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異世界生活4日目が来ない件  作者: リーハ 510
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1ループ目 ― vs ゴブリン(仮) ―

人生、何が起こるかわからないわ。


3年前、僕が17歳のころに事故で他界した母さんがいつも言っていた。

そうだね、母さん。僕もそう思うよ。


いままでたくさんの人の話の聞き役になってきたから余計に感じるんだ。僕ってあせらず冷静に話きいてくれるから相談しやすいんだって。


うん、冷静だから。



フィギュアが目の前で売り切れたとか、宝くじ10万円当たったとか、親の会社が倒産したとか、トラックに轢かれそうになったとか、知り合いが行方不明になったとか。好きな男性を親友に盗られて殴り合いの喧嘩になったとかとか、勢いあまって骨折させてしまったとか。


さすがにそのこと相談されたときは本当に困ったな。

とりあえず病院に連れて行くことを勧めたけどさ。



とにかく、人が生きてるうちは何が起こっても不思議じゃない。




だから。




僕が自分の家のソファでジャージに着替えてテレビ見てたら瞬きしている間に森にいたり、よく分らずうろうろしていたら体が緑色で棍棒もった謎の生物に見つかったり、その生物に全力で追いかけられるなんてことも、あるあ―――



「いや、無いよ」



美神東哉みかみとうや20歳、現在進行形で死の追いかけっこ中です。









さすがの普段冷静だと言われる僕でも取り乱すよね、この状況。


なになにいきなりどうなってんの?

あれゴブリンだよね。

どっからどう見ても世間一般でゴブリンって呼ばれるモンスターだよね。



後ろをチラリと見てみると、大人の腰丈ぐらいのモンスターが棍棒振り回しながら決して遅いとは言えない速度で僕のことを追いかけていた。


明確な殺意を持って。



僕より背が高いお姉さんがラブレターと熱意を持って追いかけてくれたら嬉しかったんだけどな。

ボン・キュ・ボンのワガママボディーさんでお願いします。いや、ロリっ子でもいいな。とにかくかわいい女が良かったです。



ところで、女どころか人間ですらない殺意の波動に目覚めていそうな不細工なゴブリン(仮)さん、なんで現実にいるんですかね。

というかここ地球なんですかね、なんか違う気がしますね、モンスターいますしね。


なんですか罰ゲームですかドッキリですか呪いですか。呪い?

あ、今僕の中で顔面殴ってしまった田中君の呪い説が浮上。


ちなみに宝くじ10万円当てた張本人だけど、殴った理由はそれじゃないから。

基本冷静な僕が、たかがそんなことで暴力を振るうわけ無いよ。

田中君が初対面で「お前本当に男か?」とか言いながら胸を触ろうとしたからだよ。


糸目で女顔でサラサラヘアーで身長もそんなに高くないけど僕は男だから。少しコンプレックスなんだからそういうのやめてほしいよね。

僕は基本冷静だけど、つい手が出ちゃったんだ。

そういえば僕が本当に女だったらどうするつもりだったんだアイツ。



……そろそろ現実逃避を止めようか。

僕は基本冷静な人間だからね。

あと足疲れてきた。



いきなり見知らぬ土地へ移動した挙句モンスターに襲われる意味不明な状況であったが、落ち着いて対処しないと無駄に体力を使って殺されそうである。

大体、映画でも漫画でもいきなり怪物に教われるような状況では冷静になれない者が死ぬことになるのだ。



僕はぐるりと後ろに振り返り、まだゴブリン(仮)に見つかっていない時に拾った少し太めの持ちやすい木の棒を構えた。




「かかってきなよ」




心臓はバクバク鳴って痛い。息は上がってまともに空気を吸う事ができない。

ただ単に走りすぎて疲れただけなのか、それとも未知の生物との命のやり取りに緊張しているのかは自分でもよく分らないが。



逃げまわっていたらその内誰か「人間」に気づいてもらえることを期待していたがそうもいかないらしい。

そもそも人間と呼ばれる存在が果たしているのかどうかも怪しい。




ゴブリン(仮)がまっすぐ走ってくる。僕は覚悟を決めてじっと前を見据えた。



僕との距離1メートル、ヤツは飛び上がりながら棍棒を振り上げる。



来る!



その強力な一撃を僕は華麗に避け……ることは出来きなかった。

出来なかった。

回避失敗。棍棒が左足に直撃する。メシャリと音を立て地面が抉れた。

僕の左足ごと。



あれれ?




「~~~~~~っ!」



言葉にならない叫び声。たぶん自分から出てると思う。

痛ったい、痛い、痛い。

まあ、運動なんて大学までの往復ぐらいしかしてないからね。

痛い。

毎日平和に、授業しか受けてなかったしね。

痛い痛い。

急に殺意丸出しモンスターの攻撃なんて対処できるはず無いじゃないか、ねえ?ああ痛い。



緑色の生物が棍棒を思いっきり振り上げている様子が涙でぼやけた視界の中で見えた。



―――これ死ぬな。



……僕は基本冷静だからね。最期は落ち着いて逝こうと思うんだ。

冷静でいることはとても大切だよ。

たとえ理不尽な暴力で殺されそうになってもね。



ところでさ、結局、僕が突然来ることになったココは、僕の死に場所となるだろうココは、いったいドコだったんだろうね。




とっても気になるんだけどなぁ。






僕の目の前に木製の鈍器。









1ループ目終了

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