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第肆話『衰弱』

 ストーブの前にぐったりと横になった幼馴染の体に、まさか興奮しないことがあるとは。

 足はもう色が変わって、肌の赤っぽさは失われつつあった。足を触ってみると、死人のような冷たさであった。

 だが胸の上下は、不安定ながらある。

 このまま温めれば助かるだろうか。いや、絶対に助かってもらわないと困る。

「何だ…これ」

 結実の様子を診ていた葛真は、結実の体の何かを目にして驚いた。

「入れ墨だ…」

 胸元から腹部にかけて、赤い入れ墨が繋がっている。

 だがどう考えてもおかしい…こんなのを入れていたなんて知りもしなかった。


 ──そして夜が明け、ヒロトが結実の家を訪れると…

 やけに静まった居間から、真っ黒に変色した両親が見つかった…。



 こんなこともあってしまうのか、葛真は自分でさえ納得が行かなかった。

 それは今でもそうだ。

 彼女はそれが原因で下半身不随に陥り、オマケ付きには多臓器不全だ。

 この事件によって、彼女は足が不自由になり、車椅子を使わざるを得なくなった。

 今や医学も進歩して、結実の臓器は動いてはいるが、それは長くは続かない。

「どうしました?」

「…え?あっ」

 箸を止める葛真を心配して、結実が声をかけてくれる。

「いや、何でもねぇ…」

 再び手をつけた味噌汁は、どこか冷めてしまっていた。


 ──結実はなんと不幸な女だ。

 あの夜のことさえなければ、今頃こんな生活ではなく、自分の足で地を踏んで歩いていたのに。

 そして10年後も、生きていられたというのに。

 …今や医学も進歩して、結実の臓器は動いてはいるが、それは長くは続かない。

 医者に宣告された彼女の寿命は、残り4年僅か。

 それを彼女は知らない…。


「──あっ、葛真さん」

「…ん?」

 結実は葛真に話しかけた。

「今日は駅から東京に行くんでしたよね…」

「…あ…ああ」

 葛真はそこで、声の活力を失ったように感じた。

「…?どうしました?」

「何でもねぇ…」

「はあ…」

 葛真は事情があって、本来仕事にありつける立場にはなかった…。

 そんな彼の仕事とは、一体何なのか。

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