21話 エピローグ 「ただ人生は喜びと共に」
○人間界 死神専用マンションにて○
ある日。玲は死神マンションを訪れていた。
「書けたの?小説。」
ロビーでナツキが待っていた。
「はい」
「あら、楽しみ。じゃあ行きましょう。」
向かったのはナツキの部屋だ。
玲はこちらに部屋を持っていない。
「じゃあ、パソコン準備するわね。
投稿するのはこのサイトでいいんだっけ?」
「はい。そうです。ありがとうございます。」
画面に表示されたのは、小説投稿サイトだ。
ペンネームはカタカナで『アオキアイ』にした。
玲はメモリーフラッシュを差し込んで
原稿を呼び出し、区切りの良いところで
分割しながら投稿する。
「で、どんな物語にしたの?」
「今回はまだ初めてなので。
取り敢えず自分を題材にしてみました。
北斗さんに出会ってから、死神になって、
最初の依頼を終えるところまで書きました。
ナツキさんも出てきますよ。」
「わお、私も出て来るなんて、素敵じゃない!
投稿終わったらあとで読ませてもらうわ。」
「はい!ぜひお願いします。
感想もお待ちしておりますので!」
玲の表情がぱっと明るくなる。
それから数か月して。
彼女の書いた物語はサイト内で人気となり、
書籍になることが決まった。
書籍化記念のインタビューの記事を紹介しよう。
「作品のテーマは死神ということで、
人間の死が中心になっていますが、
なぜこのように敢えて暗いテーマに
したのでしょうか?」
「最初に死神をテーマにしようと思ったのは、
好きな漫画に死神が出てきたところから
インスピレーションを貰いました。
そこから、物語に書き起こすにあたって、
やはり、仰っていただいたように、
テーマ上暗い印象もあるだろうなと思います。
でも、皆、一生懸命に生きているから。
一生懸命に生きているからこそ、
『死』の存在を意識する瞬間も
あるんじゃないかなって思うのです。
だから、そんな時に。
それでも生きて行こうって思えるような
作品を書きたいなって思いました。
もし、この作品が、沈んだ貴方の生命力を
呼び覚ます一助になったなら、
こんなに嬉しいことはありません。」
「作品の読者の皆様にメッセージをお願いします。」
「まずは、この作品を手に取っていただき、
また、インタビューに目を通してい頂き
ありがとうございます。
生きている間には、色々なことがあります。
時には逃げ出してしまいそうなことだって
あります。
きっと誰にも理解してもらえない。
そう思うことだってあると思います。
でも、そうなんです。誰にも分らないのです。
だって、それを感じているのは、
他の誰でもないあなただから。
あなたの中にある感覚と、
貴方に流れる時間は貴方だけのものだから。
あなたが感じた絶望も、失望も、悲しみも、
苦しみも、痛みも、憎しみも、憎悪も、恐怖も、
嫉妬も、羨望も、積み上げた努力も、
向き合った時間も、虚しさも、虚無も、
無力感も、欠乏感も、退屈も、悪意も、善意も。
喜びも、嬉しさも、楽しみも、達成感も、
充実感も、発見も、驚きも、情欲も、恋慕も、
寂しさも、会いたいも、恋しいも、愛しいも。
そして幸せも。
全部、全部、貴方の中にある、
貴方だけのものです。
他の人が、いくら努力をしようとも、
想像しようとも、互いに言葉を尽くして
対話をしようとも、
それは、その人の域を出ない。
あなたが感じたそれらと
全く同じものには、
たどり着かないのだから。
だから、貴方の一番の理解者は
貴方でしかないのです。
だから、貴方が、あなた自身を
一番想って、一番大切にしてください。
もし今、生きているのが辛いなら。
少し休んで寝てしまいましょう。
大丈夫。あなたは眠るだけでいつでも終われて
何度でもやり直せる。
痛い思いを、苦しい思いをしなくてもいいし
今ある全てを手放す必要もない。
そして起きたら、好きなことをしましょう。
なんでもいいのです。
推しのDVD見るとか。好きなテレビを見るとか、
居心地の良い人と話すとか、ゲームとか、
好きなものを食べるとか、行きたい所に行くとか、
映画を見るとか、音楽を聴くとか。
本を読むとか。
勿論、私の新作を楽しんで頂くのも大歓迎ですよ。
そして、生きていることを実感してください。
誰か大切な人が居るのなら、
その人と時を過ごせることを喜んでください。
もしも、大事な人が苦しんでいたら、
生きてくれるだけで嬉しいよと伝えてあげて?
誰かと他愛のない話をして時を過ごせることは、
とても尊くて、宝石のように貴重なものだと
私の好きなゲームキャラも言っていました。
もし、今、一人ぼっちで辛いなら。
好きなものを思い出せないくらいに辛いなら。
その時は貴方の体の為に生きてください。
その体は、貴方がここに来るために、
地球から借り受けたギフトです。
大切に扱ってください。
お腹が空いたら食べるとか。
眠くなったら眠るとか。
そうして日々を生き抜くことは。
些細なことではありません。
とても、偉大なことです。
だから。ただ、生きてください。
そして少しずつ、
元気になってください。
好きなことを探すのは、
それからでいいのです。
あなたが幸せであることを願っています。」
アオキ アイ
〇天界にて〇
「インタビューお疲れ様。玲、読んだぜ。
中々よかったんじゃないか?」
「ただいまです、北斗さん。
ありがとうございます。」
「さて、じゃあ新しい依頼もあるし
行きますかね。死神様?」
「はい。行きましょう。
私達のお仕事に。」
そして死神達は、また旅に出る。
さまよってしまった魂を救いに。
これは、人が死を受け入れて
尚も生きていこうとする物語だ。




