第肆話『衰弱』
ストーブの前にぐったりと横になった幼馴染の体に、まさか興奮しないことがあるとは。
足はもう色が変わって、肌の赤っぽさは失われつつあった。足を触ってみると、死人のような冷たさであった。
だが胸の上下は、不安定ながらある。
このまま温めれば助かるだろうか。いや、絶対に助かってもらわないと困る。
「何だ…これ」
結実の様子を診ていた葛真は、結実の体の何かを目にして驚いた。
「入れ墨だ…」
胸元から腹部にかけて、赤い入れ墨が繋がっている。
だがどう考えてもおかしい…こんなのを入れていたなんて知りもしなかった。
──そして夜が明け、ヒロトが結実の家を訪れると…
やけに静まった居間から、真っ黒に変色した両親が見つかった…。
※
こんなこともあってしまうのか、葛真は自分でさえ納得が行かなかった。
それは今でもそうだ。
彼女はそれが原因で下半身不随に陥り、オマケ付きには多臓器不全だ。
この事件によって、彼女は足が不自由になり、車椅子を使わざるを得なくなった。
今や医学も進歩して、結実の臓器は動いてはいるが、それは長くは続かない。
「どうしました?」
「…え?あっ」
箸を止める葛真を心配して、結実が声をかけてくれる。
「いや、何でもねぇ…」
再び手をつけた味噌汁は、どこか冷めてしまっていた。
──結実はなんと不幸な女だ。
あの夜のことさえなければ、今頃こんな生活ではなく、自分の足で地を踏んで歩いていたのに。
そして10年後も、生きていられたというのに。
…今や医学も進歩して、結実の臓器は動いてはいるが、それは長くは続かない。
医者に宣告された彼女の寿命は、残り4年僅か。
それを彼女は知らない…。
「──あっ、葛真さん」
「…ん?」
結実は葛真に話しかけた。
「今日は駅から東京に行くんでしたよね…」
「…あ…ああ」
葛真はそこで、声の活力を失ったように感じた。
「…?どうしました?」
「何でもねぇ…」
「はあ…」
葛真は事情があって、本来仕事にありつける立場にはなかった…。
そんな彼の仕事とは、一体何なのか。