第6話 困難はみんなで乗り越え、幸せになる
公王、公妃であるお祖父様、お祖母様、伯父や叔母に挨拶して、公国を後にした。
お義父さま、お義母さまも一緒に付いてきてくれた。カイザールの両親に挨拶することと、私を1人にさせないための気遣いである。カイルと離れたくないのも事実である。本当に優しい義父母である。
「義父上、一度私の両親のところに行き、そのあと私は、船の方に行きます。その間、リリとカイルをよろしくお願いします」
「お前の義父になった覚えはまだない。私も船の方に行こう。情報が錯綜し、混乱でまとめることができない可能性がある。力になるよ」
「ありがとうございます。心強いです」
「カイ、お義父さま、私も行きます。怪我をした人がいると思うの。私のポーションを大量に持っていき、1人でも多くの人を助けてあげたいわ。カイルは、お義母様とも一緒によく寝ているので、お義母様にお願いできれば、私は船の方に行きたい。力になりたい」
「リリ、私とカイルは大丈夫よ。それにカイザール様のお母さまも一緒にカイルをみていただけるかしら」
「もちろんです。母はカイルがくることを楽しみにいましたので、一緒に面倒を見てくれるはずです」
「よかったわ、では、おばあちゃん2人で孫のカイルをみましょう。楽しみだわ」
港では、カイザールの両親が迎えにきていた。
「ようこそおいでくださりました。オーウェン卿、夫人、この度は、我が海運の船の関係で慌ただしく大変申し訳ない。まずは我が家に案内して、そのあと船の方は行こうではないか。リリアナ嬢とカイルくんだね。会えることを楽しみに待っていたよ」
「ナサエル卿、夫人お初にお目にかかる。忙しい中出迎え感謝する。このあと、私もそちらを手伝うことにする。よろしく頼む。こちらが.妻のセリーヌ、我が娘、リリアナと孫のカイルです。よろしくお願いします」
「セリーヌです。今後ともよろしくお願いいたします。これからリリも、あちらに手伝いに行くと言っているので、一緒にカイルの面倒を見ましょう」
「リリアナです。初めまして、ナサエル公爵様、公爵夫人さま」
「まぁ、堅苦しい敬称はやめて。おかあさま、と呼んでちょうだい。リリ。うふふ。孫のカイルくんね。かわいいわ」
「リリアナ嬢も手伝いに行くとは本当なのか」
「はい、私も怪我人などがいた場合、ポーションや治療ができますので、そちらをお手伝いしたいです」
「すまない。だか、カイルくんは大丈夫なのか?」
「お義母さまと、乳母がおりますので、大丈夫です」
「まぁ、私もカイルちゃんの面倒を見なくては。こうしてはいられないわ、色々な人の助けが必要かもしれないわね。ランシェ、使いを出してちょうだい。お義姉のところと叔母のところに行って、手伝えるか聞いてきてちょうだい。女性陣でカイルちゃんを守りましょう」
「母上、あまり張り切らないでください」
「だって、こんなかわいい子よ。自慢しなくちゃ」
可愛がり要因が増えてしまった。
「では、まず我が家に案内します。それから船のほうへ行きましょう」
カイルの周りには女性がいっぱいいて、面倒を見てもらってます。年齢層は高いが、ハーレムかい。一歳にして。
「お義母さま、カイルをお願いします」
「大丈夫よ。気をつけるのよ。あなたの本当の両親は誇りある医者と薬師だったのだから、リリ,頑張るのよ」
「はい、お義母さま」
ぎゅっと抱きしめられた。義父も抱きしめてきた。ふふっ、温かい。気持ちまで、温かい。
「では,行ってくるよ。セリーヌ。カイルを頼んだよ」
「任せて」
そして、私たちは港へ辿り着いた。
海に船が停泊している。
「カイ、船員の症状はどんな感じなの?」
「ことの発端は、嵐で船がだいぶ航路をはずれてしま
ったのだ。まったくわからない状態で航海し、やっと戻ってきたのだ。その間は保存食で何とか食い繋いでいたが、歯茎や皮膚から血が流れ、傷が治らず、バタバタと人が倒れていったということだ。だから、まだ、港に帰港できず、海に停泊している。物資は補充させているが、だんだん船員が倒れていくので、補充もできない状態になってきた。だから、これから私と父上が乗り込もうとしている」
これはもしかして、壊血病ではないか。非常食で食い繋いでいた、歯茎から出血、異臭、壊血病の可能性大だ。ポーションはどんなポーションだったのだろう。この世界にビタミンCなんて言わないだろうが、ビタミンCとなる、レモンなどやお酢、ザワークラウトやローズヒップのようなものがあれば、それらを使ってポーションを作れるかもしれない。
「カイ、酸っぱい果実やお酢と言われるものなどないかしら。酸っぱい紅茶など、とにかく酸っぱい食べ物や飲み物が欲しいの」
「何か心当たりがあるのか?酸っぱい果実や飲み物だな。みんな、手分けして探すのだ。至急持ってくるように」
「「「「はい」」」
「リリ、どういうことだ」
「まだ、わからないけど、たぶん酸っぱい成分(ビタミンCだけど)が足りないと、歯茎や皮膚から血が流れ、歯が抜けたり、古傷が開いたり、そういった症状が出ると言われている。保存食は特に栄養はないから、栄養不足による症状だと思うの。だから,その足りない成分を使ったポーションを作れば、回復できればと考えているの」
まだ、私のスキルなどカイにもお義父様にも教えていないのよね。聞かれなかったし。でも、もう出し惜しみしてもしょうがない。使えるものは使わないと。酸っぱいものを鑑定でビタミンCがあるものを探さないといけない。
「リリ、酸っぱいものを持ってきたが、これをどうする」
「ごめん、この部屋をカイ、お義父さま、カイのお父様だけにして欲しいの。追加で持ってきたものは、また、取りに来るので、置いてください」
「「「リリ?」」」
「さてと、やりますか。<鑑定>」
「「「は?鑑定?」」」
「これ違う。これも違う。この果物、レモンに近い果実だわ。これお酢だ。これはワインビネガーだ。これ違う」
「カイ、この果物とこの液体二つをいっぱい持ってくるように手配して欲しい。お義父さま、これからポーションを作ります。手伝ってください」
「「「わかった」」」
お義父様と2人になり
「リリ、鑑定スキルを持っていたのか」
「ええ。でも、人はみることできないわよ。物質や植物をみることができるだけだよ。他に治癒魔法も使えるから、このポーションで、回復したら、治癒魔法使おうかなぁと思っている。聞かれなかったから、言わなくてごめんね。お義父さま」
「なるほど、物質や植物などをみることができるのか。だから、いつもすごいポーションを作っているのは、成分などわかった上で作っていたのか。なるほどな」
「そうなの。植物見るとね、どんな症状のポーションができるとか、胃腸にいい、美白、美容にいいというかんじで、教えてくれる便利な鑑定なんだ」
「あははは、それは便利だな。治癒魔法か。うちの家系は治癒魔法は多いぞ。私も使えるよ。君のお母さまのキャロラインも、使えたよ。ただ、亡くなる時はもうみんなのために極限まで使っていたのだろう、もしくはすでに枯渇してしまっていたのだろう」
「えっ、お母さまも、使えたの。そうか、そうなのね」
「魔力の枯渇は気をつけるんだぞ。回復しないでそのまま続けると死に至る」
「はい」
頭を撫でられた。いつも撫でてくれるお義父さま。
「リリ、持ってきたよ」
「ありがとう、カイ。それではポーションを作ります」
レモンのポーション。酸っぱめをおさえた。鑑定するとビタミンCたっぷり。次はザワークラウト作り。キャベツを千切りにし、生活魔法の加熱を活用。そしてお酢と少し砂糖でつけ込みする。
準備万端。
「では、船に行きましょう」
「いや、リリ、君はここで待っていてくれ。ポーションを飲ませれば良いのだろう」
「私も行くわ、症状が悪い人もいるかもしれないから絶対行く」
「はぁ、わかったよ。だか、体調が悪くなったらやめてくれ」
その心配は無用よ。前世薬剤師兼看護師よ。患者は見捨てられないのよ。
船に乗船した。至る所に船員が倒れていた。
「まずポーションをはじめのに飲ませてください。起き上がれるようになり食べられるなら、ザワークラウトとこのスープを飲ませてください。それでもひどいようなら、こちらの区域に連れてきてください。お願いします」
と、私は生活魔法 収納から大きな鍋を出した。そしてお義父様と目と目があい、悪い状態の時は治癒魔法をつかうことにする。
「リリ、あとで詳しく教えて欲しいなぁ」
「お義父さんも、スープの鍋の話を聞きたいなぁ」
あれ、まずったかな。この場は、お義父さまとカイザールとカイザールのお父様しかいないから。まぁ大丈夫でしょう。たぶん。
ポーションをゆっくり飲ませ、回復の兆しが見えた。やっぱり壊血病だ。ポーションを飲ま、ひどい人には義父と一緒に治癒魔法をかけて行った。
回復した船員たちは、スープやザワークラウトを食した。
みんな回復の兆しが見え、船が港に帰港することができた。
「カイザール様、船長のルークスです。ありがとうございました。このまま、帰港もできず、死を覚悟しておりました。死者もでず、このように皆回復いたしました。ありがとうございます」
「全て、オーウェン公国、公子であるセルジュ様と、そのご令嬢で、我妻のリリアナのおかげだ。あとで紹介しよう」
「お、奥様ですか?いつ結婚されたのですか」
「まぁ、あとで紹介するよ、息子とともに」
陽気に去っていくカイデールの背をポカンとした表情で見送る船長だった。
「はぇ?む、息子ですか?しかし、カイザール様は、行方不明からお戻りになられた時から雰囲気が変わったな。ふふっ」
瞬く間に、ナサエル公爵が営む海運船の死者を出さず、回復した話と、壊血病という船舶特有の病気があること、その予防策、対応策が王宮に報告があがった。
「義父上。リリ、お2人の治癒魔法のおかげでひどい症状の者も回復に向かった。死者も出さずによかった。本当にありがとうございます」
「いやいや、我が娘のリリの的確な処置のおかげだよ。自慢の娘だよ」
「お義父さま、褒めすぎですよ、もう親バカと思われてしまいますよ」
「なに言っている、私は親バカで、ジジバカだ。あっははは」
ナサエル公爵邸に帰る馬車で、気持ちも明るく帰宅できるのはよかった。ナサエル公爵様は王宮に報告に行っている。
「やっとカイルに会える。大きくなったかな」
「カイ、数日、離れていただけですから、変わらないと思うけど」
「なに言っている、リリ。数日離れていたら、少し大きくなっているぞ」
「そうだぞ、リリ。カイルは大きくなっているだろうなぁ」
もう、2人してカイルに夢中である。
ナサエル公爵邸に到着すると、カイルを抱いたお義母さまやカイザールのお母さま、今回一緒に見てくださった女性陣が、出迎えてくれた。
「お帰りなさい。みんなの功績が新聞に讃えられていたわよ。よくがんばりました」
「母上、ただいま帰りました。カイルはいい子にしていましたか」
「もちろんよ。こんなかわいい孫に今まで会えなかったなんて、カイザール、ひどすぎるわ」
「あっ、すいません。母上」
「もう、オーウェン公爵様、リリちゃん、中に入って休みましょう。玄関先で話すことではなかったわね」
「セリーヌ、ただいま」
「お義母さま,ただいま帰りました」
「ほら、カイル、お母さまが帰ってきましたよ」
そして抱っこして、カイルはキャッキャキャッキャしていた。ご機嫌だ。少し重くなったかな。
「おお、カイル、じぃじだぞ。ただいま」
カイルをさらっていった。もう、お義父さまったら。
皆で応接室に移動した。お茶を飲んでほっとした。この茶葉は流石に公爵邸だ。美味しい。
徐に、カイザールのお母さま、まだどう呼んで良いのかわからない状態である。
「ねぇ、リリちゃん。結婚式行わないの?」
「いえ、結婚式の話はでているのですが、まだ,具体的な話はしていないです。ですが、公国の祖父母や、伯父伯母たちが結婚式を楽しみにしているので、気候がいい時にと思っています」
「まぁ、公国で、結婚式をあげるの?この国では結婚式をあげないの?私たちもカイザールとリリちゃんの結婚式楽しみなのよ」
「そうよね、私たちは公国に行くことができないから、そうだわ、両国でそれぞれ結婚式をあげればいいのではないの」
結局、両国で、それぞれ結婚式をあげることとなった。
私は結婚式に夢があった。白いウエディングドレスとロングベール。そして青い空に青い海。そこに神父様が立ち、2人が向かい合い、宣誓するという結婚式でやりたいと思っていた夢である。
それを伝えたら、どんなウエディングドレスがいいの?と,聞かれたので、数枚ウエディングドレスを描いた。ストレートビスチェとマーメードラインにロング手袋、ロングベール。オフショルダーにAラインやプリンセスドレス。オーガンジーをふんだんに使い、刺繍を施すドレス。背中を開けた妖艶タイプなど色々書いた。
カイザールが見た時には、全て却下された。肌を出し過ぎはダメだと言われた。他人に見せるものではない時頑なに反対した。
女性陣は、なに言っているの、このぐらいいいではないのと説得したが首を縦に振らない。
結局ストレートビスチェを基本として首、胸、肩周りをレースにし、裾はオーガンジーをふんだんに使ったAラインのドレスにした。
公国では、プリンセスドレスにした。
この描いたドレスのデザイン画は、カイザールのお母さまの兄嫁ラリサ様が、知り合いのデザイナーに渡した。もちろん、契約を交わしました。
そのデザイナー、ケンドールさん、通称ケンさんは周りから斬新すぎるデザインで受け入れてもらえなかった。私のドレスも斬新なアイデア(前世の知識パクリです)に大喜び。そして、私のウェディングドレスを作ってくれることになった。今後も一緒にデザインを考え作っていこうとなった。髪飾りや靴なども作っていきます。バックも作るよー。便利なものは、全てパクります。
両国それぞれで結婚式。公国では、大聖堂の結婚式となった。王族扱いなので、大聖堂で行われた。ロングベールが赤い絨毯の上を滑っていく。パイプオルガンが響き渡る。祭壇前にカイザールとカイル。私の隣にはお義父様が一緒に歩く。祭壇前でカイザールに引き渡された。そして誓いの言葉。あぁ、結婚式だ。
そしてレザール王国では、生まれ育ったキャノール辺境伯領で、結婚式をあげた。青い空,青い海そこでガーデンウエディングをあげた。小さい時からお世話になった人たち、カイザールの親戚たち、そしてルルーナ師匠。
師匠に再会した時は、めちゃくちゃ怒られた。このバカたれ弟子がー、と。その後抱きしめられた。
カイルを紹介し、孫ができたと喜んでいた。
カイルよ、どれだけ魅了しているのだ。
その後、ニ男三女、5人の子供達に恵まれた。
カイザールはいつでもリリアナに対して過保護すぎるほどの過保護であった。ちなみに親バカでもある。
娘がお嫁に行く時が大変になること、確定的だね。
これからも薬剤師兼看護師としての知識を活用し、ポーション作り、生活をより良くするために魔道具作り、学校などにも力を入れた。
カイザールと共に愛を育み、周りも一緒に幸せになる、そんな人生。楽しく生きていこう。
本編はこれで完結しましたが、今後子供たちの成長などの番外編を投稿します。カイルやほかの子供たちも登場していきます。