2ループ目 ― 異世界に突入! ―
ステータスって知ってる?
あ、僕が言っているのはRPGとかにあるあれのことだよ。
キャラクターの名前とかパラメーターとかスキルとかが分るヤツ。
まあ、その表示みてさ、そのキャラクターの役割を判断するよね。
攻撃重視の脳筋タイプ、スキル多様のトリッキータイプ、メイン盾と言った具合に。
ステータスっていうのは、そのキャラの特徴を現すひとつの形だと思うんだよね。
あくまでゲームの中での話だよ。ゲームの中の話。
僕はベットの上で頭を抱える。
本当にとんでもない世界に来てしまった。
○
異世界の裏路地で意識を覚醒させたんだよ、僕は。周りに人がいなかった。
だから心落ち着かせるために深呼吸した後、足元にあった靴はいて、石で舗装されたメイン道路を隠れながら覗き見たんだよ。人々が着ている服やレンガ造りの建物は中世ヨーロッパの町並みを連想させたね。
話が通じそうな人を探そうとしたら、とあるオッサンに突然後ろから声をかけられたんだ。
渋いイケボイスで。
「あらん、ボウヤ。どの世界から召喚されたの?」
「!?」
渋いイケボイスで。(大事なことなので二回言いました)
おいいいい!完全に口調と声が合ってないよ!
驚いて振り返ったら余計に混乱したけど。
眼力はすさまじくて直視できないレベルだったし、額から目にかけて古傷があったし、丈夫そうな革の服に包まれた体はムッキムキでいかにも熟練の冒険者といった出で立ちだったから。
あ、中年ぐらいのオッサンだよ。
しかも僕のことをじっと見て「あら次元を超えてきたの?災難だったわね」なんて言うんだからさらに驚いたよ。
次元超えてきたのって分るものなの?ってさ。
RPG、漫画、小説でファンタジーの知識はそこそこあったから僕なりに推理してさ、なんか魔力の質(?)とかで分るのかなと漠然と結論付けて納得させたんだけど。
まあ、この80分ぐらい後にどうやって知ったかは分ったんだけどね。
始めはもちろん僕も警戒したんだけど、わざわざ声かけてくれたり、安い宿屋教えてくれたし親切な人だったよ。今から思えば。
その後なんやかんやあってこの世界の人間であることを登録しに役所に連れて行ってもらったんだ。
さっさと召喚師見つけて地球に帰るつもりだったんだけど、なんでもこの世界ではその登録をしないとお金が使えないそうで。
それはいろいろとマズイということでとりあえず登録しときました。
この次元や世界の常識を役所の人から説明してもらったよ。
ちなみに何も知らないままセフィラムに召喚、契約解除されて路頭に迷っている人が結構いるらしくて、説明専用窓口があったんだ。おい、召喚師。最後まで面倒見ろよ。
僕みたいに次元超えることはめったに無いみたいだけど。
この次元には様々な世界があってその世界に適した生物がいるだの、人を襲う存在である魔物や魔族がいるだの、人間には魔術師や召喚師や勇者、魔族には魔王といった職業があるだの。
あとはセフィラムの地理とか暮らしとか金融システムとか。
まあ、その他もろもろ。
頑張ってききました。
その後、役所の人は一通り話し終わると、最後に質問はないかときいてくれたんだよ。
こういった配慮って嬉しいよね。
だから僕は「莫大な魔力を持った強い召喚師ってこの都市にいますか」ってきいたんだ。
どうしてこの都市だと予想したかというと、ここは
門外に凶悪なモンスター出現率№1、それによって強い人間住み込み率№1だって役所の人が教えてくれたからだよ。
僕、ちゃんと話しきいているでしょ。
元凶の召喚師がここにいてくれたら探すの楽だなーメイドさんグッジョブ!とか思ってたよ。
まあ、そんなに旨いこといかなかったけどね。
なんか魔術師と召喚師が昔にいろいろあったみたいですっごい仲が悪いんだって。
この都市には魔術師しかいないらしい。
で、だ。
ここからが問題だ。問題なんだ。
いやここまでも問題あったけど。
役所の人が「ああ、最後にあなたにとっては大事なことを伝えますよ」と言ってきたんだ。
召喚師がここにいないことを知ってそのことばかり考えてたから、あわてて姿勢を正して聴く姿勢をとったよ。
「大事なことですか」
「はい、おそらく」
緊張して手に力が入る。
役所の人が衝撃の事実を伝えた。
「この次元にはステータスというものがあります」
「すてーたす?」
すてーたす。
「やっぱりあなたの次元にはありませんでしたか」
詳しく話しをきいてみると、ステータスというのはあの「ステータス」のことだ。RPGとかにでてくるやつ。
この次元ではステータスが生物一固体ずつに割り振られていて、その値や職業を見ながら自分に合った生活をしている。
それが一般的で当たり前で常識のことらしい。
ええええええええ!?なにそれ!?
「…………。僕にもあるんですか」
「ええ、もちろん。見てみます?」
もちろん見ました。やり方教えてもらって。
自分自身に心の中で【洞観】って唱えるらしい。
そんなこと言われてみない人いないでしょ!気になるよね!
いや、実はちょっとだけワクワクしたんだよ。
自分の能力が数値化されてるってさ、ほら、分りやすくて楽しそうじゃない?と思ってた過去の自分を殴りたい。
で、唱えてみました。【洞観】! → ……。
え、本当に?もう一度。【洞観】! → 再起不能
よく考えてみると、いや考えなくても僕ってゴブリン(仮)にすら殺されましたから。夢かもしれないけど。
もうこの世界で生きていく自信ないです。
早急に元凶の召喚師を見つけて地球に帰してもらおうか。
どこにいるのか分らないけど。
僕がショックを受けていると役所の人が励ましながらステータスの詳細を説明してくれたんだ。余計に落ち込んだけど。
で、一通りの説明聞いて外にフラフラしながら出るとあのオネエ口調の厳ついオッサンが待っていてくれたようで。
僕、役所で軽く2時間くらいは話し込んでたと思うんだよ。
本当に優しいオッサンだね。
そのまま僕の始めにもらったお金で泊まれる範囲の宿屋に案内してもらってそこでオッサンと別れたんだ。
いつまでも頼ってばっかりじゃ駄目だと思ってね。
実は召喚師探すの協力してもらえばよかったって、ちょっと後悔してる。
やっぱり冷静に判断を下すべきだったよ。
宿屋の部屋に入ってベットにダイブ!
からの頭抱えて回想 ← 今ココ!!!
さて、これから僕はどうするべきなのだろうか。
次話でステータスについて詳しくやっていきます