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夏の小径

作者: 瀬川なつこ

夕立、通り雨、魑魅魍魎の湧きいずる夏。

懐かしい久遠を、描き出したもの。

ゆらゆら、ゆらゆら、木漏れ日が揺れている。彼岸から呼ぶもの、来るもの。通りゃんせ通りゃんせ、賽の河原の鬼様が、小槌を振って、七福神に化けて、銭を撒く。綺羅と人魚の鱗が降る。ぎょろりとお地蔵様の目。化物になったお坊様が、豆大福になって、鬼やらいに喰われる。そんな夢。


お地蔵様がけたけた笑いだす。屏風と襖の後ろで、鬼と閻魔が踊っている。空には入道雲。お盆の時期。迎え火と送り火が逆さになって、魑魅魍魎が湧きだす穴蔵。家の裏で小鬼が人を喰っている。夏に櫻が咲いて、夏に雪が降る。太陽が西から昇って、東に堕ちてゆく。は、と目が覚めた。久遠の夢。


線香の匂い。なんだか臭い。死んだ人の香りがここまでする。火葬場が、火事。裏路地に堕ちたほうき星を取りに、少年が虫網を取って走り出す。ブリキのおもちゃの向こう側で、子供たちのはしゃぐ声。暗黒じゃんけん。負けたものが神社で肝試し。懐かしさのタイムカプセルは、お寺のお墓の群れの奥に埋めて置いておいたからね。火の玉明神。


夏の忘れもの、道端に堕ちた麦わら帽子、枯れかけた向日葵。道は、蜃気楼でかすんでゆらいでいる。遠くから歩いてくる父親と子供。恐ろしくて、逃げ出した。助けてください。妻にされる。…そんな幻。夏は、刹那の荒々しい感情に襲われる。誘蛾灯の下の蚊柱。その下で舞う、美しい振り袖姿の少女。すべて、夏の幻。久遠の呼び声。


鴉の赤い目。道路を横切る黒猫。切れた鼻緒。呪いの怨嗟が、降りかかるとき、神主様の元へ走る。途中の小径に竹藪があって、そこに狐の女が立っている。金魚鉢を持って、中の魚をばりばりと喰っている。狂人。美しい武士の青年が、龍神になって、心臓のあたりに住んでいます。だから清水を飲み、四季折々を暮らす。



誘蛾灯の下で舞う、誘うような振り袖姿の美少女。

夏の誘いは、いつまでも…


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