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第78話:厄神様はかく紹介し

なんだか前回くらいに書いたまえがきがよっぽど見ていて痛々しかったのか、たくさんの励ましのメッセージを頂きました。


ひとつひとつが心温まるものばかりで読んでいて笑顔になれました。

この場を借りて改めてお礼申し上げます。本当にありがとうございました。

でもなんだか変に心配をかけてしまったようでちょっと罪悪感が……。


まあ何はともあれ、既に続くことが確定している中編をどうぞー!


「直樹さん、大変でしたね……」

「器の小さい男だ」

 1時限をようやく終え、長文の連続和訳という地獄を乗り越えた俺は溜息をつきながら椅子に座り込んだ。

「まああたしたちは楽しいけどねー」

「狭山が色々やられるのを見てるとスカッとするな」

 殺す。

「……ナオキ、この人たちは誰なの?」

 そういえばさっきは教師が来たから自己紹介もろくにできなかったな。

「あたしは藤阪葵。葵でいいわよ」

「…………」

「……あ、あれ? どうしたの?」

 再び考え込むネーベル。やがてバッと顔を上げる。

「決めたの! ブ――」

「言っておくがブルーってのは却下な」

「……ひどいの」

 安直過ぎる上に発音しかあってないだろ。普通でいいんだ普通で。

「……アオイ……ちゃん?」

「ちゃんはいらないわよ……」

「オレは桜乃響だ! 何でもいいぜ!」

 今度は桜乃がネーベルの前に立って自己紹介を始めた。

「……ヤマダ?」

「意味が分かりません……」

「……うーんと……」

 再び考え始めるネーベル。どうでもいいが何か捻らなきゃいけないのか。

「……決めたの! キョウなの!」

 ……キョウ?

「おお! (きょう)ね! かっくいいじゃん!」

 なんかそこらのバンドメンバーみたいだな。どうでもいいが。

「ほら、凛と黄泉も自己紹介しなさいよ」

「い、いや、私達はいい」

「そうだな。必要ない」

「何言ってんの! 自己紹介は円滑な人間関係への第一歩よ!」

「……碧海凛だ」

 碧海、かなりぎこちないぞ。そんなに嫌か。

「……うーんと……えーと……」

「別に普通でいい」

「……リンちゃん?」

「いや、ちゃん付けで呼ぶ必要は……」

 どうも碧海はネーベルが根本的に苦手なようだ。色々な意味で。

「俺の名前は知っているだろう」

「えーと……シー君?」

「……なんで? 黄泉でしょ? なんでシー君?」

「シー君はしにが――モゴッ」

 慌てて口を押さえる。それは言ってはならんぞ。

「そうだったな、まだあちらの名前は教えていなかった。三途川黄泉だ」

「……直樹、シー君だのあっちの名前だの、なんなわけ?」

「……気にするな」

「んな無茶な……」

「…………じゃあ、ヨミー」

 さらに安直になった。

「いいだろう」

「いいんだ!?」

 こいつの価値観もよく分からん。

「へっ、キョウとヨミーでいい感じだな」

「同感だ」

 訂正。こいつらの価値観はおかしい。

「どうするんですか直樹さん。このままじゃネーベルさんに学校の楽しさを伝えることができないと思います」

「んなこと言ったって……」

 試験1週間前を切って部活も原則禁止になってるからな。楽しい授業なんてないだろ。

「じゃあ遊びに行くの」

「どこへ」

「リュウのところ」

 

 

「おいリュウ。遊びに来てやったぞ」

「やあやあ直樹氏! その様子だと大変だったようだね!」

「お前はリュウか……まずいな、オレのニックネームが影を潜めてしまう……」

 もう訳の分からない事を言っている桜乃は放っておこう。

「というかお前ら、なんで一緒に来てるんだ」

「楽しそうだし」

「ネーベルちゃんかわいいし」

「興味があるな」

「監視の意味も込めてな」

 暇人どもめ。俺が筆頭なのが気に食わないが。

「貴方たちねぇ、いくら休み時間だからといってこんな大人数で他のクラスに押し掛けるなんて……」

 松崎が注意をしようと近づいてきて、固まった。その視線はネーベルに釘付けになっている。

「……? どうした松崎」

「……か……」

 か?

「……可愛い……」

「…………は?」

「ね、ねえ、貴女。名前はなんて言うのかしら」

「ネーベル=フォン=カルンシュタインなの」

「そ、そう。ネーベルさん。どうしてここにいるの?」

「ナオキに会いに来たの」

「え? 狭山くんに? って、あ……」

 そこで初めて俺達の視線に気付いたようだ。しばし見つめ合う怪しげな集団。

「……ふーん、吹奏楽部の部長さんは可愛い子がスキなんだー」

「あ、あああああ貴女いつからそこにっ!?」

 いや、最初からいたぞ。俺達全員。

「い、意外だな。松崎が可愛い物好きだったなんて」

「ち、違うわ! そ、そうじゃなくて、これはその、えっと……」

「そういえば子供の頃はよくぬいぐるみを持ってたわねー」

「藤阪さん! 貴女いい加減にしないと……!」

「あら? どうしたの部長さん? 顔が赤いわよ? ひょっとして今でもそうなの?」

「あああ貴女って人はー!」

 ……藤阪、楽しそうだな。

「ハッハッハ、彼女の意外な一面が見れたね! どうだいネーベル君、学校は楽しいだろう!?」

「……面白い人がいっぱいいるの」

 その『面白い人』の詳細を聞きたいところだ。まさか俺は入っていないだろうな。

「ナオキ、あの人はなんていうの?」

「あ、ああ。あいつは松崎っていうんだ。松崎静流」

「…………」

 また考え込むネーベル。どうせシズとかそんなところだろう。

「……それにしても、今は本当に大人しいのだな……」

 隣で碧海がボソッと呟いた。

「だから言ってるだろ。昼と夜じゃ別人だって」

「そうですよ。今のネーベルさんはとてもいい人です」

 ……それって、夜は悪い奴って言っているように聞こえるんだが。

「え!? そ、そんなことないです! 夜のネーベルさんも本当はとってもいい人ですよ!」

 今さら訂正しても遅い気がする。

「あ、ああ。……しかし、わたしが調べた限りでは吸血鬼がそのような多重人格性を持ったことなどなかったぞ」

「……そうなのか?」

「ネーベルは吸血鬼の中でも特異な存在だ」

 死神が答える。

「……そう、他の吸血鬼一族から追放される程な」

「……え……」

「追……放?」

「どうして……」

 ネーベルを見る。

「決めたの! シズちゃんって呼ぶの」

「し、シズちゃん……」

「……おーい部長ー。大丈夫かー」

「完全にトリップしてるわね……」

 あいつがそんな目に遭ってるなんて、俄かには信じられないが……。

「そのうち、話してくれることもあるだろう。本人が言うまでは気にしないことだ」

「……ああ」

「わかりました……」

「…………」

 

 

「いやー面白かった面白かった。ねえネーベル、また静流のところに行きましょうよ!」

「わかったの」

「お前、絶対からかって遊ぶだろ……」

 それにしても松崎にあんな一面があったなんてな。

「子供のころから可愛いものが好きだったのか?」

「……なに? あんたはあたしにあいつのことを尋ねるわけ? このあたしに?」

 さっき自分から『子供の頃〜』って言ってただろ。

「……仲良くしないとだめなの」

「え? い、いやー駄目って言われても……」

「だめなの」

「……わかったわよ」

 凄いなこいつ。松崎の事に関しては絶対に譲らなかった藤阪が従ってる。

 まあ藤阪も子供好きっぽかったし、案外気は合う2人なのかもしれないな。

「他に面白いことはないの?」

「ないな」

「うわ、即答……」

 他に何があるというのだ。

「お昼休みになったら食堂に行ってみたらどうですか? わたしが初めて行った時は楽しかったですよ」

 俺は楽しくなかったよ。

「そうだ、昼休みに食堂に行くというのはどうだろう」

「おい死神なにあたかも自分が考えましたみたいに提案してんだ」

 それが通用するのは藤阪と桜乃だけだぞ。

「食堂? ごはんを食べるの?」

「あら、知ってるの?」

「うん。いつもごはんは食堂で食べるの」

 なんとなくだが、ネーベルが想像する食堂と俺達の中の食堂はかけ離れている気がする。

「よし、じゃあ昼休みになったら食堂でご飯食べるわよ! いいわね!?」

 勝手に決めるし。

 まあどちらにしても昼食は食べないといけないしな。俺は渋々ながら了承することにした。


藤「どうもこんにちは、『藤坂』改め『藤阪』です!」

直「……どうしたんだ? あれ……」

厄「なんでも誤字脱字の修正をしたら5つも6つも『藤坂』になってたみたいです……」

藤「もう信じらんない! 普通自分の作品の登場人物の名前間違える!?」

厄「ま、まあまあ……。別に悪気があってやっていた訳ではありませんし……」



まさか修正に半日かかるとは……!

どうもこんにちは、ガラスの靴です。

さて、ここをご覧の皆様は既に知っていらっしゃるでしょうが、また例によって誤字脱字意味不明の修正を行いました。半日かけて。

無駄に話数を延ばすとこうなるんですね。目が変になりました。

これで多少は読みやすくなるのではないでしょうか?

といっても今から読み返す強者はいないでしょうが……。


では、誰が出てくるかは大体察しているでしょうが、次回をお楽しみに〜!


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