これは夢コレは夢コレハユメ
そこから数十分程だろうか。
正義と共に迫る敵を処理した。次から次へと集まる敵に終わりがあるのか?と考えつつ…。
それでも敵を浄化し続けると、一際でかい車体を持った敵が現れる。
相手をしていた化物どもより一層触手を生やしているが、日本では特徴的な配色で、一目でソレと分かる白と黒のデザイン。肥大化したその大きさのモノは見たことはないが、ソレが警察の車である事は一瞬で分かった。
そして…その後部座席に我が息子の姿がある事も。
「やっとお出ましか」
「でかいな」
ソレを抜かせば、最後の一体を浄化した正義は手についた触手の破片を振り落としながら言う。
「下手に攻撃したら、鉄弥君にも被害がでかねないな…。
賢悟、あいつ止められるだけの体力は残ってるか?」
「愚問だな!これしきで疲れはせんよ」
「そりゃ頼りになる」
少し疲れが見える笑みで言う正義は、生足を生やしいっちょ前に吹かしているソレを見据えタイミングを計っているようだ。
ともなれば、俺はそのタイミングに合わせられる様に構えよう。
「どうやって止める」
「無論、正面から」
「…脳筋。
まぁいいわ。触手は全部弾くからしっかり受け止めろよ」
トン、トンと、その場で軽く飛びリズムを刻む正義。
ソレも対すかのように何度も何度も吹かす。まるで気持ちを高ぶらせているように。
そして…
「来るぞ」
正義が言い終えた瞬間、ソレの触手が一斉に伸び広がり、周囲から俺等を狙う。
正直、身体がそれに反応しそうになるが、正義が弾くと言ったのならば信じよう。俺は目の前でクラウチングスタートをしようとしているソレを受け止めねばならん。
迫る一本の触手が、俺に触れる前に弾ける。
隣に居た正義の姿は無く、襲う触手が二本、三本と増えても俺に触れる前に弾ける。
同時に襲われようとも、同じ結果。正義の姿は速すぎて見えはしないが…感服するぞ。
すると、ソレは触手ではダメだと思ったのか動き出した。
クラウチングスタートの構えから、直立になり、生えていた足はどういう原理か車体に収納されでかい車体のまま猛スピードで突進してくる。
「上等!」
俺は、ソレを受け止める為に手に腰に足に身体全てに力を入れ…瞬間、凄まじい衝撃が身体と脳を揺らす。
「フン!」
それでもソレの勢いは止まらず、ズルズルと押されるが、一層力を込め耐え抑える。
これはキツイ。
その衝撃に車内の様子がどうなっているか気にはなったが、気を抜けば轢き殺されかねない。
だからこうして抑え絶えるしかないのだが…正義はここからどうするつもりだ。
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賢悟と俺を狙う触手を弾き飛ばしていると、賢悟と巨大パトカーが衝突した。
その衝撃音が威力を物語っている。何より、フロントガラスが衝突に耐えきれずに粉々に砕けた。
正直、もう少しこう…優しくというか…あんまり衝撃が無いように受け止めるかと思っていたが…。
とりあえず、今の優先するべきはと考え直して、ある程度触手を処理し次が来る前に割れたフロントガラスがあった場所から車内へと身体を滑り込ませ入った。
さっき確認できた様に、鉄弥君は後部座席で気絶している。
「息はしてるな」
念のために息を確認した俺は、鉄弥君を肩に抱え裏拳で天井をぶち破り脱出した。
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「鉄弥君回収した」
「おぉおおぉおおぉおおお!てつぅぅぅぅぅうううぅうぅ」
「感極まってる所悪いが、とりあえずアレを浄化するぞ」
ぼやける意識の中で声が聞こえた。
聞いたことのある声と、親父のうるせぇ声。
俺は、どうなった。
学校の休み時間に警察が来たとかで先生に呼ばれて…ハーフみたいな顔の男が居て…。
お礼をしたいとかなんとか…俺には心当たりが無かった。
でも、断っても聞いてくれねぇし、なんかパトカーの中に渡したいモノを忘れたとか言われて、言われるままに着いていったらパトカーに押し込められて…。
あー、なんかだんだん思い出してきた。
運転手がいねぇのに勝手に走り出したパトカー。降りようとしても扉は開かねぇ。とりあえず諦めて脱出の方法を考えていたら、街中適当にパトカーが走り回って…そう親父とちーちゃんのお父さんが居て…。
「賢悟!」
「正義!」
「「浄化ァ!」」
だんだん鮮明になってきた視界に映ったのは、フルボッコにされたでっけぇパトカーを親父が殴り、浮いた車体をちーちゃんのお父さんが蹴り上げ…何時の間にか浮いた車体の上に移動したちーちゃんのお父さんと下で待機していた親父に、上と下からぶん殴られて消え行くでっけぇパトカー。
「初戦にしては中々だわ」
「まだまだ戦えるぞ!ハハハハハ!」
「勘弁してくれ。俺は案外疲れてんだよ」
二人してタバコを取り出し一服し始めた。
一仕事終えた空気を醸し出す二人。
……状況が分かってねぇけど、一番分かんねぇのは親父とちーちゃんのお父さんの服装なんだが。
ちーちゃんのお父さんは、フリフリしたピンクにフリフリを足してなんか、フリフリしてて…
親父は親父で、ピチッってした服にフリフリつけて…
昔、ちーちゃんが好きだったアニメで女の子達があんな服で戦ってた気がする。
それをなんで…あぁ、うん。きっと俺はまだ意識朦朧としてて夢なり幻覚なり見てるんだろうな。
俺は、ハッキリとした意識の中で考え、ゆっくりと目を閉じ湧き上がる吐き気を抑え夢から覚めろと願い続けた。