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第7話 簡易鑑定


再びギルドに戻ってくると、早速依頼の貼ってあるコルクボードを覗いてみることにした。


冒険者ギルドのランクはFからSまであって、僕は勿論1番下のFランクだ。Fランクの依頼が貼ってあるボードは、D、Eランクと同じらしい。そのせいかコルクボードの前はそこそこ混雑していて、入っていくのが躊躇われる。


どうしようかと留まっていると、突然何者かに首根っこを掴まれ、コルクボードのそばから引き剥がされた。


うえっ?! 何?!



急いで振り返るが、後ろには誰もいない。



えぇ、何……!? 怖いよ! 幽霊じゃないよね……!?



辺りを見渡していると、突然コルクボードの方から大声が聞こえてきた。見ると、先程はいなかった柄の悪そうな男達がコルクボードの前にいた冒険者に絡んでいるようだった。


何がきっかけかは分からないが、明らかに男達よりも気の弱そうな冒険者を狙って絡んでいる。リーダー格の力任せに怒鳴りつける様子や、取り巻きの下品で不快な笑い声が本当に恐ろしかった。



うぇ……… お気の毒に……! あそこにいたら僕が絡まれていたかも…… あれ?


……もしかして、僕が絡まれないように誰かが助けてくれた? でもなんで? そして誰?



争いを止めるギルド職員を眺めながら考えていると、同じくそれを見物しに来たらしい冒険者が話しかけてきた。


「やぁ君、さっきは危なかったね。ところで、あの人と知り合いなのかい?」


第3者の余裕を醸し出して、分厚い剣を背負った彼は珍しそうに言う。



「え、えっと……? あの人ってあの怖い人ですか? 知り合いじゃないですよ……!」


「違う違う、そっちじゃないよ。ほら、君を引っ張っていった」


「あぁ……!どんな人でした? 誰だか見てなくて……」


幽霊じゃないらしい。異世界に来て知り合いなんて殆どいないし、一体誰が助けてくれたんだろう……?


「聞いた事ないかい? ロジオン・アインツェルズィエ・ホルテンゲンガー。中々に有名な剣士だよ」


「ある意味、ね」

彼の仲間らしき小柄な女性が横から口を挟む。


「知らないです…… それに、ある意味ってどういうことですか……?」


「彼はね、"魔術師一族の異端児"って呼ばれているの。一族で唯一魔法が使えないってね。ただのDランク冒険者ではあるのだけど、天才魔術師と謳われるAランク冒険者の兄と姉がいるものだから……」


「その上本人はかなりの変わり者で、色々な噂があるんだ。だから、ある意味有名って訳」


……なるほど。この世界も中々に世知辛いみたいだ。

でも、その彼が何故僕を助けてくれたのだろう? それも姿を見せないように。


「何故僕を助けてくれたのでしょうか……?」


「さぁ…… 気まぐれじゃないか? 知り合いでもないとなると、ただの善意かもしれない」


ならば何故あの絡まれていた人達は助けなかったのだろう?


………分からないけど、確かにそうかも。助けてもらったからにはお礼くらい言っておきたい。そしてこの人達にも情報提供の感謝をしないとね。


「色々教えていただき、ありがとうございました」


「律儀だねぇ。いいんだよ、俺達が勝手に話しかけたんだし、新人冒険者には優しくするものさ」


ふざけたようにウインクして見せる彼に、「かっこつけちゃって。」と茶化す女性。ギルドの良心はここにちゃんとあるみたいだ。


名前も知らない彼らに再びお礼を言い、今日は依頼の確認を諦めて魔法の練習をしに行くことにした。



ーーーーー


もう昼を過ぎたのか、気温が少し上がって乾燥した空気のいい匂いが薄い雲のかかった青空に流れていく。

荷馬車の車輪と蹄の音、人の足音を追いかけそのまま流れて歩くと、ギルドの1番近くにある門をくぐって塀の外へ出た。いるらしい魔物に遭遇すると怖いから、なるべく門の近くで魔法を試してみることにしよう。


陽の降り注ぐ草原は夜と違って暖かい。服のせいだろうか。



ええっと…… 魔法ってどう出せばいいのかな……?



漫画では定番だけど、いざ使えるとなると実感が湧かない。本当に使えるの? 格好つけて失敗したら、しばらく思い出して悶えてしまう。とりあえず、大4属性から試してみようか…… 確か、炎と水と土と風と聞いた。



えーと…… 炎出ろ!!



両手を前に出して心の中で念じる。すると、ライターの火を少し大きくしたくらいの弱々しい炎がふわりと前方に飛んで行った。乾燥した草を燃やしてしまうと驚いたが、草に当たる前に風で吹き消された。


あぁ、良かった……って、弱過ぎる!


初の魔法、これは成功と言えるのだろうか……?


いや、炎魔法が苦手なだけかもしれない。だって魔法が出たんだ! 別の魔法も試してみよう……!



よし、水出ろ!!



今度は手のひらから水が噴水のごとく吹き上がるイメージでやってみる。すると、澄んだ水が、手のひらから静かに湧き出した。


おお、風流……って、やっぱり違う!そうじゃない!




これは…… と思った。これは、魔法まともに使えない流れなのでは?



確かに秀でているものは無いと言っていた…… でもまさか、ここまで弱いとは!



風も土も試してみたが駄目だった。秀でていないどころじゃない。これは苦手と言うべきだ……




……で、でも! 僕には固有スキルがあるらしいじゃないか! それによって何かしら出来るようになるかも!





……さて、固有スキルってどう使うのだろう?


考えても分からない。まず、どんな固有スキルがあるのか知らないし、どんな時に使えるものか分からないからだ。魔法のようにある程度想像出来れば話は別だけど……


あぁ、そうだ! 使いたいものを試してみてもいいじゃないか。



そうだ……もし、もし使えるとしたら……




この世界の知識を補う能力が欲しい。




瞬間、左腕に痛みが走る。何か鋭い物で引っ掻かれたような痛みに驚いて、腕を押えて歯を食いしばるが、ほんの数秒でおさまった。



何が起きたの……? 毒虫にでも刺されたのかな……



小さな溜息をつき、袖をまくって恐る恐る見てみる。



僕の目がおかしいのかと思った。手のひら側の左腕に、蚯蚓(ミミズ)脹れのような、傷のようなものがびっしりと、それも何かしらの意味を持って並んでいたのだ。



《 エルド・シュトゥルムフート・ガルデリーリニエ の 固有スキル ・ 簡易鑑定 》



日本語だ…… 僕の固有スキル……?



《 簡易鑑定 ー 知識 は 力 で ある 》



傷文字は僕の肌を伝って移動し、増減したり曲がったりしながら言葉を作っていく。



《 袖 は まくれ 》



……えっと、何これ。


簡易鑑定……名前からすると、色々なものを鑑定してくれるスキルだろうけど…… 今のところちゃんとした説明をされていない。



「簡易鑑定とは何か。」念じながら左腕を眺めてみる。


《 簡易鑑定 ー エルド・シュトゥルムフート・ガルデリーリニエ の 固有スキル で ある。幻 の 固有スキル "鑑定" の 劣化版。 対象 に 近づく、 触れる こと で その情報 を 表示 する。 "簡易" な ため 情報量 は ランダム で ある 》


劣化版って……


情報量がランダムだというのは、最初と今の鑑定結果のような感じらしい。ひとつのものを調べるために、何度も鑑定をしないといけないということかな。それって、結構致命的では?



《 魔力消費 は ない。 日本語 で 表示 します。 過去 簡易鑑定 を 持っていた 人 は いません 》



わあ、口調までランダムとは。それに、聞いてないことも言ってくるらしい。このスキル、大丈夫かな……


読んでいただきありがとうございます!

致命的な遅筆により、こんなに期間が開いてしまいました…… !

今後ともよろしくお願いします……!!

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