第2話 腐り病
少年視点のお話
あの薄暗い路地からオレを拾った男は、ゼロというらしい。
長い睫毛と口元のホクロ、優しげにたれた瞳。
そして無造作に伸ばされた一見だらしなく見える髪が色気を感じらせる男だった
彼が連れて来たのは、どうしてスラム街にこんなに、真っ白で清潔な部屋があるのか不思議なくらい、綺麗な部屋。
その部屋の中心あるこれまた真っ白なベッドに寝かせてくれた。
「君の名前は、今日からサルヴァということにしましょう。」
急な話に驚き、何故お前に名前をつけ直されなければいけないと、視線で訴えて見ると、ゼロは当たり前だと言うように肩をすくめる。
「だって君、捨てられたんでしょ?捨てられたのにその親につけられた名で生きていくのですか?
それに言って仕舞えば、今から行う君の治療は、その腐った身体を、私がまた綺麗に作り直してあげるのと同義だ。私の子だと思っても構わないでしょう」
後半の言葉に 『は?』と、思ったが、捨てられたのには違いないし、その名で生きていくのかと、言われると本当に治すつもりなのかと、そんなことなんてどうでもよくなってくる。
腐り病。
発症直後、王都の町医者にそう言われた。
腐り病とは、健康体にも関わらず、身体が腐りやがて死を迎える病気だ。
衛生状態の悪い土地で発症するらしいが、詳しい原因も治療法もわかっていない。
親も医者も最初は治療しようと手を尽くしてくれたけれど、病が進行するにつれ、臭いや、どこからか沸いてくる虫に、ついに耐えられなくなり捨てられた。
「聞いたことはあるけれど、見たことはなかったのでね。実験的な治療で多少痛みがあるかもしれないけれど、勿論付き合ってくれますよね?」
オレが頷くと確信しているようだった。
まぁ、実際その通り、藁にもすがる思いだ、キツイ臭いのなか、腐っていく身体と、虫に喰われる自分を見ながら無様に死んでいくと覚悟していたのに、治してやると言われたのだから。
生きたいと思ってしまう
「その無言は、肯定と受け取りますよ。」
妖しげに微笑んだゼロは、早速治療の準備を始める
よくわからない術式(?)だらけの包帯をオレの頭から足先まで巻きつけ、ベッドの周りで何かを始めた書きだす
なにも見えないため、こいつが何をしようとしてるのかはわからない
でもなんだか、『禁忌の魔法』とかそう言うものが頭に浮かぶ。
もしかするとオレは間違った事を望んだのかもしれない、そう思った時、ゼロのと何かを唱える声が聞こえ、魔法陣っぽいが光り出し、言葉では言い表しようのない痛みが全身に走る
「__ッ??!!!!!!」
オレの声にならない絶叫が、真っ白な室内に谺した。