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第69話:厄神様はかく泊めりき

どうもこんにちは、ガラスの靴です。

少し前のペースを取り戻せてきたかな?

まああくまでも日付上の毎日でしかないというのには目を瞑って頂いて。


では第69話、どうぞー。


「……なんだって?」

「今晩、泊めてくださいっ!」

「…………」

 こんなことを100万ワットの笑顔で堂々と連呼できるのは世界広しといえどもこいつくらいだろう。

「お前なぁ……。それなら藤阪の家にでも行けばいいだろ」

「それはそれです」

 意味が分からん。

「大体俺の家に来たってお前が喜びそうなものなんて何も――」

 

――その男の子みたいなのは誰ですか?

――従姉妹だ。

――ち、近づくな悪人!

 

 ……あった。

「……どーしたんですか? いきなり黙ったと思ったら顔色悪くなってますけど」

「いや! なんでもない!」

 非常にまずい。

 万が一このままこいつを家に入れようものなら即座に玉藻に対する尋問が始まるだろう。

 そもそも人として後輩の女子を泊まらせるのは如何なものかと思う。

「というわけで藤阪の家に電話だ」

「ちょっとー! なにやってるんですかー!」

 腕にしがみつくな。離せ。

「部屋は余っているだろう。人1人くらいは寝泊りできると思うが」

 死神がいらんことを言う。今までずっと黙ってたくせに口を開いたと思ったらなんでそんなこと言うんだ。

「で、で、でも、やっぱりお、女の子を泊まらせるのはちょっと……」

「よくわからないな。説明してくれ」

「で、ですから、その、え、えーとぉ……」

 頼む厄病神。なんとかその馬鹿を説得しておいてくれ。俺はこっちの馬鹿を説得するから。

「いいか辻。電車が止まって帰れないというのはよく分かるしどこか泊まる場所を探しているというのも理に適っている。だがしかしそうであるからといって俺の家というのは――」

「じゃー行きましょうかー」

 聞いてないし。

「おい待て……ったぁ!?」

 ずんずん進んでいく辻を追いかけようとしたとき、だいぶ気温が下がって凍結し始めた雪で足が滑ってしまった。

「…………?」

 すぐさま後頭部に鈍い感触が走ると思っていたが、いつまでたってもぶつかる気配がない。

「なにやってんですか?」

 目を開けると、辻に服を支えられて猫のように持ち上げられていた。

「……す、すまん」

「まったく、こんな雪で滑るなんてどんだけドジなんですかー?」

 煩い。それを言うならお前だって馬鹿力にも程が――

――グシャ。

「あーいけない。耐え切れずに落っことしちゃいましたー」

「……お前な……」

「さ、それじゃ今度こそセンパイの家に行きましょうかー」

「だからぁ!」

 

 

「着いてしまった……」

 結局俺はこの後輩を止めることが出来ず泊める羽目になってしまった。おお、我ながら上出来だ。

「……誰にでも得手不得手がある。気にするな」

「ど! どういう意味だ!」

「それじゃーお邪魔しまーす!」

「お前も勝手に入ろうとするな!」

 ドアの前に仁王立ちになる。

 さて、ここまでは惰性で来てしまったが、ここから先は俺の意志が運命を左右する。

 ここでドアを開けたとしよう。

 

「な、なんじゃお主は!」

「あれ、センパイの従姉妹さん、まだいたんですかー?」

「い、いや、これには深いわけがあってだな……」

「しかもなんか耳と尻尾が生えてますねー」

「い、いや、それにも深いわけが……」

「センパイは従姉妹さんにコスプレをさせる変態だったわけですねー。わかりましたー」

「ま、待て! どこへ行くー!?」

 

 ……とまあ、明日からの学校生活が大変なものになることは明白だ。

「辻。実はいま家の鍵をなくしていてな。今日は皆で桜乃の家に泊まろうという話をしていたんだ」

「そーですかー」

 少しは信じる素振りでも見せてくれ。

「……さっきからずっと気になってたんですけど、どうして三途川センパイがここに?」

「俺もこの家に住んでいるからな」

「…………」

「なんだその汚らわしいものを見るような目は」

「まあ人にはそれぞれの趣味嗜好がありますし」

 断じて違うぞ。

「でもまーよく考えればお似合いと言えなくもないですねー」

 言えないから。

――ガチャリ。

「開いたぞ。何もない家だがゆっくりしていくといい」

「わーい! ありがとうございますー」

「はいちょっと待とうか」

 死神に合鍵を持たせたのは失敗だったかもしれない。

「あの直樹さん、辻さんもう中に入っちゃいましたけど……」

 なんてことだ。

「ぬおおぉぉぉぉぉ!?」

 急いで家の中に入るが、リビングから玉藻の悲鳴が聞こえた。

 ……遅かったか。

「……ど、どうしたんだ?」

「…………」

 辻は何も言わない。その視線は恐らく一日中ボーっとテレビを見ていたのであろう玉藻の姿に向けられている。

「……お、お主! なぜこの前の悪人がここにおるのじゃー!?」

 玉藻は半狂乱になっている。突然自分の私生活を脅かされて脳の情報処理能力が限界を超えたようだ。

「……センパイ、一つ言ってもいいですか?」

「出来ればソフトな感じで頼む」

「変態」

 実も蓋もなかった。

「センパイってこーいうのが好きだったんですねー。というか従姉妹さんっていまいくつなんですか?」

 それは知らん。それと別にそういった趣味を持っているわけでもないぞ。

「じゃああのミミは?」

「あいつの趣味だ」

「こらー! なにを言っておるかー!」

 我慢しろ玉藻。お前が妖怪だとばれるのも俺が変態だという烙印を押されるのも嫌なんだ。

「従姉妹さん。今晩泊めていただくことになった辻です。よろしくお願いします」

「……とまる?」

「はい。泊まります」

「…………」

 玉藻の頭からは煙が出ていた。

「今日は賑やかになりそうだな」

「……あ、あまり騒がしいのはご近所の迷惑になってしまいますので……」

「頼むから大人しく寝るだけにしてくれよ」

「それは保障できませんねー」

「……い、いやじゃーーー!!」

 玉藻の悲痛な叫び声だけが虚しく木霊していった。


す「満月ちゃん、なんでわたしの家に来なかったのー!?」

満「いろいろあったの!」

拓「何がいろいろだ100%私情の癖に」

厄「結局直樹さんは泊めちゃってますし……」

直「し、仕方がないだろ」

玉「……もしやこれからわらわはこの耳と尻尾を付けてると思われるのか?」

死「そのようだな」



続いちゃってるし。

今回は1話で収めようと思ったのですが、字数オーバーにより断念。

たぶん次回は色々と大変なことになると思います。色々と。


ではでは〜!


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厄神様とガラスの靴
こっそり開設。
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