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第77話:厄神様はかく導き

どうもこんにちは、ガラスの靴です。


最近思うのです。自分はここに小説を載せる資格があるのかと。

似たようなことを前にも書いたような気がしなくもないですが、毎日更新という唯一の売りが遥か昔に途絶えて以来なんだか読者の皆様に対して申し訳ないような気持ちでいっぱいです。

毎日更新は凄い、とおっしゃっていただいた方はたくさん、といっていいかわかりませんがそこそこいらしたのに、なんだかその方々の期待を裏切ってしまったような気がするのです。


今さらこんなことを長々と書くのもどうかと思われるでしょうが、一言だけ謝らせてください。

すみませんでした。


さて、何故かいつになく憂鬱なまえがきが展開されましたが、本編はいつもどおり馬鹿です。

では、第77話、どうぞ。

「ほら、ファイト!」

「うっさいわ! 誰のためにこんなことやってると思ってる!」

 7月最初の日。今日も今日とて藤阪を乗せてえっちらおっちら学校へ向かう。くそ、腿がビキビキいってる。

「というかだな、お前がもうちょっと早く準備すればいいんじゃないのか!?」

「うっさいわね! これでもだいぶ早いでしょ!」

 まあ確かに、今日はなんと8時前に出発することができた。これなら少しばかり遅くても大丈夫だろう。

「いやー快適快適。これからずっとこうやって送ってもらおうかしら」

「勘弁してくれ」

 

 

「よ、狭山。今日も送迎お疲れさん!」

「お前、代わるか?」

 HRが終わると待ってましたといわんばかりに桜乃が話しかけてきた。余計なお世話だ。

「狭山、あの薬は効いているか?」

「碧海か。ちゃんと塗ってれば効いてると思うんだが……藤阪、どうだ?」

「え? ……え〜……」

「…………」

 ……塗ってないな。

「捻挫を甘く見ないほうがいい。ともすればそのまま関節が不安定になって同じ箇所を捻挫しやすくなる」

「……わ、分かってるわよ。ちゃんと塗っておくから」

 碧海に注意されてばつが悪そうにそっぽを向く藤阪。お前が藤阪にそんなこと言うなんて珍しいな。

「ん……そういったものに関してはお前達より詳しいだろうからな。薬を渡した責任もある」

「ありがとな」

「べ、別に礼を言われるほどのことではない。当然のことを言ったまでだ」

 何故か碧海までも背中を向けてしまった。何か気に障ることを言っただろうか。

「……お前なぁ……」

――ピンポンパンポーン。

『全校生徒の諸君! おはよう! 生徒会長の神楽龍一だ!』

「あれ? 神楽さん?」

「また何か変なことを始めるつもりじゃなかろうな……」

 既に嫌な予感しかしないが、もしかしたら自分に関係のないことかもしれないので大人しく聴いておく。

『突然だが生徒の呼び出しをする! 3−Dの狭山直樹氏! 3−Dの狭山直樹氏! 生徒会室……いや、オカルト研究同好会の部室まで来てくれたまえ! 以上だ! 他の学生諸君は今日も勉学に励んでくれたまえ!』

 ……あの野郎。

「あんたもすっかり生徒会長様に気に入られてんのねー」

「せめてもうちょっと実感のこもった言い方で頼む」

「どういうことでしょうか……?」

 知るか。とりあえず1人で、とは言っていなかったから厄病神も連れて行くことにした。

 

 

――コンコン。

「入るぞ」

 一応礼儀としてドアをノックする。すぐに中から返事があった。

「お前な、放送を私用に使うなってこの前も……」

「こんにちは、なの」

 さて、一応確認しておこうか。

 ここは学校。当たり前だ。

 ついでに今は朝のHRが終わり、生徒達は1時限の準備を開始する時間帯だ。

「……なんでお前、ここにいるの?」

「会いに来たの」

「……会いに……」

 もうわざわざ隠す意味もないだろう。

 オカ研の部室にいたのは、あの眉目秀麗容姿端麗完璧超人の生徒会長ではなく、昼は普通のお嬢様、夜は泣く子も黙る吸血鬼へとメタモルフォーゼするネーベル=フォン=カルンシュタイン嬢であった。

「やあやあ直樹氏! 待っていたよ!」

 俺が呆気に取られている間に部室の奥から神楽が現れた。

「おや、小夜君も一緒か! まあ君なら問題はないだろう!」

「……サヨ……?」

 厄病神のことだ。

「……サヨ……」

 なにやら考え込むネーベル。顔もいつものポケポケした表情ではなく、真剣そのものだ。

「あ、あの、何かおかしな名前だったでしょうか……?」

「ああ心配は要らないよ君達! 彼女は時々こうなるんだ! 今回は何を考えているのやら!」

 神楽はどうやら以前からネーベルのことを知っているようだ。まあ色々と因縁がありそうだったしな。

「……決めたの!」

「は、はい! なんでしょう!?」

「セレナ!」

「……はい?」

「小夜君の呼び方のようだね! どうかな!?」

「は、はい……でも、あれ? せ、セレナ……さん?」

「おいネーベル、意味が分からんぞ」

「サヨだから、セレナなの」

 はて。

 小夜……小夜……小夜曲……セレナーデ……。

 ……セレナ。

「お前本当は日本人だろ」

「どうして?」

 捻りすぎだ馬鹿。小夜でいいだろ小夜で。

「残念……」

「で、でも、わたしは別に構いま――」

「ほら、厄病神もダメだって言ってるぞ」

 そんなにこっちを睨むな。ちょっと気に入ったのかひょっとして。

「それで、どうしてこんなところに来たんだ」

「ナオキに、会いに来たの」

 俺に?

「警備員から連絡があってね! どうやら中に無断で入ろうとしたらしいんだよ! ひとまず今日は来客ということにしてもらったのさ! いやあ苦労したよ!」

 お前、本当にただの生徒会長か。

「それで、会いに来たっていうのはどういうことなんでしょう……?」

「前に、ナオキが待ってるだけじゃダメだって言ったから。だから、会いに来たの?」

 ……俺、そんなこと言ったっけ?

「……覚えてないんですか?」

「いやちょっと待て、今記憶を整理しているところだ。あれは……」

 

――待っているだけじゃ、何も得られないだろ。

――自分で何かして、初めて良かったって思えるんじゃないのか?

 

「……あ〜……」

 言った。確かに言ったよ俺。

 でもあれは駅前で高橋さんに会った時に、「お嬢様は狭山様がいらっしゃるのを一日中待っているのです」とか言われたからってだけなんだよ。

 自分で外に出て、友達を作ればいいだろ。そんな意味で言ったんだよ。

「まさかこうくるとは……」

「さっきから何をブツブツ言っているのかね!? とりあえず今日一日は彼女も学校内にいられるから、後は君に任せたよ!」

「任せるって何を」

「いいではないか! 彼女がせっかくこうして外へ出てきたのだ! 学校の楽しさを教えてやるといい!」

 それだけ言うと神楽は仕事があるからと行ってしまった。逃げたな。

「……直樹さん、どうするんですか?」

「どうするって……」

 ネーベルのほうを見てみると、もう既に幸せそうな顔をしてオカ研のあちこちを見て回っている。

「……どうしよう……」

 

 

「……狭山」

「なんだ碧海」

「……これは、私を馬鹿にしているようにしか思えないんだが」

「いや、これには海よりも高く山よりも深い理由があってだな」

「理由がないようにしか聞こえませんけど……」

 教室に入って早々、碧海に見つかってそのまま階段踊り場へ連行、説教を喰らった。

「……怖いの」

「んなっ……! わ、私が……」

「ほらほら、こいつ、昼間は人間と変わりないからさ。見逃してくれ! 頼む!」

「…………仕方がない。だが危険な行動をすれば即帰ってもらうぞ」

「…………」

 無言でコクコクと頷くネーベル。どうやら碧海に対する印象は確定したようだ。

「……まったく、行くぞ」

「ナオキ……」

「いやまあ大丈夫だ。あいつも良い奴だから」

 神楽、学校が楽しいってイメージ、早速崩れかけてるぞ。

 

 

「……で、それがさっきの呼び出しの件?」

「そうだ」

「狭山、お前……何?」

「なんだその質問は」

 教室に入るとすぐにクラスメイトの視線がネーベルに集中した。どうやら元来人見知りらしいネーベルはすっかり怯えて俺の後ろに隠れている。

「ほら、怯えてるだろ。こっち見るな」

「いや、それは無理でしょ」

「というか桜乃、お前は会ったことある……」

 そこまで言いかけて気付いたが、もしかしたらこいつも出会った記憶が消されてるかもしれないのか。だったら自覚的には初対面と変わらないな。

「え? 会ったことあったっけ?」

「いや、俺の気のせいだった。初めてだったな」

 ほら、ネーベルも挨拶しろ。

「……ネ、ネーベル=フォン=カ、カルンシュタインっていうの」

「本当に外人なんだー。なんかちっちゃくてぬいぐるみみたい」

 それは失礼だろ。

「……ぬいぐるみ……かわいいの……」

 ……どうやらご満悦らしい。

「あ、あの、直樹さん」

「ん? どうした?」

「もう先生がいらしてます……」

 げ。

「……狭山、お前は色々と厄介事を持ち込むのが趣味なのか?」

 こめかみが既にピクピクとしている英語教師はそれでも何か言われているらしく、ネーベルを追い出すようなことはせず、椅子を用意して授業を見学するように指示した。

 その代わり。

「次、狭山」

「はい先生。それは『次』じゃなくて『次も』だと思います」

「やかましい。いいから続けて読め」

「学校……楽しいの?」

「今日に限ってはノーと言わざるをえない気がするな」

 俺の厄日は年に何回あるのだろう。

 そんなしょーもないことを考えながら俺はなんとか1時限の授業をやり過ごしたのだった。


直「まえがきのあのネガティブなのはなんだったんだ?」

藤「最近なんだか情緒不安定らしいわよ」

桜「暗いなー」

厄「あ、あの、みなさん、それより本編の方を……」

ネ「みなさん、おひさしぶりなの」

厄「いえあの、そうじゃなくて……」

神「どうかねネーベル君!? 学校は楽しいかね!?」

ネ「……怖いところなの……」

碧「な、何故私を見る!?」

直「いやまあ」


さ、あとがきくらいはいつもの馬鹿なテンションでいきたいと思います。

なんとなく縁起がいい気がしないでもない第77話、いかがだったでしょうか?

ちなみにネーベルは執事の高橋さんに学校まで送ってもらいました。

で、ウロウロしていたところを捕獲され、それを知った神楽に保護されたのです。

今は一応来客扱いということで特例的に自由な移動が許可されています。


あ、ちなみに直樹の回想の『待ってるだけじゃ〜』ってのは番外編での台詞です。

そんなこと言ってたっけ? って方がいたら一応。


では次回はネーベル襲来編・中編をお送りします。

お楽しみにー!

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