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魔法少女…?  作者: 慧瑠
お願いします。ママには内緒にしてください。
2/25

口止め料はアイス二個と半分で

「……」

「……」


二人の間に言葉はない。と言うより、隣に座る自分の父から発せられる重苦しい雰囲気に言葉が出せない。


あの後、フリフリ衣装のパパは、赤黒い化物を一方的に殴り倒して小さく何かを呟いた。

そうすると、赤黒い化物は淡く光を放ち、そのまま光になって消えてしまった。

それを見送った後に、私は近くのベンチに座ったパパの隣に座った。


「……」


化物が消えてから時間は数十分程度だけど、もう何時間もこうしている気分になってくる。


智佳ちか…」


パパが私の名前を呼んだ。

その声は、どこか疲れているけどいつも通りのパパの声。でも、視線を向ければフリフリ…。


ダメよ私。ここで笑ったらきっとパパの言葉は続かない!


私が必死に笑いを堪えて真面目な感じで見ていると、パパはフリフリスカートのポケットがあるであろう場所に手を突っ込みタバコを取り出した。


「パパ」


「あぁ、悪い」


私が名前を呼べば、パパはタバコを咥えずにポケットの中に戻した。

パパは、私の前ではタバコを吸わないようにしてくれている。昔はヘビースモーカーだったとお母さんから聞いてるけど、私が生まれてから本数は減って、吸う時は一人別の場所で一本だけなんだって。


私は、別に気にしないけどパパは私の前ではタバコを吸うことはしない。


それなのにタバコを吸おうとしたと言う事は、かなり動揺しているんじゃないかと私は予想する。

完璧超人!ってわけじゃないけど、そつなく色々こなすパパのこんな所は新鮮な気分だ。


「智佳、何か食べたい物はあるか?」


「え?あー…今は、アイスが食べたいかな…?」


「ハーゲンでいいか?」


「二個」


「ナッツとバニラだな」


「後、パピッコも」


「分かった。色々聞きたいだろうが、とりあえず買ってくる」


そう言うとパパはベンチから立ち上がり、近くのコンビニへと向かっていった。


「ちょ、パパ!服!」


一瞬、そのまま見送りかけたけどフリフリと動く反動と風で揺れるスカートを見て気付く。

このまま女装スタイルのパパを見送るわけには!


「大丈夫。そろそろ範囲が狭くなり始めてるから」


私の言葉に、振り向きはせずに白い高そうな布で作られた手袋をした手を振りながら公園から出ていくパパ。


何が大丈夫なのだろうか…と思っていると、公園を出た瞬間にパパの服装は'I♡Family'と書かれたシャツとジャージという、家でよく着ているスタイルになっていた。


「そういえば…パパ、今日は休みとか言っていたなぁ」


-------


やべぇな。

バレない様にと気を付けていたにも関わらず、一番最初にバレるのが娘とは…。

今年で中学二年の娘だぞ?思春期だぞ?今まで思春期らしい思春期は無かったが、これをキッカケにとか全然ある。

むしろ、その可能性の方が高い。

しかも親父があんな服装を着てるとか…


-パパキモイ。臭い嫌い。マジ無いわ。死んで欲しい。-


あ、ダメだ。メンタルが粉々になる。これは本気で死ねるかもしれん。


コンビニに向かう途中で色々と考えてみるが、最悪の予想しかできない。


「らっしゃーせー。よーこそ、フレンドマートへー」


足取り重くコンビニに辿り着き、店員の声を聞きながら最愛の娘である智佳の好きなアイスを籠に入れていく。

ついでに、自分用に缶コーヒーを籠に入れていく。


「らっしゃーせー。あれ?何かお疲れですね」


その他にも適当に籠に詰めてレジに持っていけば、入店した時に挨拶をしていた店員が声を掛けてきた。

家が近くよく来るせいか、店員がこちらの顔を覚えているらしい。

そして、この店員はコンビニオープン初期から居る店員で、それなりに仲良くなっていた。


「お疲れ様。

もしかしたら、娘が思春期に突入したかもしれん」


「娘さんって、あのたまに一緒に来る子ですよね?

思春期って…そんな時期なんですか?」


「今年で中学二年だ」


「あー…時期と言えば時期ですね。

自分、一人っ子で男だからいまいち分からないですけど、女の子の思春期って結構メンタルが抉れそうですよね。

男はこう…反抗が行動にでるというか、バカだから素直という感じですけど、女の子の思春期って父親を精神的に殺しに来てそうなイメージが」


この店員さんは、若いわりには俺と意見が合う。

思考が似ているのかもしれないが、大体考えている事が同じだったりする事が多い。


まったく俺も同じ意見だよ店員さん。

愛娘から嫌われたら…あぁ、これは鬱直行だ。俺の精神力の装甲なんてぶち抜いて来るに違いない。


「まぁ、でも娘さんとはお話した事ないから分からないですけど、いい子だなーってイメージが強いんで、お客さんが思うほど思春期も酷くは無いんじゃないんですか?」


「そう思う?」


「絶対!とはいえませんけどねー。

あ、2,518円になります」


「ありがとう。少し気が楽になった」


「それは良かったです。

5,000円お預かりして、2,482円のお返しになります。ご確認くださーい」


話していると、会計はあっという間に終わってしまう。だが、個人的にはこの店員と話すのは気分が楽になる。


「それじゃ、お疲れ」


「お疲れ様です。 あざーっしたー、またおこしくださーい」


軽く挨拶をしてコンビニを後にする。

ありがとう店員さん。少し元気が出ました。


行きより足早に娘が待つ公園へと向かう。

徐々に見えてくる愛くるしい娘の姿。大丈夫だ、智佳はいい子だ。


「ただいま」


「おかえり」


娘の智佳にアイスが入った袋を渡すと、智佳はパピッコを取り出し内包されてい二つの内、一つを俺にくれた。


……智佳、パパは涙が出そうだ。

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