脆弱迷子と黒染め「私」
青白い顔した 迷子の娘
置いていかないでと 泣いている
長い 長い 道の途中
ちょうど荒野のあたりかな
今じゃ ずっと ずっと
遠く離したつもりの 遥か後ろ
そんなに そんなに
言うならば
もっと腹から 叫んでみなさい
千切れ 途切れの 傷だらけ
名残り 残る 短髪を
鬱陶しく搔き上げてみせる
前向く私には もう
届かないよ
かすれた声の 迷子の娘
水分抜けきった 金の長髪
滅茶苦茶に振り乱して 泣いている
今じゃ ずっと ずっと
遠くから
見下ろすみたいに 顎突き上げる
靡く 黒髪
冷たい色?
いいえ これは
強さの証
時間をかけて 取り戻したの
アンタを切り離したときからね
脆弱 貧弱
弱さの限り
まだそんな目をしてる
恨みたいなら 恨むがいい
悲劇のヒロイン気取り 飽きないの?
こんな娘 知らない
もう 止まらない
振り返らない 戻らない
そんな風に 目を背ける私を
アンタは ホラ
もう諦めた
見るからに優しそうな
隣を見て 叫んでる
私を忘れないでと 泣いている
長髪の過去 乾いた迷子
往生際が悪いわ
だから嫌いよ
なのに ホラ
やっぱりね
黒髪翻し 前向く私の
すぐ傍から
一つ 聞こえてしまったんだ
ーー忘れないよーー
ーーだって初めに知ったのは君なんだーー
……そんなのやめて
苛立ち 不満
見上げて 驚く
ねぇ 何故
私を見るの?
この手をとって 微笑むの?
一人で行くと言ったじゃない
涙 絶えない
荒野の迷子
ちょっとばかり 笑ってる
救われたみたいに 頬染めて
そんな顔すんな
腹立たしい
腰までの長髪を切り捨てた
アンタを捨てて 真っ黒に染めた
鎧の黒服 纏ってみせた
強くなった
なったつもりの
単なる “つもり” でしかない私に
ーーねぇ 彼女も君だよーー
優しい声が振り向かせる度
喉が詰まるんだ
情けなくなるんだ
赤い目をした 迷子の娘
脆弱 貧弱
弱さの限り
こんな娘 知らない
知らないよ
嘘
本当は 知ってるよ
だってまだ 繋がってる
波長残した 今の私
見つめるの怖い 臆病者
救いの色付きが 今度はここへ
今に浮かんでしまうの 黒の私に
ーー忘れないであげてーー
観念して 願うの
置き去りにした
迷子は “かつて”
向き合う勇気は
まだ足りないけれど
ーー連れて行ってーー
ーー連れて来てーー
優しさに願う 頼ってしまう
独りじゃ 何も出来ないの
乾いた彼女と 黒染めの私
どっちも 迷い子
どっちも
どっちも……
ねぇ いつか
一つになったなら
ねぇ そのときは一つだけ
もう一つだけ 願ってもいい?
ーー私をーー
私を
愛して下さい
この手をとって 柔らかく
どんな色でも 長さでも
変わらず 隣に
居てくれるなら
そのとき 迷子は里を得る
きっと 笑顔で 言い切れる
私の居場所はここだって
自信得たところ 見てくれますか?
混じり合った 二色
新しい私を
あなたに