〜プロローグ〜
この物語は、小さなアパートで一人暮らしをしている男姓と隣の部屋に引っ越してきた女姓の甘×キュンな物語である。
だが、今回は、主人公である東城櫂翔と元カノである西野紗耶香にクローズアップした物語である。
(本編へとつながる話になっていればいいなと思います。)
まず、簡単に自己紹介。
男の名は、東城櫂翔。市内で働く普通の会社員。辛い料理が好み。何事にも真面目な性格で心優しい人物。
ここからは俺のファースト・ラブについて触れていきます。
2年前、7年間付き合っていた彼女とある事件をきっかけに別れを迎えた。
その子との思い出は、中学生の修学旅行に遡る。
彼女は男女問わず好かれるクラスの人気者だった。俺とは2年生の頃に同じクラスになっただけで、
たまに話をする程度の関係性だった…が、
夏休みが終わり1週間を過ぎた頃、担任から修学旅行の行先についての連絡を受けた。場所は『神戸』だ。関西方面に行ったことが無かった俺はテンションが上がり、大声でガッツポーズを決め込んだ。
クラスの皆からはドン引きをされたが、彼女だけは俺の方を向いてニコッと笑顔を向けていた。
その後班決めが行われ、俺の班は仲のいい友人二人と人気者の彼女、女1,2さんが同じ班になった。
クラスの男性陣からは、羨ましいと言われたが友人二人が“あっかんべー”と仕返したことでクラスは静寂に包まれた。
旅行は、2泊3日で二日目の夜と三日目が班による自由行動になっていた。俺たちの班は、事前に二日目の自由行動は二人ずつで回ろうということになり、くじ引きが行われようとしていた・・・が、
人気者である彼女がある提案をしたのだ。
?? 「私からそのことでお願いがあります。東城君と二人で回りたいです。」
櫂翔「えっ!俺⁉ なんでだよ、、」
?? 「何で?って言われても・・・、私が一緒に回りたいって思ったのは東城君だからっていう
理由じゃダメ?」
櫂翔 「そんな上目遣いで言われたら断れるわけないじゃん・・・。でもくじ引きするんじゃ」
女1 「まぁ、紗耶香が言うなら、紗耶香と東城君のペアは決まりでいいんじゃない。
他はあとでくじ引きでも話し合いでもするから」
友1 「櫂翔~、羨ましいぜ!紗耶香ちゃんからのご指名だぜ!楽しんで来いよ!」
櫂翔 「お、おう!大丈夫か俺、クラスの男子から刺されたりしないだろうか・・・。」
紗耶香 「大丈夫、大丈夫!みんな私の気持ち知ってるから・・(ボソッ)。」
櫂翔 「(えっ、なんて?最後何をもごもご言ってんだ)じゃあ、よろしく」
そして、迎えた修学旅行当日。
1日目は、ハーブ園に行ってロープウェイに乗ったり、シーサイドパークに行き、震災学習を行った。
初日は移動もあり、呆気なく終わりを向かえた。
2日目を迎え、前半は、クラスの皆で決めた施設に向かい観光と勉強だった。
空の色が夕日に染まるころ、自由時間がやってきた。俺と紗耶香さんは班のメンバーとは別行動になり、
神戸港近くにあるエンターテインメント施設を回ることになった。そこは、ショッピングだけではなく、
映画やホテルも併設されていて、とても数時間では全部を回り切れないほど広いところだった。
夕飯は、中学生では絶対に行かないだろうと思われるようなオシャレな施設内にあるフレンチレストランで食事をすることにした。店内にはクラシック音楽が流れており、高級料理がハーモニーを奏でている。
料理はすごくおいしくて満足したのだが、旅行に持ってきていたお金が半分以上持っていかれたのは
悲しかった・・・。
食後、夜風にあたりながら神戸港付近を散歩することに。二人きりになってから紗耶香さんとお互いのことを話し合い、時間を共有することで彼女のいろんな表情を知ることができた。
彼女が人気者の理由がよくわかる時間だった…
ライトアップされたモニュメントの近くの椅子に腰を掛けると同時に紗耶香さんが話かけてきた。
紗耶香 「東城君ってさ、何で今年に入ってから静かに座ってることが多いの?」
櫂翔 「いや、そんなつもりは全くないんだが、強いて言うなら来年から一応高校生だから真面目に勉強しようとしてるだけだよ。」
紗耶香 「へ〜、さすがに早すぎじゃない。私は将来、女優さんになってテレビで引っ張りだこな人になりたいの。だから芸能科の高校に進学するんだ」
櫂翔 「すごいね、夢があるのっていいじゃん。応援してるよ」
紗耶香 「ありがとう!でもね、もう一つ叶えたいことがあるんだ…」
櫂翔 「まだあるの?」
紗耶香 「私ね、去年からずっと、東城君のこと好きなの…。体育祭ぐらいからかな、ずっと目で追ってた。今年クラス表を見た時なんか、嬉しすぎたよ(笑)今回の班決めもクラスの大半の子は私が東城君に好意を持ってるのは知ってたから、同じ班になりやすかったんだ。今日は、私とデートしてくれてありがとね。
ますます好きになっちゃったな~。」
櫂翔 「あ、ありがとう。で、いいのかな。女の子から好きって言われたことが無いからさ、こういう時どんな反応すればいいのか、分からないや(笑)でも、ありがとうかな。今日は紗耶香さんのいろんな表情見れて楽しかったよ。それにショッピング中や食事中に見せる笑顔は別格だね!すごくいい顔だった。
惚れそうだった…」
紗耶香 「そんなに言われると照れちゃうな~。よく見てくれてるんだね私のこと。そのまま好きになってくれてもいいのに…。」
櫂翔 「アハハ!すぐには返事はできないけどさ、また二人で出かけようよ。放課後とかさ。部活もないし、今日すごく楽しかったからさ。」
紗耶香 「うん!絶対だよ!よし、明日の自由行動も二人で回るぞー!」
櫂翔 「それはさすがにどうだろう…。そろそろホテル戻らないとね。」
櫂翔と紗耶香の神戸デートは終わりを告げた。三日目に行われた自由行動は、何の力が働いたのかは分からないが、昨晩の紗耶香さんの宣言通り、二人だけの自由行動になったのだった…。
楽しい修学旅行も終わり、また学校生活に戻ったのだが、俺には新しいことが増えた。
それは…毎日、紗耶香さんと放課後にお出かけをするということだ。
月日は流れ、卒業式を迎える。俺は卒業後市内の高校に進学し、紗耶香も芸能高校への進学が決まっていた。そして、俺と紗耶香は晴れてカップルとなった。何度も放課後デートを繰り返しているうちに自然と一緒に居ることが普通になり、付き合い始めた。
私は、高校に進学し憧れの女優さんになるために日々、精進していた。高校は寮制だったので同学年の子とルームシェアをしながら生活していた。その子の名前は、『龍薙結香』。私と同じ道を志した女優志望。とても演技に前向きで、憧れの女優さんの話をしている時の表情がとても豊かな子だった。私が彼氏の話をすると興味津々に聞いてくれて、夜中まで電話をするのも許してくれる優しい子だった。
(第1話より登場)
また、櫂とは都合が合えば休みの日にはデートをしたり、夜中に電話をしたり、長期休み期間には二人で
遠出のお出かけをして楽しい時間を過ごしていた。
でも、付き合い始めて5年、次第に私たちの幸せな時間は減少していった…。
櫂翔は市内の企業で働き始めていて会う時間が減少していたが、たまに電話をする程度に、
私は演技を学べる大学に進学し、小さな劇団サークルに入ったりと夢に向かって忙しい毎日を送っていた。
そんなある日、劇団で私の指導係をしてくれていた若手俳優さんが日々の疲れを癒すためにも少人数で旅行に出かけようと誘ってくれた。その時の私は、毎日の疲労のせいか櫂から電話やメールが来ていても返信をする気力がなく未読無視状態に‥。しかし先輩俳優さんからの電話には欠かさずに出るようにしていた。
なぜなら、この関係が私の夢へ近づくために必要な道だと思い込んでいたからだ。
そう…、この考えが私の判断ミスだった。
先輩たちとの旅行の日、私は櫂との予定をキャンセルしてでもこの旅行に参加していた。旅行メンバーの中には劇団の同期や先輩だけではなく、数名若手俳優さんも参加していた。この旅のどこかで演技の練習をするためらしい。旅行といっても都内の有名観光地や実際にドラマで使われた聖地を回るという旅だった。
2日目の夜、私にとって1つ目の事件が起きた。それは、演技の練習の一環という先輩たちとの罰付きの花火だった。海辺で線香花火をして一番最初に落ちた男女が夜の海を背景に熱いキスをするという罰ゲームだ。私は、彼氏がいるのでと断ろうとしたが、みんなお酒が入っていたこともあり、私の声が届くはずもなく、花火は始まってしまった。まさか、自分の線香花火が一番に落ちるとは思ってもみなかった。男性の方もまさか、俺が最初なんてという顔をしていた…。
でも、ガヤがうるさく男性は罰ゲームだからと割り切った表情で私に歩み寄ってきた。
私はすかさず、断りを入れた。
紗耶香 「困ります。私には彼氏がいるので遊びではキスはできないです。それに・・。」
俳優 「うるさい口だな!彼氏の事なんて忘れろよ!オレがその彼氏の事なんて忘れさせてやるよ」
俳優さんは、私の腕を掴んでとても強引に唇を重ねてきた。その時間は一分ほど続いたと思う。櫂とはしたことがないようなキスで、あー、これが俳優さんたちがするキスなんだと感じた。そして、同時に一瞬、
櫂のことを忘れかけてしまいそうなほど私にとって濃い時間だった・・。
先輩 「紗耶香ちゃん演技うまくなったね。特に彼氏がいる設定なんて、キスシーンは最高だったよ。
この調子で成長していこう!」
紗耶香 「は、はい。別に設定では・・。」
すると、またしても私の発言を遮るように俳優さんがやってきた。
俳優 「紗耶香ちゃん、さっきの演技、感動したよ。いつか一緒に演技してみたいよ。それにすごく可愛かったよ。照れてるところとか。最初は嫌がられているのかなって思ったけど、だんだん許してくれてるいるように感じてやり甲斐があったよ。」
紗耶香 「褒めていただけるのはありがたいです。でも、許してはないです。私には彼氏がいるので!そこは演技ではないです!」
俳優 「知ってるよ!君が普通のサラリーマンの男の子と付き合ってるのぐらい。ずっと見てきたから、
練習が休みの日とかさ、二人で街中歩いてるの見たことあるしね。「その関係続くといいね」」
紗耶香 (最後なんか、言ったような。聞こえなかったけど)
そして、迎えた翌日。今日は自由時間にして、夜はみんなで食事にしようという話になった。
内容が高校生や中学生の修学旅行並みだなと感じた瞬間だった。
私はせっかくの自由時間だから櫂に連絡しようと思いスマホに電源をいれた。すると櫂からメッセージが届いていた。
櫂 「なぁ、紗耶香!この写真どういうことだよ!」
その一言と共に昨夜の罰ゲームの時のキス画像と動画が大量に私から送信されていた。
紗耶香 (嘘でしょ‥なんで‥こんなに写真が。私が送るわけない!それに撮ってもない!誰の仕業なの!?)
衝撃のあまりスマホを手から滑り落としそうになったとき、ある人物が背後から話をかけてきた。
?? 「もしもし~、紗耶香ちゃん!今日の自由時間暇だったら、僕とデートしない?話したいこともあるしどうかな?」
紗耶香 「雪谷さん!私今それどころじゃなくてですね!暇ではないのでお断りします。」
雪谷 「そっか、残念だな。何かあったのかい。よかったら話聞くよ。」
紗耶香 「心配していただきありがとうございます。でもこれは私が解決しないといけないことなので、
大丈夫です。」
雪谷 「もしかして彼氏と何かあった?」
紗耶香 「えっ!何もないですよ」(何も言ってないのに何で分かるの‥)
雪谷 「図星かな?っていうかもう彼女たち動いてくれてたんだ。」
紗耶香 「どういう意味ですか?」
雪谷 「今さ、彼氏とのトークに昨日の僕とのキス動画が上がってて、対応に困ってるんでしょ!
知ってるよ~、僕がお願いして送ってもらったからさ。」
紗耶香 「は?先輩の仕業!?いつこんなことを‥」
雪谷 「昨日の夜中にね、君と同じ部屋に泊まっていた女1、2さんに協力してもらってね。
画像を送ってもらったの。寝ていた君の指紋からロックは簡単に解除できたようだね。」
紗耶香 「どうして、こんなことをするんですか!あることないこと嘘話ばかり並べて櫂は本当に私が浮気してると勘違いしてるんですよ!あなたは人としてやってはダメなことの区別もつかないんですか!」
雪谷 「もしかして、僕に怒ってるの?フフフ、嘘じゃないよ、今日全てが現実になるんだよ。僕はずっと君のことだけを見てきた。演技もだけど、人柄もね。僕にぴったりの人は君しかいないと僕は思ったよ。
でも1つ欠陥があった。それが櫂君の存在だよ。君に彼はふさわしくない。何の取り柄もない、
ただの社会人。君のように可愛く将来有望な女優の横に似合うのは僕たちのような俳優さ。」
紗耶香 「あんた、頭狂ってんじゃないの!最低な人だったんですね。俳優さんとして憧れていた人でしたけど、根が腐ってます。
私の彼氏のことバカにしないでください。彼のことろくに知りもしないで悪く言わないで!」
雪谷 「お~、怖い怖い。でもね、もう時は戻らないよ。君と僕の針は動き始めるんだから。
そろそろかな、第2フェーズは‥では、また夜に」
雪谷は、最後にボソボソと呟いて俳優グループの中に消えていった。
紗耶香 「何なの、あいつ!キモすぎる。それより櫂に説明しなきゃ
(それとあいつから守ってくれないかな)」
その後、夕食までの自由時間をフルに使い、櫂に写真のことを説明し誤解を解くことに成功した。そして、雪谷という人物から狙われているから助けてほしいと相談した。櫂は、私の話を真剣に聞いて解決策を一緒に考えてくれた。夜までには、迎えに来てくれるとまで言ってくれた。最近、櫂との連絡をお座なりにしていたのに彼は何事もなかったように私の安否のことだけを考えてくれていた。彼の顔を見ながら話していると涙が溢れてきた。内心、誤解が解けないんじゃないだろうか、彼との間に亀裂が入ってしまうんじゃないだろうかと。でも、彼は私のことを最初に考えてくれる。その姿に改めてこの人が好きだと確信した。
櫂 「必ず迎えにいくから、何かされそうになったら抜け出してこい!なるべく早く会場に到着できるようにするから」
紗耶香 「ありがとう。すごく嬉しい。待ってるよ、櫂!」
そして、宴会の時間が始まった。
雪谷 「紗耶香ちゃん、こっちおいでよ。俺の横空いてるよ!」
紗耶香 「あー、結構です~。友人に誘われてるので。」
雪谷 「そっか~、参ったな!昨日のキスで意識でもしちゃったかな、アハハハハ」
先輩 「確かに昨日のはヤバかったな!あれは意識しちまうぜ!」
紗耶香 (勘違いすんなよ、あいら最低すぎる)
先輩 「えー、それでは皆さん!今回の旅はお疲れ様でした!少しでも日々の疲れがとれた時間になっていたらいいなと思います。今日は俺ら先輩方や俳優の皆さんからの奢りなので楽しんじゃってください!
グラスをお持ちになって~、かんぱーい!」
一同 (かんぱーい!)
乾杯の音頭を合図にあちらこちらでグループになって宴会が始まった。私も近くに座っていた友人たちと
晩酌を楽しんでいるとあの男が何食わぬ顔で近づいてきた。その姿を見た友人たちは逃げるように私だけを置いて他のグループに行ってしまった。
私も皆の後を追いかけようと立ち上がろうとした時、肩を掴まれてしまった。
雪谷 「しゃやかちゃ~ん、俺と飲もうぜ~!グラス空じゃん、俺が注ぐの待ってた?もう俺酔っちゃったよ~!介抱してくれ~!」
紗耶香 「セ…セクハラ!近付かないで!待ってるわけないでしょ!勝手に酔って何が介抱よ!あんたのことなんか好きじゃない!近付くな!」
雪谷 「おいおい、本気で怒るなよ。皆が心配そうにこっちを見てるぞ!それとも俺達の仲が噂されてんのかな!アハハ」
先輩 「また、雪谷のやつ紗耶香ちゃんのところに行ってるぞ、ほんと好きだなー」
先輩2 「でも、彼氏がいたでしょ、脈なしですよ。あそこまで行ける神経を僕は見習いたいって前は思ったんですが、やりすぎじゃない?」
先輩 「まぁ、なぁ…。あまり大事にならなきゃいいんじゃないか!?俺らは男だけで盛り上がりましょうや!」
雪谷と紗耶香のことを見ていた人達は、またいつもの絡みだと思う人も居れば、絡み方が異常だと捉える人とで分かれているようだった。しかし、助けるものはいなかった。
宴会が始まって2時間ほどたったころ、、
雪谷 「みんな見て見ぬふりかな!?助けなんか来ないよ。」
紗耶香 「あんたが仕向けたんでしょ。あんたが近付く前は彼女たちも普通だったのに。先輩たちだって…。何度言えば、理解できるの!私はあんたに興味がない!この会だってもう居られない!」
紗耶香 (ごめん、櫂、来てくれるって行ってたけど、私はこれ以上ここにいるのは耐えられない。
早くこの人から離れないと)
紗耶香 「皆様!私、彼氏との約束がありますので、そろそろ帰らせていただきます。
先輩方、今回はありがとうございました。とてもゆっくりした旅でした。それでは、さよなら!」
雪谷 「逃げられると思うなよ!彼氏との仲、最悪だって言ってたじゃねぇーかよ!嘘はダメだなー!」
雪谷は紗耶香が出ていこうとするのを前に立ちはだかって止めようとすると宴会場の扉が外から何者かによって開かれた。
(ガラッ)
櫂 「俺の彼女に手出してんじゃねぇーよ!」
紗耶香「櫂!!」
雪谷 「なんでてめぇが居んだよ!東城櫂翔!!」
櫂 「彼女が辛い思いしてるのに助けに来ないやつなんていねぇよ!お前の裏の本性を知っても、
みんながお前についてくると思うなよ!」
雪谷 「今頃来ても、遅いんだよ!紗耶香はおめぇには釣合わねぇーんだよ!」
櫂 「クズが、今の自分の顔、鏡でよく見てみろ!周りもドン引きしてますよ」
雪谷 「ここにいるやつはな、俺の言うこと聞くやつばっかなんだよ!」
櫂 「紗耶香!こいつとの今までの会話、録音してるよな?」
紗耶香 「うん!櫂に言われた通りしてる!」
雪谷 「流させねぇ、おい!お前ら紗耶香抑えてろ!」
女1•2 「いや…嫌です!もう友達に嫌な思いなんてさせたくない!」
雪谷 「うるせぇ!女優として成長してーんだろが!俺に従ってれば安泰なんだよ!」
紗耶香 「あんた本当に最低ですね。」
雪谷 「元はと言えば、お前が悪いんだよ。俺の好意を無下にしてこんな男を選んだんだからな!」
紗耶香 「選ぶ?私と櫂はあんたと会う前から付き合ってんのよ!被害妄想すんな」
雪谷 「黙れ!(紗耶香の髪をつかみ、机に置かれていたワイングラスを砕き、尖った先を紗耶香の首元に突き付けた)俺のものにならないなら、お前の女優人生終わりにしてやる!」
先輩1 「雪谷!やりすぎだ!それを床に置け!」
先輩2 「雪谷さん、危険です!それ以上すると犯罪です!落ち着きましょうよ」
雪谷 「俺は今まで欲しいものは手にしてきた、今の地位だってそうさ、でもこの女は俺ではなく、
何の取り柄もない東城櫂翔を選んだ!俺はそれが一番許せねぇ!」
櫂 「嫉妬に狂ってそこまでやるとはな、その手を離せぇ!」
櫂翔はすかさず、紗耶香の元に走り雪谷が、ワイングラスを振り下ろす寸前に止めた。自分の体を犠牲にして…
櫂 「紗耶香無事か?」
紗耶香 「櫂…、血が…」
櫂 「気にすんな、かすり傷だよ。それにこいつを捕まえないとだからさ。紗耶香はここで休んでな、後、警察呼んどいて」
櫂は肩から血を流しながら、自分の行動に手が震えている雪谷のもとに行き、2発両頬を殴った。
櫂 「これは、俺の肩の分だ。もう一つは紗耶香の分だ!留置所にでも入ってろ、お前は」
雪谷 「なんで…おかしいだろ…。俺のものにならないなんて…」
数十分後、警察が到着し、事情聴取を経て、雪谷は連行されて行った。
櫂は念の為にと病院へ送ってもらうことになった…
先輩 「ごめんな、紗耶香ちゃん。あいつの行動を止められなかった。」
女1•2 「夜中に紗耶香の携帯を使って櫂さんに余計なことをしてしまいごめんなさい」
紗耶香 「みなさんは雪谷に使われていたり、俳優さんだからヨイショしなきゃダメだったんですよね、でも許せません。あなたたちは人としてしてはダメなことをした。それに助けることもせず、傍観し続けた。申し訳ありませんがそんな人たちとは一緒に居れません。私は劇団を脱退します。そして、そのうち立派な女優になってあなたたちの前に現れてやりますよ。その時までには人に流されない、自分の芯を持った人間になっててくださいねみなさん!」
病院に到着した櫂は、診察をしてもらい数針縫って病院を後にした。病院を出たところで…
紗耶香 「かい!!」
櫂 「おー。紗耶香!!」
紗耶香 「無事なの?肩、今回はごめんなさい。私のせいで危険に巻き込んでしまった」
櫂 「確かにまさか怪我までするとはなぁ〜、でも紗耶香が無事でよかったよ。あいつも捕まってよかったな」
紗耶香 「櫂が来てくれなかったら、わたし…。それで分かったの、私、正直こんなことがあった日に言うことではないかもしれない。怪我までさせといて何言ってんだって思うかもしれない。けど、二度と危険な目に巻き込みたくないし、私も強くなりたいって思ったから、私が考えたことを伝えさせてください。」
櫂 「何!?改まってさ」
紗耶香 「まずは、本当に今日は助けてくれてありがとう。私が女優を目指してるって櫂に伝えてから
7年ぐらい経ったよね。今までずっと支えてもらってきたし、いつも助けてもらってた。櫂はいつも私のことを最初に考えてくれてた。そんな櫂に甘えてたんだと思う。これからは櫂なしでもやっていかなきゃ。
本当にテレビに出るような女優になったらファンができて、櫂をまた危険に巻き込んじゃうかもしれない。私は周りの人が危険に巻き込まれてほしくないし。大切にしたい。変な槍玉が櫂に当たってほしくもない。櫂のことを言い訳に使っているように聞こえるかもしれないけど、私たちの物語はここで終わりにしよう、櫂翔。別れよう(涙)」
櫂 「紗耶香っ…、お前の気持ちは伝わったよ。少し考えさせてほしいかな…」
数日後、俺は紗耶香を最初にデートをした喫茶店に呼び出し。最後のデートをした。お互いに笑い合って、納得した上で別れを決めた。
紗耶香 「私、最高の女優になるから、ファンになってね。それに私にとって櫂は本当に最高なファーストラブだった。いつまでも忘れないし、私が成長できたら、必ずまた会いに来るから。その時は新しい彼女がいるかもだけど、アタックさせてもらうかもね。ずっと大好きだよ、ありがとう。櫂!」
櫂 「俺だって、紗耶香との思い出は忘れないさ。俺の初めての彼女になってくれてありがとう。
ファン1号として応援し続けるから、頑張れよ。悩んだりしたら相談とかなら乗ってやるからさ!」
紗耶香 「それは、ダメだよ。また甘えちゃうじゃん。じゃぁ、行くね。また会う日まで。バイバイ櫂」
櫂 「あー、ありがとう。紗耶香。夢、叶えろよ! 最高な彼女だったよ。ほんとにありがと(小声)」
その日、俺と紗耶香の初恋の終止符が打たれた。