格とは裏腹に物凄く優しいものであった。防衛大(付属)と聴いていたからか、後輩イビリやパシリなどをさせられると勝手に思っていた。
だからこそ、転生したての今でも心地良ささえ感じる。
寮に戻る途中、各地から僕らのように資料を作って疲れた様子の一年が所々目に入る。
本当にここが自衛隊に準ずる軍に入る為の施設なのかと疑わざるおえない程にその顔には爽快な笑顔が浮かぶ。
どこまでいっても、子供特有の無邪気さは消えないようだ。
寮に入ると周りは突然静かになった。何処からか、くしゃみやいびきだけが寮内に響く。542号室が僕の住居だ。
中は6畳間のリビングとクローゼットなど必要最低限の設備しかなく、玄関の目の前にはベットやリビングを最大限活用したオシャンな引き出しが勉強机を囲む形で設置されの中には勉強道具、娯楽品、着替え、お菓子などなど、日用品がこれでもかと言う程出てくる。
そして机は二重底になっており、中にはノート型パソコンと<勉強用>と書かれたノートが一冊。
自衛隊では災害時に出来るだけ荷物の空間を作らないように持ち出す最低限の生活用品や服が出来るだけ小さくなる畳み方を教わるらしいが、それでも到底考えられない。
主婦顔負けの完璧な住居が、そこにはあった。
(あの古びた小屋も、この部屋みたく綺麗になれば集中力も上がるのでは??)
そんな疑問も一瞬思い浮かんだが、元がダメだから汚しても大して変わらないだろう……何だか悲しくなってきた。
この部屋に見惚れるのをやめ、勉強机に対面する形で椅子に座る。留学生がいるからか、寮の椅子もやけに座り心地が良く、調べ物も今まで以上に捗る。
《中学生でも分かる異生粒子と電子の違い》
電気の源である電子は、電磁誘導による人為的な供給ができる。導体による限られた移動しかできないが、その分扱い易く冷蔵庫やエアコンなどの生活必需品や医療関係に多く使われる。エネルギー変換の手間がかかる。β粒子とも言う。
魔力の源である魔法因子は、人為的な生産が出来ず導体や絶縁体といった概念もない。一定の異生因子が集まると魔力として視認できるのが特徴。
機械による運用は難しいが、魔法として人が扱う分にはエネルギー変換効率や人体との相性が絶大であり一部の致命的な病の治療や軍事利用が主な活用方法である。α粒子との化学反応が確認されているが、詳しい魔法の解明については、まだ至っていない。しかし…………
《魔族と異生粒子の繋がり》
中世、アルダカ大陸を中心とした天体衝突により、異生粒子が地球に上陸。異生粒子とα粒子から発生するα線が融合し、脅威的な速度で一部地域の酸素濃度が変化し、地球由来の生物が全体の4割死滅。
生態系には異生粒子に適応するか、残った大地での生活に適応するか。その二極間では、まるで別の惑星を比べているかのように決別していた。
その中で、人間のような哺乳類サル目にあたるのが魔族である。(諸説あり)それに準ずる………………………
結論、サッパリわからん。中学生じゃなくて中年の間違いだろ。
午後0時を過ぎ、二日月が細々と地球を照す。暗い空の下では、積み上げてきた何もかもが無意味に感じる程、道導を示さずただただ月に縋るのみであった。
α粒子とは
高い運動エネルギーを持つヘリウム4の原子核である。




