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はえ氏の結末
数日後、犬は何事もなかったかのように全快した。
今では憎たらしいほどに、怪我をする前よりも元気になっている。
これは後で知ったことだが、彼女と男の破局の元々の原因は、男の浮気だったのだそうだ。
◆
「おめえ、俺が怪我して心配したろ? ええ?
恥ずかしがらずに言えよぉう!」
肉きゅうで私の頭をばしばしばしばし叩きながら、犬が言った。
……ああ、鬱陶しい!
怒りでひくつきながら、私は低い声を出す。
「……知ってるか?
ハエは病原菌の宝庫なんだぞ」
「んで?」
「いい加減にしないと、お前の体に病原菌をばらまくぞ」
うは、怖っえー!
言いながら、尻尾を振り回す犬。
◆
「あっ」
突然、犬が何かに気付いたかのような声をあげた。
頭を叩く手が止まる。
「? どうしたんだ」
「おめえ……後ろ」
後ろ?
なんだろう……なんだか、寒気がするような。
私は振り向く。
そこには、鬼のような形相の彼女がいた。
その手にはハエ叩き。
「!! 逃げっ……」私は飛び立つ。「な、きゃ」
獲物をとらえたハエ叩きが、私めがけて振り下ろされて、