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第96話:厄神様はかく気付けり

どうもこんにちは。

現実時間と作品時間の区別がつかなくなってきたガラスの靴です。


今は5月、今は5月……!


というわけでもう5月です。

『新生活に慣れない』と言い訳を重ね続けて早1ヶ月です。

今後も鳴れることはないかもしれません。

したがって今後も更新は不定期だと思われます。


……あの、ほんと、すいません。


ではでは、100話まで秒読み段階となってきた第96話です。

「う〜ん……」

 試験中。

 いきなり代打となった小夜が数学のテストで満点を取れるとはとても思えないので、ここは是非とも助言をしたい。

 さらに今の俺は幽霊であり、死神と碧海以外の答案は全て思いのままに見ることができる。

 ここは後々の平和な夏休みのためにも、心苦しいがやるしかない、そう思った矢先、

「直樹さん」

「……はい」

「ズルはダメですよ?」

「…………はい」

 小夜さん、それはあんまりじゃないでしょうか。

 不安で不安でどうしようもない俺をよそに、小夜は真剣に問題を解いていた。

 

 

「ふぅ〜、終わった〜!」

「あんな問題でなんでそんな疲れるのよ」

「あはは……」

 どうやら俺が小夜と入れ替わった状況においてもこのグループで行動するというのは変わっていないらしい。

「楽しそうだな」

「あ、凛さん」

 そして少し驚いたのが、碧海もそこに加わっていることだった。普段俺が藤阪達と話す時は近寄ってこなかったんだがな。

「凛、あんたは今のどうだったわけ?」

「……やはり、数学というものは苦手だ……」

「そうすると、今ここにいる人で数学ができるのは藤阪さんだけなんですね」

「数学しか出来ない、の間違い――」

「黙りなさい」

 それにしても仲良さげに話しているもんだ。小夜が普通の人間だったらこんな感じだったんだろうな。

 ……それに比べて。

「どうした。少し暗いぞ」

「いや、暇なだけだ」

「……そうか」

 別に無視されている訳ではない。

 藤阪達には元から見えないのだし、小夜や碧海にしても藤阪や桜乃の目の前で話す訳にはいかないだろう。俺も実際そうだった。

 しかしまあ、誰も関わらないというのも、それはそれで暇なもんだった。

「……ところで、小夜は特に変わったことはないのか」

「え? ええ、まあ、その、ないといえばないです……」

 碧海はそこでチラリと俺を見ると、

「無理はするな。何かあればすぐに相談に乗る」

 そう言い残して自分の席に戻っていってしまった。

「……そ、そうでした! まだ2時間目があるんでした!」

「あ〜、ダル〜……」

「もう帰りたいわね」

 ……お前ら、もう少し真剣に高校生を勤めろ。

 

 

「で、結局……」

「それじゃ小夜、また明日ね」

「んじゃな〜!」

「はい、さよならー!」

 ……全力で青春を謳歌してるし。

「これが俺達にとっての日常だが狭山直樹、感想は」

「小夜、はしゃぎすぎ」

「え、えぇ!?」

 そう言えば小夜の顔見知りは他にもいるな。一応話だけでも訊いてみるか。

 

 

「――それでここへ来たという訳ですか」

「ナオキがいるの?」

 試験中だというのにこの1年コンビはオカ研でくつろいでいらっしゃる。知り合いでまともに勉強をする奴は碧海と松崎くらいではないだろうか。

――ガチャ。

「カルンシュタインさん、お茶の用意が出来たわよ――って……」

「あ、部長さん」

「こんなところに何の用だ」

「……な、な、何で貴女たちがここにいるのよ!?」

 松崎、お前もか。

 

 

「それで、どうして部長さんはここに?」

「わ、私はただっ、市原さんに勉強を教えて欲しいと頼まれたからっ……」

「私は何も頼んでいませんよ。お願いしたのはネーベルさんです」

「やっぱり、迷惑だったの?」

「……っ!! そ、そんなことありませんことよっ!!」

 口調が変だぞ松崎。あと市原、お前は確信犯だろ。

「貴女も、遊んでばかりいないで少しは勉強したらどうなのかしら?」

「あ、はい、すみません」

 そういえばこの世界では小夜は吹奏楽部に入っているのだろうか?

「まったく……。貴女のような真面目な人が藤阪さんたちに悪い影響を受けていくのを見ていると、どうしても黙っていられないのよ」

 俺に色々と言う時もこんな心情なのだろうか。

「で、でも、藤阪さんたちだって悪い人じゃありません。……それは部長さんもわかっているんじゃないでしょうか?」

「……どうかしらね……」

 はて、松崎と藤阪は犬猿の仲だと思っていたのだが。なんだ今の反応は?

「時に松崎静流。俺達の分の紅茶はまだか」

「紅茶が飲みたければ駅前の喫茶店にでも行ってなさい」

 空気を読めバカ。

 

 

 松崎の至福の時……もとい、市原とネーベルの勉強をあまり邪魔する訳にもいかず、結局何の手掛かりも得られないまま俺達は学校をあとにした。

「どうしましょう……?」

「神楽の仕業でもなければ……残るはアレだけだよな」

「短冊か」

 3人同じ結論に達し、俺達が家へ帰ると、縄でふん縛られた父さんが出迎えた。

「……どっ、どうしたんですかお父さん!?」

「…………」

 リビングに入ると、玉藻が息を荒くして物陰に隠れていた。……納得。

「ひとまず父君は放置しておけ。まずは短冊を調べるのが先だ」

 死神の言葉に従って短冊が吊されている笹に向かう。短冊は全部で7枚。……7枚? 多くないか?

「1人で複数の短冊を吊した奴がいるからな」

 そうだったな。まずそいつの分から見てみるか。

「えーと、玉藻は……『ぴーえすすりーが欲しい』……って、おい!?」

「うむ! 今日智和の奴がくれたぞ! ふぁいなるくえすととかいうそふとも一緒にもらった」

 よりによってレベルアップ制のRPGかよ。

「駄目だ駄目だぁ! お前がゲームなんてやりだしたら絶対に社会復帰できなくなる!」

「な、なんじゃと!? せっかく始めたばかりじゃというのにやめろと言うのか!?」

「ま、まあまあ直樹さん。玉藻さんも、ゲームは1日1時間までです」

「うぬぅ……」

 どうでもいいが、その誓いを誠実に守り抜いた奴はいるのだろうか。

「次だ。『ハーレムをこの手に』」

 とりあえず父さんの顔に濡れタオルをかけておいた。

「……!? 〜〜〜〜っ!!」

「あ、あの……、ものすごく苦しそうなんですが……」

「嫌な夢でも見てるんだろ。それよりその願い、叶ってるのか?」

 どう考えてもその妄想が実現しているようには見えない。

「む、裏に何か書いてあるな」

『俺がそうなりたいくらいだ。よって却下 by彦星』

「…………」

「む? なんと書いてあるのじゃ?」

「た、玉藻さんは見ちゃダメです!」

 彦星の人間性が垣間見えた。とりあえず来年から七夕の願い事をするのは止めようと思った。

「次!」

「これは……俺のだな。『世界平和』」

 鳥肌が立ったのは俺だけではない筈だ。

「なんだその失礼な顔は。俺とて平和を望む元人間だぞ」

「はっきり言おう。似合わん」

 これも裏に何か書いてあった。

『ごめんなさい。イケメンのお願いは優先的に叶えてるんだけど、ちょっと難し過ぎるわ。もうちょっと叶えやすいお願いにしてね by織姫』

 この2人はきっと1年に1回しか会わないから破局しないんだなと思った。七夕の風習を消し去った方がいいような気がした。

「残念だ」

「そうですね……」

 突っ込むべきなのだろうか。

「次に行くぞ。…………」

「…………?」

 それきり何も言わない死神を不思議に思って近寄ると、目の前に短冊を突き出された。

『皆さんとお話ししてみたいです』

「……これは……」

 俺が昨日小夜に頼まれながら書いたのは違う。探してみるとそれも吊されていた。

「……ごめんなさい。夜中にこっそり書いてしまいました……」

「……だったら、最初から言えよな……」

「ご、ごめんなさい。……あ、あの、怒ってますか……?」

 今日1日過ごして、少しは分かった。

 話せる人間が限られるということの、意味。

「そうだな」

「あ……」

 そういう意味では、今日の事件は決して災難ではなかったのだろう。

「どうせなら、俺も幽霊じゃなければ一緒に学校行けたな」

「……え……?」

「確かにそうだな」

「うむ、そのほうが楽しそうじゃの」

 七夕の奇跡なんてのも、悪くない。

「……ありがとう、ございます……!」

 1年に1度くらい、な。

 

 

「それにしても、本当にどうして俺が幽霊になったんだ?」

「お前の短冊はないのか」

「あったぞ。『平穏な生活』……お主、もうちょっとまともなものはなかったのか?」

「あはは……あれ? 裏に何か書いてありますね」

『なに贅沢言ってるのよあなたは by織姫』

『幽霊にでもなって反省してろ by彦星』

「……やっぱりお前らかぁぁぁぁぁ!!」

 やっぱりこの風習なくしてもいいんじゃないか。



響「ちなみに、もうひとつの短冊には何と書いたのだ」

小「えっと、『皆さんが仲良くできますように』と……」

直「……それか?」

葵「何よ」

凛「呼んだか」



というわけでほのぼのさせようとして失敗するというお馴染みのパターンでしたが、いかがでしたでしょうか?


そろそろ試験ネタも飽きてきたので、次回は土曜をとばして日曜の話でもしようかと思います。


ではでは、また次回〜!

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厄神様とガラスの靴
こっそり開設。
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