表紙は一頁目の物であり、題は一行目の語りである
前回までのあらすじ:
絵師とのバトルが終わり、電子書籍を販売しようとするサトリ
だが教えられた画像文字加工サイトでは満足できないと駄々をこねるのであった。
無料の加工サイトは何も出来ない事に比べれば遥かに有用である。
だが当然痒いところに手が届かない部分も多々でてくる。
可愛い文字加工ったってなあ。
――――あったよ。
ど派手な文字加工が可能なサイト。
プリクラにマーカーで描き込むがごとく落書きするような加工。
「サトリ、こんなんあったけどどうでしょう」
「ん~? ……いい!」
見つけたサイトは
[文字入れ::無料【画像加工サイト】もじまる - MOJIMARU.COM]
である。
いかにもカラフル、POPな縁取り、派手なペンとかなり尖ったサイトだ。
「んっふっふ~」
「電子書籍は基本的に手のひらサイズに縮小される。
かわいいフォントやカラフルなペンはいいが視認性が良くないといけないぞ」
「も~うるさいなあ、これ、ガラフチいいよね!」
「背景が緑だろ、フチ色は光の三原色でも色の三原色でも赤青紫がいいぞ」
「何か謎の呪文唱えだした、キモっ」
「謎の呪文じゃねえよ」
デジタル表示媒体なら色の基本は光の三原色(RGB)になる。
プリントアウトや紙本化するなら色の三原色(CMYK)だ。
デザインで食っていくでもない限り必須の知識ではない。
が、色を重ね合わせた時なじんでしまう色とくっきりと判別されやすい[反対色]があることぐらいは一般常識として知っておいて損はない。
「……ねえ、何だか左がスカスカじゃない?」
タイトル入れをしているサトリが素朴な質問を投げかけてくる。
見れば確かにレイアウト的に左が空いている。
絵師さんに依頼するときは中央に主人公、後ろに飼い主、他は……
ああそうか、依頼受付に一キャラ幾らってのが常識らしかったから無闇に登場キャラを並べて構成するのを避けたんだった。
しょせん絵についてはど素人。
Pixivでレイアウトの黄金比がどうたらってあったのを思い出す。
妙案が浮かんだ。
そもそもキャラたちに動きのある絵を求めていたのだ。
【タイトルにも動きをつければいい】
キャラたちに合わせタイトルに傾斜をつけさせる。
「副題が長すぎて入らない、サイズをもっと小さくしたほうがいい」
「あ、いいこと思いついた!
ここをこうして……こうでしょ……で、こう!」
なるほど、[飛びつくような動き]が[飛び上がる]イメージで仕上がったのを逆手にとって、空中に浮かぶ副題を爪で刈り取った風にしたわけか。
意外といいな、特に副題が見にくくなったということもない。
「んふ~いいんじゃない? いいんじゃない? どうよ!」
「そ、そうだな。 じゃあこれで電子書籍を作るぞ」
表紙さえ仕上がれば、後はどうということは無い。
でんでんコンバーターに画像とテキストを読み込ませてEpubを作成する。
「」
「」
「ねえ、作家先生?」
「ん? なんだ」
「紙の本もつくれちゃう、ってあるけど」
「あるな。 でんでん2POD出版(β)で作れるぞ」
「よく電子書籍と紙本選択して買えるやつとかあるけどこれも出来る?」
「出来るはずだけど、私のは選択できる状態にはなってないな」
「高い?」
「……何と言うか……出版は実質無料だ」
「実質無料ってなによ!」
「でんでん2POD出版(β)の仕組みを使えば利用するサービスはNextPublishingになる。
このサービスだと利用は無料、だがPODの仕組み自体は原価が総じて高くなる」
「無料? 原価? もっとわかりやすく言ってよ」
「サトリは書店に並ぶ本がどういう仕組で出版されているか知ってるか?」
「失礼ね! 同人誌作ったことあるから知ってるわよ!
出版社が印刷所に依頼して本屋へ送ってるんでしょ」
「まあ卸しが挟まるが大体そうだ、無論規模が同人誌とは雲泥の差だ。
印刷数が多ければ多いほど原価は安くなる」
「え? なんで? まとめ売りならまとまった利益になるから分かるけど印刷は……」
「逆だよ、輪転機が回るほど利益が出るんじゃなくて止まるほど利益が減るんだ」
「うわぁ」
「話は戻るが、PODとはPrint On Demandの略で受発注印刷なシステムの事だ。
一冊も売れなければ印刷代は発生しないが、売れれば常に一冊ずつしか刷らない」
「探せばほかに安いところないかな?」
「高い所ならいくらでもある、原盤作成料金が0円なのはここぐらいじゃないかな」
「そうなんだ……でもなんで0円なの? 怪しくないの?」
「怪しくないさ、何せ原盤作成してくれないからな」
「え……それってまさか……いやぁ!」
「手動だ」
「やっぱりぃいいいい!!」
会話だらけになってしまった……。




