第80話:厄神様はかく集まり
この度、述べアクセス人数が5万人を突破いたしました。
ここまで読んでくださったみなさまのおかげです!
本当にありがとうございました!
では、第80話をどうぞ!
「ありえん……」
「そうだな……」
放課後、俺達は歩いて帰ると高橋さんを追い返したネーベルに付き合って屋敷まで歩いていた。高橋さん可哀想だな。
「ネーベルさん、高校1年生だったんですね……」
「市原舞と同じ教室に在籍する、な」
ちなみに今ここにいるのは俺と厄病神、ネーベルの他には碧海と死神だけだ。まあ藤阪達を帰すってのには納得いくが。
「お前、全然高校生には見えないぞ」
「うん。今まで行ったことなかったから」
驚きだ。これが噂の不登校というやつだろうか。それにしては全然危機感を感じないが。
「ネーベルさんって、舞さんと同い年だったんですね」
「いや、ネーベルはもう50年は生きているだろう」
「……あれ? でも高校生……」
「何年前から通っていたのだ?」
「えっと……30年くらい」
皆さん、馬鹿です。馬鹿がここにいます。
「お前な、それどう考えてもおかしいだろ。30年間も留年できるか」
「だから、いっつもお母さんが学校の人の記憶とかを消してたの」
母親怖いな。
「それに、怖かったし……」
……こいつはまったく。
「まあ、今回は俺達がいるからな。もし知らない人間が怖いんだったら、俺達ぐらいなら付き合えるぞ」
「……うん」
「そういえば、今日は随分日が暮れるのが遅いですね」
「そのようだな。まだ人格の変化が……」
「……暗いな。まるで狭山直樹の心のように」
「意味が分からない上にやたら腹の立つ比喩はやめろ。でも……」
改めて辺りを見回してみると、空は暗く、夕焼けという雰囲気ではなかった。どうなってるんだ、動作不良か?
「……そうか、今日は新月か」
「新月だとどうなるというのだ」
何か納得したような死神に対して碧海が質問をする。
「私たちは、月に支配されているの。だから、月の光の届かない新月の日は、吸血鬼の力はおやすみ」
どっかの狼じゃないんだから。
「……ということは、満月の日は……?」
「おそらく、小夜の考えている通りだろうな」
……憂鬱だ。
「それじゃ、高橋さんによろしくな。ちゃんと謝っておけよ?」
「……何を?」
……いや、もういい。
「ではまたな。ネーベル」
「さようならー」
「……またな」
「うん、じゃあね」
それぞれ思い思いに挨拶を交わし、屋敷を後にする。今度は碧海の家までだな。
「い、いや。私は別に必要ない」
「いいっていいって。どうせ夕飯の買い物も済ませなきゃいけないし。だよな?」
「はい」
ということで決定。
「……そういえば以前小耳に挟んだのだが……」
「どうした死神、改まって」
「弓道部の選抜大会が明日開かれるらしいな」
あ。
「そういえばそうでしたね。碧海さん、頑張ってください!」
「あ、ああ……」
「どうした。なんか歯切れが悪いが」
「いや、自分の練習が果たして大会に相応しいレベルに発展できているかと」
碧海なら問題はないだろう。
「そこまで心配ならば、自宅の弓道場を使えばいいだろう。確か存在したはずだ」
「そういえば道場の隅の方にあったな……って、あれ屋外だろ。夜間練習には不向きだ」
「そうだな。練習するとしよう」
人の話聞いてた?
「凛さん、無理はよくありませんよ? 前の日なんですから、しっかり体を休めるのも大切です」
「……そうだな、無理はしないようにしよう」
「頑張れよ。俺も明日、起きれれば応援に行くからさ」
「こ、来なくとも良い! 大丈夫だ!」
気になるんだよ。どうせ休日だ。
とまあ、こんな話をしている間に碧海の家に辿り着き、この話はひとまずここで終わったわけなのだが……。
思えばこの時、俺がもう少し碧海の性格を考えていれば、あのような事態にはならなかったのだろう。
次の日。
「直樹さん、朝です……って、もう着替えまで済ませちゃってますね……」
「……お前な、万が一俺が着替え中だったらどうするつもりだったんだ」
「え? ……えぇ!?」
いくらなんでもノックぐらいしろ。
「すみません……。それで、今日は随分早いんですね」
「そりゃもちろん、碧海の晴れ舞台だからな」
「ふふっ、直樹さんらしいですね」
どういう意味だ。
「…………」
「どうした、そんな顔をして」
リビングに降りると、死神がいた。
いやまあ、そこまではいいんだが。
「まったくね。そんな景気悪い顔してると、幸せだって逃げるわよ」
「さすがに朝から自転車の後ろに乗っかってた人は余裕そうっすねぇ……」
「僕が昨日連絡しておいたのさ! まあ前日まで予定を立てていなかった人しか集められなかったけどね!」
「神楽さんもたまにはいいことをしますが、後半が余計ですね」
藤阪と桜乃と神楽と市原がいた。何故?
「最初は駅前に集合ということにしようと思ったのだが、駅前は弓道部の集合場所にもなっているらしい。応援する側として同じ場所で集合というのもどうかと思ってな」
俺が訊きたいのはそういうことではないんだが。
「さ、それじゃ行くわよ! あ、直樹。自転車よろしくね」
鬼だ。
「そういえば玉藻は?」
「行きたくないって言ってたんですけど、今はわたしの服の中に……」
「どうしてあんな退魔士の応援なぞに行かねばならぬのじゃ……。今回は小夜がいうから特別じゃぞ……」
説得されていやいやスモール化する姿が目に浮かぶな。試合中に叫んだりはするなよ。
で、駅。
「結局かぶってんじゃねーかおい!?」
「誤算だったな。全員がああも早く集合できるとは思わなかった」
「家を出る前に気付け!!」
「一番の誤算は君がああも早く起きてきたことだよ!」
「俺のせいか!? 俺のせいなのかこの状況は!?」
「ま、まあせっかく一緒になったのだから、このまま会場まで一緒に行けばいいではないか」
弓道部プラス碧海の面々と見事に合流した俺達は微妙に気まずい雰囲気を漂わせながら数駅先にある試合会場へ行くため電車へと乗り込んだ。
「……なあ、碧海」
「……どうした狭山。何か変なところでもあるか?」
「いや……」
電車に乗り込んでから妙に碧海の様子がおかしい気がしたが、受け答えは普通だったし、気のせいか?
「……というかお前は、なんで俺の服を掴んでるわけ?」
「い、いえその、なんというかつかんでないとこのまま飛ばされちゃいそうな気がして……」
「そ、そうしたらわらわも大変なことになるではないかー!」
分からなくもない。物に触れないんだから、下手したら慣性の法則のまま列車外に放り出されるかもしれないな。そもそも幽霊に感性の法則が適応されるかどうかは知らんが。
「それにしても弓道の試合ってどうやるのかしら? 見たことないからルールもわかんないのよね」
「……的の部分に人間を貼り付け、いかにその人に当てずかつ近くに射撃できるかを競うそうです」
「…………」
「……冗談です」
当たり前だ市原。
「やっぱ弓道といえば袴だよなー! そこんとこどうよリュウ!?」
「激しく同感だね! あのフォルムにはたまらないものがあるよ!」
「古くから弓道あるいは弓術は霊的・呪術的な要素を含んでいるからな。その神秘性があの衣装には今も内包されているのであろう」
あの3人の周りには誰ひとり乗客が立たなかったのは言うまでもない。
厄「ついに5万人です! ありがとうございました!」
直「2万と3万と4万はどうした」
厄「……い、いろいろありまして……」
死「要は気付いたら突破していて言うタイミングを逃し、結局礼の1つも言わなかったと」
厄「……ま、まあ……」
藤「最低ね」
桜「誠意が感じられねーな」
厄「……ご、ごめんなさい……」
いやほんとにごめんなさい。
まあ過ぎたことは水に流していただけると助かります。
もちろん嬉しくて嬉しくて思わず踊りだそうと(誇張)立ち上がったら腕を机に強打|(これは実話)してしまったくらいなんですが、タイミング的に遅すぎたのであえて発表はしていませんでした。
改めて、2万&3万&4万突破ありがとうございます。
これからもよろしくお願いします!
そして、数多くの方の期待を裏切ったと思われる前回からの顛末。
いやもう、本当にすみません……。
んでもって次回は弓道の大会のお話です。
馴染みのないカテゴリにつき調べたりして更新が大いに遅れそうな予感。
……あ、あの、マジですいません……。
なんか謝ってばかりですが、見捨てず読んでいただけるとありがたいです……。
では、次回をお楽しみに〜……