帰宅
流石に定時で仕事は終わらなかった。
少し遅れる事と賢悟達が来る事を結菜に伝え、賢悟には俺が頼まれていた買い物をしてもらって行く様に連絡。
そしてやっとの事で九時半頃に仕事が終わった…。
とりあえず、広報の方と話しはつけた。広瀬部長も、人手不足を懸念していたようで、こちらから人を送る事に反対は無く、すんなりと話しは進んだ。
生産管理部の発表日程は、古賀と倉見が話しを進めてくれている。流石に、すぐには決まらなかったようだが、倉見曰く明日には決まりそうとの事。
他の書類も、ある程度は処理したし…残りは明日でも問題ないだろう。
「さて…帰るかな」
一人になった部署で帰り支度を終えた俺は、開いている窓は無いか、忘れ物は無いかを確認してから部署に鍵を掛けた。
警備員さんに挨拶をして、帰路につく。
帰り道、少し智佳達の学校の前を通る道を選んだが、特におかしい所は無い。
もしかしたら、鉄弥君が会ったと言う男が居るかもと思ったが、そうそううまい話は無いようだ。
特に変わった事もなく家に帰り着いた俺は、玄関越しでも漂ういい匂いに心踊らせ帰宅した。
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台所では千代さんと結菜が和気あいあいと晩飯を作っていた。
帰宅した俺は、家の中に居た賢悟と鉄弥君、結菜と話しながら料理を作っている千代さんに挨拶をして先に風呂に入り終えている。
まだ聞こえる話し声から、晩飯が出来上がるには時間があるみたいだ。
「で…鉄君にもバレたと」
「はい」
そして現在、俺は智佳に今日あった事を報告していた。
特別話す事は無いと思っていたが、鉄弥君が智佳に話したようで、風呂から上がった俺は智佳に呼ばれ、鉄弥君と賢悟と俺と智佳でテーブルを囲み報告する流れに…。
「パパ…よく今までバレなかったよね」
「はい」
「ちーちゃん、正義さんも結構気にしてるみたいだし、その辺で…」
「鉄君は自分のお父さんがあんな姿になることを、お母さんに知られていいの?」
「ダメだ…それはいけない」
「でしょ?ちゃんと言っとかないと、パパはすぐに油断するんだから!ねっ!パパ!」
「はい…。」
報告というよりは、智佳に怒られていた。
もう少し穏便なやり方は無かったのか、他の人にバレたらどうする気だったのか、鉄弥君に何故スリープを試さなかったのかなどなど…。
どうする事もできなかったと説明できる部分もあったが、ぐうの音もでない正論もあったために、思わず正座に敬語で返す事しかできない。
「ハハハハ!正義は智佳ちゃんにも頭が上がらないんだな!!」
「賢悟さんもですよ!パパと同類になったなら、気を付けないと色々と問題があると思いますよ!」
「お、おう」
そうだぞ賢悟。お前は既にこっち側なんだ。笑い事じゃなく、真剣に向き合っとかないと智佳に晩飯抜かれるぞ。
ただね智佳、同類という言い方はどうだろうか…なんか、ちょっと傷付くんだが…。
「もうっ…でも良かった。鉄君も無事だったし、パパも賢悟さんも大きな怪我してないみたいで…」
「心配させて悪かった」
「うむぅ…」
「俺も不注意だった。ごめんちーちゃん」
智佳の安心した顔を見て、俺達はただただ頭を下げる事しかできなかった。
とりあえず、智佳の許しを得た俺達は、今後の事を話し合い始める…前に、晩飯の時間が来た。
「少し遅くなってごめんなさい。できましたよ」
「久々に結菜さんとお話してたら、盛り上がっちゃってごめんなさいね」
「おぉ、運ぶのぐらいは手伝うよ。賢悟も手伝え」
「おう」
「私もー」
「あ、自分も手伝います」
次々と皆で料理を運び、準備が終わると………すんげぇ量作ったな…。
予備のテーブルまで出して並べられた料理の数々、一見パーティーの様な量だ。
和食と洋食、若干中華。飲み物を用意する為に冷蔵庫を開けたら、デザートも入っていた事を確認している。
会話がはずんで、作りすぎだのだろう。
「おぉぉ!うまそうだな!」
「いい匂い~」
「母さんは、お茶でいい?」
賢悟も智佳も、並べられた料理を見て、どれから食べようかと迷っている。
鉄弥君は、率先して飲み物を全員分注いでるな。
お客人なのに、俺が変わろう。
「鉄弥君は、ゆっくりしてくれ。
俺がやるから」
「いえいえ、これぐらいは…」
「なら、鉄弥君の分は俺が入れようか。
何がいい?」
「あ、えっと…じゃあお茶で」
と、色々やり取りしつつ、全員分の準備が終わり皆が座り
「んじゃあ、とりあえず食おう。いただきます」
「「「「「いただきます」」」」」
久々の大人数での食事が始まった。
ちょっと騒がしいが、こういうのも悪くないな。
キャラや設定を忘れる私の日常