6話 レイジの提案
「盗賊の討伐?」
レイジの唐突の条件提示に、タクヤは首をかしげる。その反応を確認したうえで、レイジは事の概要を伝える。
今回リマージ村を襲撃した盗賊団は、トラトス島南部を主な活動区域としており、勢力自体はそこまで大きくはない。しかし、見境のないスタイルであり、厄介なものとして島全体にその存在が知られていた。当然のように、近づいてはいけない場所としてアジトの場所もそれなりに有名である。
宝玉使いの存在を確認し、盗賊が慌てて撤退したタイミング。相手の虚をつくには絶好の機会であると言える。ましてやアジトへの襲撃に宝玉使いが加担していると知れれば、相手の混乱を誘発するのにも一役買うだろう。
「なので盗賊の討伐に同行していただきます。宝玉使いであるあなたに…。」
そこまで言って、レイジはあっとした顔をして、顔を引き締めて続ける。
「失礼しました。私、レイジ・ライトグランドと言います。お名前をお聞きしても…?」
その言葉に、タクヤもまたお互い名乗っていなかったことに気付く。
「あっタクヤです。ヒョウドウ・タクヤ。」
「タクヤさん…ですね。やはり…伝説と同じ異界の方なのですね…?」
タクヤのフルネームを聞いて、レイジもタクヤが異邦人であることを再認識する。そのレイジの反応にタクヤは恥ずかしそうに頬をかく。
「伝説の人と同じって言われても、俺はろくに戦うことも出来ない一般人だけど…。」
宝玉使いであることの凄さがいまいち理解しきれていないタクヤは、宝玉使いであることを重宝される反応に不安を感じ始める。少なくとも自分は誰かの助けになれるような力を持った人間ではない。
「あくまで噂ですが、その伝説の宝玉使いたちも初めは戦う力を持っていなかったようですよ。」
自身のなさげなタクヤの様子に、レイジが微笑みながらそう口にした。その言葉にタクヤは、そんなものだろうかと少し気が晴れる。
「宝玉使いに剣を教えられるなんて、僕は光栄ですよ。」
どこか誇らしげに続けるレイジに、タクヤは自分が必要とされる喜びを感じ始めた。どこまでできるかわからないけれど、精一杯期待に応えたいと。そう考え、タクヤはふと疑問を覚える。
「でも、剣を教わる時間なんてないんじゃ…。」
盗賊討伐は今がチャンスであると聞いた。となると、ゆっくり剣を教わっている場合ではない。その当然の疑問に、レイジは申し訳なさそうに頷く。
「そうですね。少しでも早く討伐に向かいたいところです。なので、基本の型だけをタクヤさんに教えます。残りは道中に実戦で身につけていただきます。」
「じ、実戦…?」
何やら不穏な言葉を聞き、タクヤは更に不安を感じるが、考えないようにした。
「話はまとまったようだな。そういえばロールはどうした?」
そこまで黙っていたバレルがふいにそう口にする。
「ロールは村の入り口で周囲の警戒をしています。」
人の名前だろうか、そう首をかしげるタクヤの様子に気付きバレルは説明を入れる。
「失礼。ロールは私の娘です。レイジに負けず中々の使い手ですよ。槍の、ですがね。」
そう自慢げにバレルは自分の娘を紹介する。それを聞き納得するタクヤの顔を見て、バレルはレイジに向き直る。
「ロールも討伐に参加するのだろう?」
「はい。僕とロール、タクヤさんで討伐に向かおうと思っています。」
バレルの問いに、レイジは頷き、討伐メンバーを伝える。
「討伐って三人だけで!?」
討伐メンバーの少なさにタクヤは驚愕して声を上げる。自分を戦力として数えなければ、目の前にいるレイジと、バレルの娘であるロールの二人だけなのだ、不安しかない。その様子にバレルが口を開く。
「心配する気持ちはわかります。しかし、レイジとロールはこの島きっての実力者と言っても過言ではありません。十分すぎる戦力であると言えるでしょう。」
レイジたちが相当な実力者であるという発言。身内贔屓ではない保障もなく、タクヤの不安は拭えない。その様子を見て、バレルも少し不安気な顔になる。
「確かに少し心もとない人数ではあります。私としてももう少し人数を割ければいいのですが、村の者たちでは足を引っ張るだけでしょう。」
申し訳なさそうに言いながらバレルは続ける。
「せめてレンジが村に残っていれば…。」
「村長!!」
バレルの言葉を遮るように、レイジが声を荒げる。
「レイジ…。」
「村長。盗賊に加担する奴の話はやめてください。兄さんは…この村の敵なんですよ…。」
レンジと聞いた時、タクヤはレイジの聞き間違いかと思ったが、どうやらレイジの兄がレンジという名前のようだ。少しややこしいと感じつつ、タクヤはどうも複雑な事情がありそうなその話題には触れない方が良さそうだ、と口を堅く結んだ。




