表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
82/119

77_運命は予定通り近づいてくるけれど……

 



 魔物発生がどんどん増え、止まらないらしい。

 あまりにもフェリクス様と顔を合わせていないわねと思い聞いてみたところ、サラがそう教えてくれた。


「フェリクスもカインも討伐で全然屋敷にいないし、エリオス様はずっと寝込んでいるし、心配なことばかりね、ルシルお姉様」


 離れに訪ねてきたアリーチェ様はそう言って表情を曇らせた。エリオスの体調不良が、ひょっとして普通の病のように他者にも影響を与えるものであるといけないので、今は別室にいる。私はクラリッサ様の魔法に守られていて大丈夫だけれど、アリーチェ様はそうではないものね。状態異常に耐性があると言っても、これが病ならば関係ないわけだし。

 かくいうアリーチェ様も、心配のせいかどこか元気がなく、ソファで私の隣に座るとキュッと抱き着いてきた。その背中を撫でてやりながら、私は考える。


 確かに、なんだか色々と不穏な空気が流れている気がするわよね。私の周りで完全にいつも通りなのは、マオウルドットくらいだわ?


 そのマオウルドットは相変わらず子猫軍団になぜか絶大な人気を誇っており、今もこの部屋の隅で子猫に埋もれて昼寝している。最初は『くっつくな!』『オレは友達じゃない!』と怒っていたものの、全く意に介していない子猫ちゃんたちに慣れたのか諦めたのか、最近ではくっつかれるままにそれを許していて大変微笑ましいのだけど。


 すると、子猫軍団の中からミシェルがひょっこりと顔を出し、こっちにちょこちょこと歩いてきたかと思うと、ぴょんっとジャンプしてアリーチェ様のお膝の上に収まった。アリーチェ様はそれに少し目を丸くして驚くと、嬉しそうに顔を綻ばせる。


「まあ!ミシェルちゃま、私のお膝に来てくれるなんて珍しいわね!いつもはルシルお姉様が隣にいると、『私のものよ!』なんて声が聞こえてきそうなほど、お姉様にベッタリで独占したがるくせに」


 ツンっとした言い方で、だけれど嬉しさを隠しきれないアリーチェ様、いとかわゆし!

 ひょっとするとミシェルは、アリーチェ様の元気がないことに気がついて、慰めようとしてくれているのかもしれないわね。うふふ!なんだかんだ皆仲が良くて何よりだわ!


 けれど、ふと思い出す。そういえば猫ちゃんたち、こんなに離れの中を自由に出入りしては歩き回って、好きな場所で好きなように過ごしているのに、エリオスの部屋ではどの子も見たことがないわね??

 猫たちは感覚が人間よりも鋭いから、エリオスの体調不良について何かを感じているのかしら?……いいえ、よく考えると、体調が悪くなる前からそうだったような気がするわ。マオウルドットはここに来てすぐに子猫軍団に囲まれて離してもらえなかったけれど、エリオスには誰も近寄らなかったような??


 気になると、どんどん気になってしまう。私はちょうど部屋に入って私の足元でスリスリと体を擦りつけ始めたマーズに聞いてみることにした。


「にゃおん?ねえマーズ、あなたたちって、ひょっとしてエリオスのことがあまり好きじゃあないのかしら?」

「にゃ~ん」


(あらっ)


 マーズの返事は少し意外なものだった。好きじゃないどころか、本当は大好きでくっつきたいのに、そうできないのよ!と不満を零されてしまったのだ。


「みゃーお、くっつきたいのにそうできないって、どうして?」

「うにゃっ」


 ふむふむ、『力が足りないからなのよ!』ですって。ますますよく分からないわね!!

 どうも、エリオスに近寄れないことに関しては少し不貞腐れているらしく、マーズはすぐに私の足元で丸くなると、もう話は終わり!とばかりに寄りかかって眠り始めてしまった。


「ルシルお姉様が猫ちゃんとお話しする姿、何度見ても不思議だわ……」


 アリーチェ様はそうぼやくと、膝の上のミシェルに向かって「にゃーん?」「みゃーん?」と何度か話しかけてみては無視されて唇を尖らせていた。はああ、私のお友達はなんて可愛いのかしら!

 だけどアリーチェ様、さっき口にしていた感じを猫語に訳すとちょっととんでもなく恥ずかしい意味になってしまうから、無視されてしまって正解だったかもしれないわよ!!


 そんな風に穏やかに過ごしていたのだけれど──。



 ふと、部屋の隅で寝ていたマオウルドットが目を覚まし、何かを窺うようにぐっと首を呼ばして外の方に意識を向けたかと思うと、突然どこからかドーン!と大きな音が響いた。


(これは……!)


 猫ちゃんたちも次々と私の側に集まり、怯えて震えてくっついてきたり、興奮していたり、皆尻尾を膨らませて反応している。


「きゃあ!一体何なのっ!?」


 アリーチェ様も私に抱き着き、声を上げた。

 しばらくはピリピリとものすごいエネルギーを肌に感じていたけれど、やがてそれもおさまり、元の穏やかな空気に戻っていく。


 様子を窺っていたマオウルドットも元の昼寝の体勢に戻ると、私が思っていたことと同じことをぽつりと零した。


「ハア。なーんだ。光魔法の覚醒か…………」


 ──そう、ついにエルヴィラが、どこかで覚醒したんだわ!!


 やっぱり、予知夢の通りに運命は進むんだわ。エリオスが不安に思っていたようだったから、私も少し気になっていたのだけれど、心配なかったわね!

 そう思い、これからどんな風にフェリクス様の呪いが解かれるのかしら?とワクワクしていたのだけれど、マオウルドットが続いて零した独り言は、なんだか気になるものだった。


「あーあ。あの光魔法の女がいなくなったから、聞いてたのと話が変わったかと思ってたのに。やっぱりエリオス、いなくなっちゃうんだな~」



 ………エリオスがいなくなるって、どういうこと?



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

パワー型つよつよ聖女の新連載もよろしくお願いします(*^▽^*)!

【異世界から勇者召喚するくらいなら、私(ダメ聖女)が世界を救います!】
― 新着の感想 ―
[一言] なんだろう? エリオスはルシルと再会するずっと前に、フェリクスとリリーベルが結ばれる予知夢を見ていて、それを阻止する為にフェリクス・領地に呪いを掛けたとか? それが原因で運命が変更されて、…
[気になる点] リリーベルの死後エリオスに何が起きたのか
2022/12/09 10:59 退会済み
管理
[一言] もしかして……呪いの核はエリオス?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ