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美形のキスシーンはご褒美です

Act.2


私の過去の名前はデスデモーナ・キプロス。キプロス侯爵令嬢で、生まれつき病弱であった。


私の趣味といえばもう、読書しかなかった。特に恋愛小説は好きで、ある程度の歳になってからはちょっと大人な恋愛小説が好きであった。つまり、本の中の世界しか知らなかったのだ。


そんな私は両親と兄に愛されたが、私を哀れに思いすぎた両親は無謀な旅に出て、そして行方不明になった。


兄や周りの人は『デスデモーナの所為ではない、無謀な旅に出た両親の所為だ。』と必死で慰めてくれた。


でも、その慰めは私にとっては大きな『毒』となり、そして気付いたときには身体も、心も蝕んで、『死』を覚悟した。


その瞬間に思ったのだ。


『お兄様の結婚式を見てない!!』


そして、気付いたときには宙に浮いていた。不思議なことに私の身体にしがみついて泣く兄。その兄の隣で私の手を握って泣く兄の婚約者。


あ、死んだんだ。


そこですぐにふわふわと浮きながら兄、キャシオーの顔を見る。号泣である。あー、せっかくの美形が顔をぐちゃぐちゃにして泣いているわー。と他人事のように思った。


『キャシオー……お願い、泣かないで…』


兄に負けないぐらい大号泣しているのは兄の婚約者のビアンカ。こちらは赤毛の美女である。だが、兄は何も答えられないほどの大号泣である。鼻水垂らさなかったのは偉い。美形台無しにはなっていない。


『デスデモーナの代わりに私が居るわ、私がっ、家族になるわ……』


泣きながらビアンカは兄の手を握った。


『ビアンカ……』


あわわわ!

私の死体の上でキスした!

いや、物語的にはいいかもしれないけどちょっと、流石に、兄のそう言ったのは見たくな……いや、ありだ。

だって美形✕美形=ただのご褒美!!


そんなこと思いながら透けた手で一応目を塞いたけど残念ながら透けているからバッチリ見えちゃった!


このあと、私はもう何もかも吹っ切れたので、二人が仲睦まじくて、婚前にほにゃららしているのも見ちゃったけど楽しませていただきました!ごちそうさまです!


まぁ、二人は両親が居ればもう結婚式を挙げていたし、私が死ななかったら二か月後には挙げられたのに、私と両親のせいで二人が喪服を纏うことになっちゃったからその辺は許してやってほしい。


そんなこんなで、私は決めたのだ!

お兄様の結婚式まではここにいよう!

で、お兄様とお義姉様の婚礼衣装を目に焼き付けてから旅立とうと決めたのだ!


その日から私は楽しくて、楽しくて仕方がなかった。だって、幽霊だから身体も疲れないし、眠る必要もない。今まで出ることが出来なかった外だって、庭ぐらいまでなら出られる。


そして気付いた、地縛霊になったらしい、と。


まあ、私の『心残り』は『兄の結婚式を見る』ということだろうから、二人の結婚式が待ち遠しかった。


お義姉様の婚礼衣装は我が家の所領で作られたレースで、それに小さなダイアモンドが刺繍されている。ちなみに母が結婚式を挙げた時のものをリメイクした婚礼衣装だ。ヴェールはお義姉様のお母様が用意したもので、これを早く着て欲しいと、何度も伝えたな、と思ってしまった。まあ、両親が行方不明にならなかったら、私は死ぬ前に二人の結婚式を見られたと思うと、なんとも言えない。


そんなドレスを眺めながら、私は夜が明けるのを待った。


あと一年、それがその時の私、『デスデモーナ』に残された時間だった。


お兄様の結婚式まで、あと一年。



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