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16_マオウルドットの独り言

マオウルドット視点

 


 森を去っていく人間たちを見送りながら、オレはその場に寝転がりくるんと丸くなる。

 あいつめ、久しぶりに会って早々本気でオレのことをガチガチに封印し直しやがって。どうせ知らないんだろ、ドラゴンであるオレが自由に空を飛べないことがどれほどストレスかってことをさ。


 そのストレス解消のために、いつだってリリーベルを呼びつけて話し相手にさせていた。だって、お前がオレを封印したんだろ。そう言えば、リリーベルはいつだって『私じゃなくて、封印したのはエフレンでしょ』と呆れたようにうにゃうにゃため息をついていた。いいや、お前は何も分かっていないよ、リリーベル。


(リリーベル……今は、ルシルか)


 懐かしい元白猫、現人間のことを思い浮かべて思わず顔を綻ばせる。

 オレは、ドラゴンだ。誇り高きドラゴン。今はちょっと封印とかされちゃって体も小さくなっているし、森に縛り付けられてこの場所から動くこともできないけど……。


 それにしても、ルシルは勘違いしている。久しぶりにルシルに怒鳴りつけられたあの瞬間、オレは本当に、あの人間を攻撃して傷つけてやろうとしていたんじゃないんだよ。

 そうじゃなくて、本当はあの時、俺はあの人間を──殺そうとしていたんだ。




 ……だって、あの人間からリリーベルの魔力を少しだけ感じたから。だから、オレは勘違いしたんだ。

(オレからリリーベルを取り上げたのは、こいつか!!!)

 ってさ。


 頭に血が上ってしまったことは認める。でも仕方ないだろ?オレはほとんど永遠と言ってもいいほど長い時間を生きるドラゴンで。うっかり封印とかされちゃってて。どこにもいけなくて。……リリーベルがいなくなってからは死んだように生きていたんだから。だから、リリーベルと会えなくなってどれくらい時間が経ってたのかとか、そういうの本当にわからなくなってたんだよ。

 冷静になってみれば、リリーベルと最後に会ったのはもうずっと昔のことで、どう考えたってあの人間が生まれるよりずっと前、少なくともあの魂の前々世以上は前だって分かるのにな。


「よく考えたら殺しちゃう前にルシルが来てよかったよな……殺しちゃった後だったら、きっとルシルは一生許してくれなかった」


 口に出して、間一髪危なかったことを実感し、思わず背筋が寒くなった。

 今さら、今さらルシルに嫌われるなんて絶対に嫌だ。


 ……まあそれだけリリーベルが大事で、そんなあいつの魔力を久しぶりに、それも別人から感じたから、オレとしたことが冷静さを欠いたってわけ。


「それにしてもリリーベル、やっぱり死んでたんだな。でも、よかった、また会えて……」


 そういえば、リリーベルがいなくなってからこの土地はじわじわと呪いに満ちていっている。今までは喪失感でいっぱいでそれどころじゃなかったから気にもしたことなかったけど、どう考えてもオレの封印が緩んだのも呪いが強くなってきている影響だよな?


 そんで、オレを封印しなおしたあの男。ルシルはフェリクスって呼んでたっけ?あいつが特に呪われていた。

 オレの封印より先にあいつの方をどうにかした方がいいんじゃないのかって思うレベルだよ。ルシルに意地悪言うなって怒られそうだから言わないけどさ。


 そういえばフェリクスってやつ、『アイツ』にどこか似ていた気がするような。あの、リリーベルが最後にオレに会わせてくれた飼い主。名前はなんて言ってたっけな?リリーベルは『この子には名前がないのよ。今ね、私が付けてあげようと思って、考えているところなの』って言ってたけど、リリーベルがいなくなった後に一度だけ一人でオレに会いにきて、名乗るだけ名乗っていなくなったんだよな。どこかで聞いたことあるような名前だったから、ちゃんとリリーベルがいなくなる前に付けてもらえてたのかもなって思ってたんだけど、今となってはよくわからない。だって興味なかったし。だから名前も忘れた。

 アイツ、元気にしてるかな?今どこにいるんだろう。


 今まで長い間思い出すこともなかったのに、ルシルに会って安心したら、なんだか急にいろんなことを思い出してきたじゃないか。まるで、ルシルに会ってオレの死んでた時間がまた動き出したみたいだ。


 それにしても全く、リリーベルはオレの気も知らずにいつだって誰かとべったりしていた。昔からずっと、それがどれほど面白くなかったことか。お前、猫だろ。なんで人間といるんだよ、オレといればいいじゃん。オレも猫じゃなくてドラゴンだけどさ。そう思って…………。

 ん……?


「──ちょっと待て。フェリクスっていったっけ。まさか、次はあいつなのか……!?」


 今までリリーベルは白猫だった。だからまあ、人間のそばにいるのも仕方ないかと思っていたけど……。


「オイ、嘘だよな?だって、もう猫じゃないんだから、飼い主なんかいらないだろ?オレの考えすぎだって言ってくれ。リリーベル……いや、ルシル……」


 オレは到底横になったままでなんていられずに、ガバリと勢いよく起き上がって、封印のせいできっと聞こえもしないのに、空に向かって咆哮した。


「フェリクスってお前のなんなんだよルシルーーーッ!?」




ドラゴンなので、物事の良し悪しの感覚にちょっと疎いです。

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パワー型つよつよ聖女の新連載もよろしくお願いします(*^▽^*)!

【異世界から勇者召喚するくらいなら、私(ダメ聖女)が世界を救います!】
― 新着の感想 ―
[一言] 誰に言いたいわけでもないけど、この猫は言いくるめ技能が99でintが5くらいのキャラクターなんだから、理屈でドラゴン殺せなんて無理だろ(笑)
[一言] ドラゴンならしょうがない、うん。
[一言] そっか……フェリクス、最後の飼い主の子孫か……
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