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鏡は人間を写し、窮地は人相を映す。(ゾルサリーノ)

「お〜〜い!誰か〜〜!聞こえてるか〜!?」

 地上から、僕らと同じく飛ばされた生徒達の声が聴こえる。恐らくは生徒の救出と今の状況を把握すべくこの山を登り、周りの情景を確認したいのであろう。


「お前らも〜!飛ばされて来たのか〜!?」


 山彦が帰って来る程の声量で発したこの声は徐々に大きくなり、生徒達もやがて、僕らの目の届く山道にまで近づいた。


「おーい!」

 

 こうしている間にも、歩き続けている。制服姿での登山がどれだけキツイかは分からないが、生徒達の表情からその過酷さはひしひしと伝わって来た。


「こっちからも声かけ方がいい?」

 僕は振り返り様にそう云った。だが返答は返ってこない。彼等はとっくに姿を消し、茂みの中に身を潜めていた。

「あなたも来てください!」

 彼は声を抑えながらも力強く、僕にそう云い手招きをした。深刻そうな顔をしているが、僕はこの状況の何処にそんな真剣になれるのか分からず、困惑しながら茂みへと向かった。


「どうしたん?そんな隠れたりして。」

 木谷も、そして彼も(やっと来たか。)とでも言い出しそうに肩の力を緩め、茂みに隠れていた地図をずらし、指を刺しながらキメ顔で云った。

「分かったんだよ、僕等をこんな所に飛ばした目的が……」

 そう木谷が云った瞬間、周りはシュンと静かになった。

「まず、今の状況を説明します。」

 彼は地図を自分が正面になる方向にずらし、空いた左側に来るよう催促した。

「僕たちがいたのは、ここの魔族領付近にある我らが母校マルチューセ。そして、ここから見た地形と飛ばされた方向から、ここは……」

 しばらく間を置き、深呼吸した後にゆっくりと口を開けた。

「魔族領の山脈だ。」

 今度は、木谷の時よりも長い沈黙が訪れる。まだ僕以外の二人も、この状況を受け入れられていないだろう。

「じゃあ、ここに救助が来る可能性はあるの?」

「それはないです。ただ助かる方法はあります!」

 彼は自身有り気に、今の地図とは別の紙を自分の手に収まるよう生成した。魔法ではこんな事も出来るのかと、心底関心する。

「成程、そういう事か。」

 木谷は紙を見ながら腕を組み、僕とは違う方向で関心している。

 その掌の中には、未だここが人間の領土だった頃、建設された地下都市の内部構造が記された紙が握られていた。


「何これ………」

 僕は、思わず声が出た。地下都市など、今まで聴いた事も見た事すらもない。二人が自慢と関心をしている中、一人唖然として突っ立っていた。


 




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