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パンドラキーズ  作者: やマシン?
黒と白の国
1/11

駄菓子屋は彼らの物

 滴る雨。

 やることをこなし正常に戻った世界は、何もできずに地面に張り付いている僕を濡らす。

 それにしても皮肉なことだ。

 僕の努力が本当に無駄なことだってのを、一番知っていた僕がその努力をやめなかったおかげで、ある世界が滅んだのだから。本当に迷惑な話だ。

 いや迷惑なのは彼女の方だったな。

 ただ笑って僕のために死んでくれた彼女こそ、りっぱな被害者だ。

 加害者の僕が言うのもなんだけどね。

 このまま雨の中で死んでもいいが、あいにくそんなにやわな体ではない。

 五体不満足で四つを失っても、平気でこんなことを考えている時点でこの体は異常であるからね。

 ハァ。

 彼女には悪いけど。僕はここで死ぬべきなんだろうな。

 でも死ねないし、こんなところにいたら風邪をひいてしまう。


 「お前。」


 その声は僕の目の前。

 僕を覗き込むようにして見ていた。


 「何してんだ?」


 僕の



 将来の友人であった。







  俺は変な夢を見た。

 その夢では俺が女で、訳もわからぬ神様と呼ばれていた人と稽古をしていた。

 俺の性別は男。名前は明間 凛と中性だが俺は男であり、女である筈はなかった。

 それと同様に...


 「何かな。懐かしさに似たものを感じたんだ。たまにないか?夢に懐かしさを感じた事。俺にとってはその時というか今日なんだが。」


 高校生活も二年目に入った春。

 生活にゆとりと慣れが芽生え終わり、多少のマンネリ化が進んできた今日この頃。このような夢の話を友人と話していた。

 話していたというか一方的に聞かせようとしただけなのだが、友人である清野五樹は、比較的真面目な顔で聞いてくれた。そして一言。


 「懐かしさを感じたという事は、実際に体験したことじゃないの?」

 「どういうことだ?」

 「例えばの話、ゲームとかアニメとか、または旅行に行った場所とか、そういう行ったように感じる場所、実際に行って忘れた場所。とかそういう場所の組み合わせなんじゃないのかな?夢の舞台は。」

 「じゃあ俺が女になっていたのは?」

 「心象真理だね。たぶん。」

 「そんなものか?」

 「実際そんなものだよ。つまりあけpは女の子になりたくてしょうがないのさ。心の中では。」


 春らしいのがは陽気なのか、陽気になると春らしいという風になるのか分からないが、今日は比較的春らしい天候で、陽気であった。

 四方を山間に囲まれているこの町は夏はくそ暑く冬はくそ寒い。日本の伝統的遺産である春夏秋冬をこよなく愛しているような印象を持てるほどの気温の変化で有名である。また、比較的というか田舎で、住宅地の周りはただただ畑が広がっているといった状況である。

 特徴といえば、先ほど言った山々のおかげか登山客が多い事である。3千メートルと二千メートルの山々に囲まれており連邦と呼ばれるほどのそれは、登山客にとって素敵なもののようだ。


 「俺がおネエになりたいと?」

 「心の奥ではね。それか誰かをおネエにしたいか?叶わないから自分に置き換えている。とか?」

 「差別主義者ではなかったが自分を消したくなった。」

 「そんなにいやだったら前世じゃない?君は前世!女の子だった!」

 「残念ながらそのような記憶がないので俺は前世を信じない。」

 五樹は、まじめな顔を変化させ、いつものニヤニヤ顔にもどす。

 「あけpは前世を信じないの?」

 「記憶がないものを信じられない。それだけだ。」

 「信じる者は救われるよ?」

 「救ってくれるのはキリスト様だけだぞ。」


 キーンコーンカーンコーン

 学校のチャイムが鳴り、一時間目が始まることを告げる。

 忙しそうに談笑に耽っていた生徒たちは、忙しさを自分の席に移動することに集中し直す。それは俺も同じで自分の席に戻ろうとした。


 「あっ。あけp。」

 五樹に呼ばれ振り返る。

 「今日。放課後ね。」

 「ああ。めんどくさいな。」

 今日の一時間目は数学である。



 昔、昭和の時代の商店街の異様な光景と言ったらシャッターが閉まっていることなのだろうか。昔にとっての光景ではあるが、今は日常化しそれもまた日常の一部になっている。近くの大型店にすべてを取られ、この町の商店街の者はすべてが死んだように見えた。

 そのくせアーケードを壊さないあたり、抵抗の印かただただ予算の関係なのか知らないが、時代は残酷とはまさにこの事。


 春の陽気は放課後まで続いていた。

 普段あまり通らない商店街を横切っていると、ふとこのような地域の現実が頭の中で再生される。

 放課後、俺らは普段見ない地域の現実を見るためにここに来たのではなかった。ここまでいってなんだが…

 五樹は俺が言うのもなんだが好奇心が強い男だ。

 そして好奇心が強い五樹はこのようなうわさを手に入れたらしい。

 

曰く


 冥界に続く駄菓子屋があるらしい。

 しかし噂は噂である。そのようなことを聞いたは聞いたが、誰も冥界に行ってないらしい。と五樹は言う。

 それならば調べなくとも結果は出ているだろう。人類の進化を何だと思っているんだ。というと。


 「あけpは実際に見ていないのに否定するの?」


 と言われ、


 「実際に見てから否定した方が確実性はあると僕は思うよ?」


 と続けられた。


 そこまで言うのなら確実性のある行動をし、その上で笑ってやろう。とか思ったが、まあそこまではしなくてはいいだろう。

 また少しの好奇心も重なりこうして付き合っているのだ。


 「それで?駄菓子屋はどこだ?というかここ等辺にあったか?」

 「商店街の路地奥だからね。ここ。この路地を~曲がります~。」

 「添乗員?」

 「バスガイドといいなさい。」


 こうやってふざけれるのもあと一年ちょいか。

 時は早く流れるものだと関心ができる。

 路地裏は狭く、その間の店は飲食店でも大人の部類に入る店が軒を連ねる。

 その…一つにだ。


 「ここかな。し…き?」


 看板には薄い文字で、しきという二文字が書いてあった。

 店自体の印象は、駄菓子屋としか言いようのない駄菓子屋である。昔ながらの商品から、ここ最近出回っている物まで、多種、いろいろなものが置いてあった。内装もまた普通である。

 店の奥はここからでは見えない。

 その横に、長い廊下があった。店の中にお邪魔しますというあいさつで入るが、人がいる気配は限りなくない。それほどまでに静かだった。

 

 「お邪魔します!」


 比較的大きな声だが聞こえていない。もしくは人がいないのかその声はただただ存在を消していった。


 「誰もいないね。」

 「店の人も冥途に行かれたのかもな。」

 「それにしても。この廊下。先が見えない。これこそが噂の正体?」

 「それでどうする?もう帰るか?」

 「冗談。」

 

 そう言って五樹は…なんと廊下に向かっていった。もちろん靴を脱いで。


 「不法侵入。」

 「二人でやれば怖くない。怖くない。それに誰もいなかったから心配して探しに来たっていう理由はあるわけだし。」


 そう言って手招きをする。


 五樹の後を追うように靴を脱ぎ廊下を渡る。

 廊下は果てしなく、どこまで続いているか分からないほどであった。物理的な目線でいえば、どれだけ長いんだという疑問が作られるが、そんな事よりも、一つ気になることが。

 進んでも進んでも扉という扉に出会わない。また…


 「先が見えないね。」

 「ほんとに冥途だとしたら俺はもっとほかの奴と行きたかった。」

 「たとえば?」

 「二組の佐藤。」

 「ただの無理心中だよ。」

  

 そんな軽口も、30分も歩けば出なくなる。

 そろそろ戻ろうか。そう考えた時だ。

 突然。そう突然だ。

 目の前に扉があらわれた。

 目を伏せた間にだ。

 その扉は鉄格子のようになっていて、そのくせドアノブがきちんとつけられていた。そして鍵穴も…


 「回したら開くにジュース。」


 と五樹。


 「開かないに焼きそばパン。」


 と俺。


 その答えは先頭を歩いている五樹の手に握られていた。正解は…

 ガチャガチャという音。

 扉はビクともせずにただ存在している。押しても引いても結果は同じで、ここであきらめなければならないといっているようだ。

 

 「残念だけどここで終了かな。捜査は。」

 「まあ、ある意味楽しめたしいいだろ…ん?」

 

取っ手の所。かすれた文字で何かが書いてある。


 「ちょっとどけ。」

 「何か見つけた?」


 かすれた文字は見にくかったが、何とか解読できそうだ。

 

 「パンドラに捧げる?」

 「パンドラ…」

 

 パンドラと言ったらあのパンドラの箱の話だろうか。まあいい。興味のあることはなくなった。じゃあ帰るか。その時、俺は扉に少し触れたんだ。

 その時。

 扉が吹き飛び。

 風に引き込まれ。

 俺らは…


 限りなく続く世界は思ったより残酷で

 それはどこに行っても変わらない質であった。


 次回 パンドラキーズ


 山賊の森



 ただ

 自分が正しいと思ったことをしたいだけなんだ。

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