第5話 お金儲け/キャラメルちゃん/モカちゃん
『バリアーパーフェクトフィールド』
心の中で技名を唱える。
無詠唱というやつだ。
魔法全般に言えることらしいんだけど、①無詠唱、②魔法の発生速度、③発生させた魔法の大きさとかはその技に対する熟練度によって変わるんだって。
とりあえず、転びそうになる女の子にバリアーを張る。
ケガしたら大変だからね。
「ごめんなさい。ありがとうございます」
女の子は立ち上がり、俺に頭を下げる。
紅茶は、木でできたコップの為、割れたりはしていないけど、テーブルに中身が広がっている。
テーブルが濡れてしまった。
とっさに、ショインさんが俺の出した3品を持ち上げてくれたみたいで、それについては、無事である。
『ごめんなさい』と何度も謝る女の子に、『大丈夫だよ』と答えながら、魔力を消費しタオルを出す。
商業ギルドで売ろうと思っていたのと同じ品である。
「私にも、させていただけませんか?」
俺がテーブルにぶちまかれた紅茶をタオルで拭いていると、ショインさんが言ってきた。
「はい。すみません」
日本人というものは、何とも謝ってしまう者である。
その為かどうかは分からないが俺は、自分が悪くなくとも、とりあえず謝る癖がついてしまっている。
「肌触りも良く、吸水性に優れているのですね」
「はい。自分も愛用している品です」
そこまで高くない、俺が普段使いしている1つ500円ほどのタオル。
同じく500円のハンカチである。
包みなどはなく、裸状態のタオルとハンカチ。
ビニールとかないだろうし。
代わりにフロシキに3品、タオル、ハンカチ、香水は乗せている。
「素晴らしい品ですな。それで、こちらは、どのように使うのでしょうか?」
タオルを実際に使い満足した様子。
俺の許可をとった後、香水を手に取るショインさん。
「そこの上の部分をですね。押していただくと、中身が出ます。それを首元や手首に塗って使います」
青りんごの香りが好きなので、出かけるときは普段から使っている。
香りが好きなのだ。
香りって大事だよね。
臭い人は論外だし、自分が嫌いな香りの香水をつけている人がいたら敬遠してしまう。
普段、青りんごの香水は、そこまで香りが強くないものを使っている。
『ぷしゅっ』
使ってみるショインさん。
「これは、なんとも優雅であっさりとしたフルーティーな香りですな。それにこれは、ガラスでできています。精巧な造りです」
香りを楽しんでいるショインさん。
ガラスの容器も高評価の様だ。
「はい。ありがとうございます」
口下手なので、言葉が出てこない。
商売人として、商品をアピールしたほうが良いのだろうけど。
「どれくらいの量、お売りいただけますか?」
「えっと、」
確かこういう時、たくさんあるとか言ったら、ダメだったよね?
安く買いたたかれる可能性があるから。
「ある程度はあります」
軽く所持個数を濁した。
「新しい紅茶です。先ほどはごめんなさいです」
喫茶店の女の子が紅茶を持ってきた。
礼儀正しい子みたいだ。
年齢は小学校高学年くらいに見える女の子『先ほどは』という言葉が、出るだけで感動してしまう。
今どきのこどもは、喫茶店とかで自身が使ったイスをそのまま出したままで帰ることも多々見受けられる。
驚くことに、家族で喫茶店に来ているのにも関わらず親も出しっ放しで帰る姿も目にする事も少なくない。
親が親なら子も子と言ったところだろう。
まぁ、そんな話はどうでもいいか。
新しい紅茶をわざわざ持ってきてくれた女の子に『ありがとう』と言葉を返し、テーブルに置いてもらう。
「キャラメルが申し訳ありませんでした」
女の子と同じエプロンを付けた女の子が現れた。
お姉さんかな?顔も似ているし同じ髪の色でうすい紫色、同じ瞳の色をしている。
違う点は、髪の長さと身長だろうか?
キャラメルと呼ばれる子はショートカットで身長は140cm位、かな?
キャラメルと呼んだ女の子は髪型をポニーテイルにしていて身長は160cmはありそうだ。
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