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第92話:厄神様はかく追われり

遅くなりました。


が、頑張ったんですよ!?


でもちょっと時間がなかったというかなんというかうにゃうにゃ……


とりあえず、試験中にやることではないというお話です。


 さて、皆さんは7月7日が何の日であるかご存知だろうか。

 そう尋ねてポニーテールの日だとか答える奴は相当な変人であることを自覚した方がいいだろうが、一般的に言えばベガとアルタイルがミルキーウェイを超えて一年ぶりの再会を祝う日である。

 そして17年しか生きていない拙い知識の持ち主であるこの俺にも1つだけ確信を持って言えることがあり、それは、

「ではこれより、七夕にちなんで盛大に鬼ごっこを始めよう!」

「盛大な拍手をお願いします」

 ……七夕はそんな日ではない。

 

 

「あのな神楽、それに市原も、まずなんで試験中にオレらがそんなことしなくちゃいけないのかよくわからないんだが」

「愚問だね響氏! 七夕と言えば鬼ごっこだよ!」

「鬼ごっこと言えば七夕です」

 『と言えば』の正しい使い方をもう一度確認してきて欲しい。

「では満月君! 七夕とは何の日だね!?」

「私とセンパイが愛の逃避行を――」

「違います」

「なんでですかー!? まさにその通りじゃないですかー!」

 キャストも前提も間違っとるわ。

「織姫と彦星、でしょうが」

「大正解だよ葵君! そして彦星は数々の苦難を乗り越え、天の川の向こうの織姫に会いに行く! だがなんとそこに織姫の姿はなかった!」

 そんな話だったか?

「そう、彦星は織姫を探し出して捕まえなければいけないのだ! それも七夕が終わる前に! 1年に1度ではあるが必ず会うことが出来る、その前提条件が覆された状態でね!」

 何故そこで俺を見る。言っておくが思い当たることなんざないぞ。

「そこで! その彦星の行動をなぞらえて何をするか!? 黄泉君!」

「鬼ごっこか」

「はい正解! 分かったかね直樹氏!?」

 分かってたまるか。

 

 

「最初はグー! ジャンケンポイ!」

 まあそんなこんなで。

「なに!? この僕が鬼だというのかね!?」

「うぇ〜、私もですかー?」

「鬼が1人ではスリルに欠けますし、大変でしょうから」

 結局神楽の誘いを受けた俺達はよっぽどの暇人なのだろう。試験中なのに何をやっているんだろうね、おい。

「それじゃオレらは逃げりゃいいんだな! よっしゃ行くぜ!」

「待ってください」

「だそうだ。止まれ」

「くけゃー!?」

 走り出そうとした桜乃の襟を死神が掴んだため、えらくけったいな声を出してその場に崩れ落ちる結果となった。

「君達にはこれをつけてもらう!」

「何よこれ。イヤホン?」

 神楽が人数分取り出したのは、非常に見覚えのある形をしたものだった。

「これは鬼同士、子同士でそれぞれ通信が出来る優れ物さ! しかもそれだけではなく、鬼と子が半径5m以内に近付いた時に警戒音が鳴る仕組みになっている!」

 前回から随分と改良されたな。

「では改めて――スタート!」

 神楽の合図と共に、俺達は一斉に散っていった。

 

 

「んじゃ狭山、オレは右に行くぜ」

「本当になにやってんだろうな? 俺は……」

『そんなこと今更気にしたって無駄でしょ。やるからには勝つのよ』

 まず勝負基準を教えて欲しい。

『神楽さんたちが動き始めたようです。充分注意してください』

『たとえ味方が捕縛されたとしても余計な行動を起こすな。私情は死を意味する』

 大袈裟過ぎないか?

「さて、どこへ逃げようかね……?」

「まずは教室まで行ってみたらどうでしょうか?」

 横から小夜が提案してきた。なんだ、いたのか。

「…………」

――ドンガラガラガッシャァァァァァン!!

「神楽センパイ! 間抜けにも階段を踏み外して階下まで転がり落ちた挙げ句にたまたま置いてあった交換用の壊れた机めがけて盛大にダイブをかましたような音がしましたよ!」

「ウム! 恐らくターゲットの1人だろう! 僕が思うに直樹氏ではないかな!?」

「お、おい!? あ、あんた、大丈夫か!?」

「……軽いジョークだろ……っ」

「知りません!」

 そこまで怒らなくてもいいような気がする、というか過去最高クラスに不幸を浴びたんだが。

 ひとまず小夜の言う通り3‐D方面へ向かった。

「教室には入らないんですか?」

「中に入れば袋のネズミだ。鬼が2人いることを考えると危険過ぎる」

『――ふっふっふ、それは甘いですよ、センパイ?』

 その時、イヤホンから聞こえる筈のない声が流れた。

『ちょっ!? なんであんたの声が聞こえるのよ!? 鬼とそれ以外じゃ周波数が違うんでしょ!?』

『待て。確かに鬼のイヤホンから音声の送受信は出来ない。だが……』

 ……俺達の誰かのものを使えば……!!

『オレは大丈夫だ! とすると――』

――ピコーン。

 イヤホンから電子音が発せられる。

 それは紛れもなく、鬼との接触を意味するものだった。

「まったく、誰に向かって喋っているのやら、ベラベラと目的地を伝えてくれたのはありがたいですねー」

「教室は確かに袋のネズミさ! ならばなぜ廊下が違うと言い切れるのかな!?」

「……捕まってしまいました」

 廊下の中腹、前後の教室の扉が開き、辻と神楽、そして市原が姿を現した。

『あーもう!! あんたら何やってんのよー!?』

『よ、よーし! 今から助けに行くからな!』

『単独行動は危険だ。一度この3人で3階踊り場に落ち合おう』

 今は鬼がどちらもこの場にいる。ならば落ち合う場所だけ告げ、そこから直接話し合っても問題はないということか。

「ここで私たちのどちらかがそこへ向かっても、今度はセンパイがそれを言えばいいわけですからねー。なるほど、流石です」

 だが問題は俺の安全が確保されていないことである。正直言ってこのタイミングで捕まるのは不完全燃焼のようで嫌だ。

「小夜。イヤホンは辻が市原の分を持っているせいで使えない。死神のところへ行って作戦を聞いてきてくれ」

「……わかりました!」

 小夜が神楽の脇を通り抜ける。当人は肩をすぼめただけで何も言わなかった。辻がいるからか?

「さて、それじゃーセンパイをいただくとしますか」

「頂かれてたまるか」

 さてどうしようか。そうは言ってもこの状況は数々の戦いを作戦によって制した軍師でも諦めて投降しそうだ。

「観念したまえ! 君の援軍は間に合わないようだよ!?」

 後ろから神楽の声。反論しようと振り向いた俺は、そのまま言葉を失った。

「どうしたのかな直樹氏!? まさか本当に僕の言う通り諦めた訳ではなかろう!?」

「……ああ、そうだな」

 俺はここでやられる訳にはいかない。

 見せてやるよ、凡人の悪あがきってやつを。



直「遅い」

葵「遅いわね」

響「遅いな」

満「遅いですねー」

凛「そのようだな」



さて、上のを見て「ん?」と思った方はきっと普段から読み飛ばすことなく読んでくれている奇特な方なのでしょう。


まぁ何が違うかというと、名前の書き方を少し変えました。


呼びやすいので辻とか藤とか碧とか書いていたんですが、

「キャラクターを名前で呼ばないのは愛が足りない証拠だ!!」

とどこかから言われたような気がするのでこれを機に少しずつ。


あ、話は次回に続きます。

先に言っておくと特にオチはないので期待しないでください。


ではでは、できる限り近日中に会いましょうー!


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厄神様とガラスの靴
こっそり開設。
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