7話 レイジの剣技稽古
少し嫌な雰囲気を感じたものの、レイジはすぐにタクヤの方へ向き直り口を開く。
「失礼しました。時間も惜しいので、今から稽古をつけたいと思うのですが、よろしいですか?」
会話に入らないでおこうと思い、静かにしていたタクヤだが、唐突にレイジから振られたために慌てて返事をする。
「あ、大丈夫です。よろしくお願いします!」
その言葉にレイジは頷き、そのまま外に出るべく足を進める。それに続くような形でタクヤも急いで後を追う。出る前にタクヤは一度振り返り、バレルに会釈をする。バレルは少し困った顔をしながらも、深々とタクヤへとお辞儀をした。
「まずは、タクヤさんの癖などをつかんでおきたいので、思うように剣を振るってみてください。」
レイジはそう言って、訓練用の木剣を構える。レイジから同じ木剣を預かっていたタクヤは、剣を構える前に頬を人差し指でかきながら照れ臭そうにして口を開く。
「ええと…レイジさん…。俺たち歳も近そうですし、あんまりさん付けとか敬語で話されたりとかされるとむず痒いので…出来れば呼び捨てとかで呼んでもらえるとありがたいんですが…。」
そんなタクヤの言葉に、レイジは目を丸くして小さく吹き出す。
「ははっ、確かに。これから一緒に戦う仲間なんだしね。砕けた話し方をしたほうが信頼も築きやすいだろうね。タクヤ!」
タクヤの願いに深く頷きながら、レイジは続ける。
「僕のこともレイジって呼んでよ。お互い敬語もなしにしよう!」
そう言って右手を握りこぶしにしたガッツポーズをとるレイジ。タクヤはそんな姿と"仲間"という言葉に、嬉しい気持ちになり自然と口がほころぶ。
「ありがとうレイジ。じゃあいくぞ!」
自分のお願いを快諾してくれたレイジに感謝を述べるつつ、タクヤは剣道部で経験したにわか仕込みの構えをとる。
「へえ…所々にムラがあるけど、理にかなった構えだ…。タクヤ、思いっきり打ち込んできて!」
その言葉に強く頷き、タクヤは勢いよくレイジに突撃する。こうして、レイジの即席稽古が始まったのだが、タクヤの渾身の初撃がいとも容易くレイジにいなされたのは言うまでもないことであった。
「…ここまで、かな。軽い実戦なら問題ないレベルだとは思うけど…休憩は必要だよね?」
息も絶え絶えに地面に仰向けで倒れるタクヤに、レイジが少し意地悪い顔をしながら尋ねる。
「スパルタ…すぎるでしょ…。」
自堕落な生活を送っていたことをこんなにも悔いたことはない。タクヤは自分の体力のなさを呪った。これは盗賊討伐でも足を引っ張ってしまうだろうと感じ、タクヤはうなだれる。
「気を落とすことはないよ。この短時間でここまでの実力をつけれれば、十分すぎるくらいだよ。」
そう言ってレイジは、タクヤに手を差し伸べる。タクヤはその手を掴み、苦笑いを浮かべる。
「嫌味ですかい…?」
素人のタクヤにも、ほんの少しレイジと手合わせしただけで、その実力が足元にも及ばないのは理解できた。自分とそこまで歳の違わないように思えるレイジでさえそうなのだ。自分がそれなりに通用すると言われても信用できるものではない。そこまで考えてタクヤは疑問をレイジに投げかける。
「そういえば、聞いてなかったけどレイジっていくつなの?」
「いくつって…年齢のこと?19だけど…。」
当然のように年上だった。タクヤは少し申し訳なさそうに上目遣いで尋ねる。
「俺は16なんだけど…。敬語に戻した方が…いい…ですかね?」
その発言にレイジは、稽古を始める前の時よりも壮大に吹き出し、声を出して笑い始める。
「言ったでしょ。僕たちは仲間なんだ。気にしないで普通に接してよ!」
本日二度目となる"仲間"という自分にかけられた言葉。タクヤは単純にもその言葉で、この先頑張ろうとやる気が沸き上がったのだった。




