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第94話:厄神様はかく遺伝し

どうもこんにちは、ガラスの靴です。


気持ちの良い深夜です。

嘘です。今日もやっと落ち着いたのが只今0時40分。

相変わらずのてんてこまいです。いい加減慣れろ。


ではどうぞ〜。


「直樹さーん、お電話でーす!」

「悪い、今ちょっと手が離せないんだー! 誰か代わりに出てくれー!」

 ウチの学校では試験が5日間ある代わりに全て午前中に終わる。いくら遊びで無駄な時間を過ごしたと言っても家に着くのは精々昼過ぎであり、どうしたって夕飯まで時間がある。

 その時間をどう使うかでおそらく試験の出来が分かれるのだろうが、流石に2日連続で勉強をサボるのは後が怖いので世界史の年号でも覚えることにした。

 そして今は何をしているかというと、年号を語呂で覚えられるようにした本を昔買った記憶があり、どこにしまったかと本棚をあさっているところである。

「はい、もしもし、狭山です……え? あ、はい、そうですけど……」

 小夜が出たのか。できれば死神に出て欲しかった。

「え? いえ、わたしはその……あ、い、いまかわりますっ」

 なんだなんだ。

「直樹さーん! お電話でーす!」

「どこからだー!?」

「お、お父さんからですー!!」

 ……なんてことだ。

 

 

「……もしもし」

『私だ。今のお嬢さんは誰だったんだ』

 アレは声が高い男だ。

『また訳の分からないことを。お前の悪い癖だぞ』

「うるさい。で、用件はなんだ? 母さんならいないぞ」

『まったく、親の心配をなんだと……。まあいい、今からそっちに向かう。晩飯の支度を頼むぞ』

「……は?」

『じゃあな』

――プツッ! ツー、ツー、ツー……。

 ……切れた。

「あの、直樹さん……?」

「……あ、あのクソ親父め……」

 

 

 で、1時間後。

「今帰ったぞ」

「どちらさまでしょうか」

「それが親に対する態度か」

 頼んでもいないのに海外からはるばる帰ってきた父親が玄関に立っていた。

「そちらの方は友達か?」

「クラスメートで居候だ」

「三途川黄泉だ。いつも狭山直樹には世話になっている」

「……今、居候とか聞こえたような気がしたんだが」

 悪いか。空き部屋の有効活用だ。

「……まあいい。こんな息子だが、よろしく頼むよ」

 そう言うと父さんはリビングへ向かっていった。

「お前によく似ているな。いや、順序としてはお前がよく似ているのか」

「それは何だ? 殴っていいという意思表示か?」

 

 

 さて、我が父親であるところの狭山智和は、仕事が出来るのか何なのか知らないが数々の海外出張を重ねている。

 そんな父親がたまに帰国したのだから、息子としては喜ぶべきところなのだろうが、純粋にそうできない事情がある。

「な、なんじゃお主はーーー!?」

 はい、という訳で理由その1。 

 

「さて……直樹」

「なんだ」

「これは私としては俄かに信じられない出来事なのだが」

「勿体付けてないで素直に言ったらどうだ」

「このお嬢さんはどこからさらってきた」

 殴り倒した。

「私は海外でお前のことを心配し続けてきた」

 げ、効いてない。

「そしてやっと休みをとって帰ってきたらこの状況はなんだ!?」

「知るか!!」

「お前だけでは不公平だろう! 私にも紹介しろ!!」

「何の話をしてるんだ貴様はぁぁ!!」

 父さんは俺の話を無視して玉藻に近付くと、おもむろに手をとった。

「あぁ、なんと美しい。どことなく神秘性を感じさせるその雰囲気といい愛らしい耳や尻尾といい、まさに絶世の美女と呼ぶにふさわしい!」

「……っ!! は、はなせぇーーー!!」

 おーおー、毛が逆立ってる。

「なんじゃお主は!? わらわにさわるなぁ!!」

「むっ、そこまで私を拒むとは……。だが、嫌よ嫌よも好きの内という諺が」

「ふにゃあああああああ!!」

「……お前によく似ている。いや、順序としてはお前がよく似ているのか」

「それはなんだ? 殴ってくれという意思表示か?」

「た、玉藻さん!? 今の悲鳴は――」

「……むっ!」

 一応安全を考慮して隔離していた小夜が玉藻の悲鳴を聞いて駆け付けた。父さんもまさか霊が見えるのだろうか。

「……おかしいな、誰もいない……」

 おかしいのはあんただ。まずは玉藻から離れろ。

「……いや」

「あのな父さん、いい加減にしないと殴る――」

「女の子の匂いがする」

 ……は?

「そこだぁ!」

「きっ、きゃあーーー!?」

「どこにいるのかねマイスイートエンジェル! 隠れても無駄だよ!」

「貴様は一辺死んでこいーーー!!」

 

 

「いやすまない、息子との久し振りの対面に少々我を忘れていたようだ」

「我を忘れたのは違う要因だけどな」

 俺と死神、玉藻の3人がかりでボコボコにしたところようやく落ち着き、今はリビングで向かい合って話をしている。

「ふー……!!」

 ちなみに玉藻はさっきからずっとドアの向こうで警戒しっぱなしだ。狐はいつからネコ科になった。

「でも、お母さんの性格を考えると、仲が良いというのはちょっと想像がつかないんですが……?」

「逆だ逆。母さんがいなかったらとっくに家庭崩壊してる」

「おいおい、玉藻さん、そんな場所にいては話もできないよ」

「ええいよるなー!」

 父さんは俺が小夜と会話しているのなんて気にも留めないくらいの勢いで玉藻に話しかけようとしていた。

「狭山直樹」

「ん?」

 死神に呼ばれたので見てみると、ある方向を指差している。

「玄関に置かれた荷物は移動しなくともいいのか」

「荷物……?」

 そんなもん父さんにやらせろと思いながら玄関へ向かうと、そこには笹があった。

「……って、は? 笹?」

「ん? ああ、それか」

 それか、じゃない。ウチの家は粗大ゴミの処分場じゃないんだぞ。

「せっかく持ってきてやったというのに随分だな。今日が何の日か忘れたのか?」

 ということはやっぱり……

「七夕ですかっ! わたしもやってみたいです!」

「お前は一々心奪われ過ぎなんだよ」

 小夜が物珍しげに笹に触れる。

「……? 別に私は心奪われている訳ではないぞ」

「あ、いや、何でもない」

 いかんいかん、ついいつもの調子で話し掛けてしまう。

「……この笹、ただの笹ではないな」

「うむ、そのようじゃの」

 その時、死神と玉藻が何やら厄介なことになりそうな発言をした。そういう話はろくな展開にならんからやめてくれ。

「お、よく気付いたね玉藻さん」

「俺も気付いたのだが」

「玉藻さんの言う通り、これはそんじょそこらの笹ではない! 本番中国から仕入れた幻の笹だ!」

 完全に無視か。

「さらに短冊もついでだからと霊験あらたかな神社から譲り受けたお札を持って来た」

 その時点で何かおかしなものになってるぞ。

「私の仮説が正しければ、これはどんな願いも叶えてくれるものだよ」

 バーン、と効果音でも出しそうな素振りで説明する父さん。

 だがこの人は俺の父親である。当然そんなロマンチックな思考回路は持っていないはずだが。

「さあ玉藻さん、ここに欲しい物を書いてみなさい」

「……?」

 疑惑の眼差しを向けながらも謎のお札を受け取り、そこに何かを書いていく。

「ほれ」

「ふむ……? 『きつねうどん』……?」

 父さんは暫く考えた後、電話機を手にして番号をプッシュし始めた。

「ああもしもし『あぶらげ』さん。大至急きつねうどん5人分を頼む」

「何やってんだあんたはーーー!?」

「ちわーす、あぶらげでーす。ご注文のきつねうどん5杯お届けにあがりましたー」

「早すぎるだろおい!? 何だこれはドッキリか!?」

「落ち着け」

 そしてテーブルに並ぶきつねうどん。

「ほら玉藻さん、願いが叶った」

「おぉー!! お主以外といいやつじゃの!」

 お前の怒りはきつねうどんで鎮まるのか。

「さ、直樹。それに……モミ君」

「黄泉だ」

「お前たちも何か書いてみるといい。なに、こういうのは信じて初めて楽しくなる」

 別に楽しむ必要もないが……ま、いいか。

「小夜。お前はなんて書く?」

「え? えーと……」

 

 

 そんなこんなで各自願い事を書いて(玉藻は2回目の)、その日はお開きとなった。

 そしてこの願い事こそが、あの悪夢のような1日のきっかけとなったのである。

 つくづく思う、しなきゃよかったと。



小「直樹さんのお父さんって、あんな人だったんですね……」

葵「あのエロオヤジ、帰ってきたの!?」

響「あのオッサン、帰ってきたのかよ!?」

凛「……ひ、人の家族を侮辱するのは良くないぞ……」

死「説得力に欠けているが」



というわけでお父様の登場です。

なんとな直樹に似てるような似てないような。

でもある意味では完全に親子。

そんな風に見えたなら幸いです。


若干暴走モードのノリが神楽に近いですが、この作品で唯一の全ボケキャラなので使いやすいですね。

これから暫く家にいる予定なので、よろしくお願いします。


では、次回はいよいよ七夕の魔力が。

お楽しみに〜!


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