第参話『吹雪』
「開けてくれ!大変だー!」
家のドアを慌てて開けようとするが、両手が塞がって開けられない。
「どうしたの葛真!──あっ!?」
ドアを開けた母の前には、全裸の結実を抱き抱える葛真の姿。
葛真の鬼気迫る目と、白く冷え切って弱った結実を見て、母は驚愕していた。
「何があったの!?」
「詳しくはわかんねぇけど、泣き声の方に行くと、冷たい池に素っ裸で下半身を突っ込んでたんだ!」
「どうしてそんな…──中に入りなさい!」
葛真が玄関に入ると、温暖な場所でほっと息をつくのだった。
「ァ…あア…」
葛真が入ると、そこで母は…──
「…?どうしたんだよ」
「…」
そこに立ち尽くして、言葉一つさえ発さずにいたが…──
「アアアッ!!」
──ビシィイッ!!
葛真の言葉が皮切りになったように、母はドアを物凄い勢いで閉め、壊れるかもしれない勢いで鍵を締めたのだった。
「母さん!?何をし…」
そう聞くまでもなく、次の変化がやって来る。
──ドバァン!バッ!!
『ウオオオオオオッッ!!?』
「ッ!?」
気付けばドアの前に居たのは、野太い叫び声とともに叫び声をあげる人間だった。
ヤツは半透明なドアから見えるほどに狂気的に暴れ、ドアを何度も叩きつける。
「誰!?」
『ゴァアアッ!!』
──バガァッ!!ドガスッ!!
『アケロァアアアッッ!!』
声は次第に、高いものにも変わっていた。
「奥には何がいるの!?」
「くっ!」
母は玄関のすぐ近くにある、謎の赤い字の御札をドアに貼り付ける。
すると…──
『オオゥアアアアアッッ!!』
ドアの向こうから聞こえた、悲鳴を上げるような叫びきり、その札は焦げ付くように赤く変色した。
そして音は消えた。
──目の前で起きた奇想天外の出来事を受け止めずとも、今葛真がやることは決まっていた。
「っ!そうだ!」
母も先程受けた恐怖を押し潰して、今葛真が抱える結実を救わねばと、奮闘してくれた。
ストーブの前にぐったりと横になった幼馴染の体に、まさか興奮しないことがあるとは。
足はもう色が変わって、肌の赤っぽさは失われつつあった。足を触ってみると、死人のような冷たさであった。
だが胸の上下は、不安定ながらある。
このまま温めれば助かるだろうか。いや、絶対に助かってもらわないと困る。
「何だ…これ」
結実の様子を診ていた葛真は、結実の体の何かを目にして驚いた。
「入れ墨だ…」
胸元から腹部にかけて、赤い入れ墨が繋がっている。
だがどう考えてもおかしい…こんなのを入れていたなんて知りもしなかった。
──そして夜が明け、ヒロトが結実の家を訪れると…
やけに静まった居間から、真っ黒に変色した両親が見つかった…。
※
こんなこともあってしまうのか、葛真は自分でさえ納得が行かなかった。
それは今でもそうだ。
彼女はそれが原因で下半身不随に陥り、オマケ付きには多臓器不全だ。
この事件によって、彼女は足が不自由になり、車椅子を使わざるを得なくなった。
今や医学も進歩して、結実の臓器は動いてはいるが、それは長くは続かない。
「どうしました?」
「…え?あっ」
箸を止める葛真を心配して、結実が声をかけてくれる。
「いや、何でもねぇ…」
「開けてくれ!大変だー!」
家のドアを慌てて開けようとするが、両手が塞がって開けられない。
「どうしたの葛真!──あっ!?」
ドアを開けた母の前には、半裸の結実を抱き抱える葛真の姿。
葛真の鬼気迫る目と、白く冷え切って弱った結実を見て、母は驚愕していた。
「何があったの!?」
「詳しくはわかんねぇけど、泣き声の方に行くと、冷たい池に素っ裸で下半身を突っ込んでたんだ!」
「どうしてそんな…──中に入りなさい!」
葛真が玄関に入ると、温暖な場所でほっと息をつくのだった。
「ァ…あア…」
葛真が入ると、そこで母は…──
「…?どうしたんだよ」
「…」
そこに立ち尽くして、言葉一つさえ発さずにいたが…──
「アアアッ!!」
──ビシィイッ!!
葛真の言葉が皮切りになったように、母はドアを物凄い勢いで閉め、壊れるかもしれない勢いで鍵を締めたのだった。
「母さん!?何をし…」
そう聞くまでもなく、次の変化がやって来る。
──ドバァン!バッ!!
『ウオオオオオオッッ!!?』
「ッ!?」
気付けばドアの前に居たのは、野太い叫び声とともに叫び声をあげる人間だった。
ヤツは半透明なドアから見えるほどに狂気的に暴れ、ドアを何度も叩きつける。
「誰!?」
『ゴァアアッ!!』
──バガァッ!!ドガスッ!!
『アケロァアアアッッ!!』
声は次第に、高いものにも変わっていた。
「奥には何がいるの!?」
「くっ!」
母は玄関のすぐ近くにある、謎の赤い字の御札をドアに貼り付ける。
すると…──
『オオゥアアアアアッッ!!』
ドアの向こうから聞こえた、悲鳴を上げるような叫びきり、その札は焦げ付くように赤く変色した。
そして音は消えた。
──目の前で起きた奇想天外の出来事を受け止めずとも、今葛真がやることは決まっていた。
「っ!そうだ!」
母も先程受けた恐怖を押し潰して、今葛真が抱える結実を救わねばと、奮闘してくれた。